音質向上用ファイナライザー

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この製品はまさに「青天の霹靂」とでもいえばいいだろうか。

株式会社ナノテック・システムズが製造している「NESPA Pro」「ネスパ・プロ」と呼ばれているCD/DVD音質・画質向上用ファイナライザー。

 

販売店の宣伝文句を並べると・・

 
300万ルックス照射がCDとDVDの究極の世界を再現。

昨日までの音と画からの決別宣言!!

新開発300万ルクスの高輝度、高信頼性のXe管を採用。

100万ルクスのNESPA#1処理を何回やっても超えられなかった”限界”を300万ルクスの光が乗り越えて、あなたを未知の音と画の世界へ招き入れてくれます。

パルス発光回数を30.60.120パルスと自由にチョイスできます。CDは超緻密な音質に、DVDも高画質に!

 

 
一言で言えば、CD・DVD・LDなどポリカーボネイト製の記憶媒体の音質や画質を向上させる装置だ。

価格は73,290円(税込)と、アクセサリーとしては決して安くはない。

ポリカーボネイト製記憶媒体には、小さなピットと呼ばれる長さの異なる凹凸が、オリジナルのデジタル信号に忠実に記録されている。

この凹凸面の極薄膜に強力な光を当てて光学定着させると、より正確にデジタル信号を記憶媒体から取り出すことができるようになり、音質や画質が向上するというもの。

市販されているCDやDVDを、より完全な状態に仕上げるためのものといえばいいだろうか。

 


販売店のコメントにはこういうものもあり・・

現在店当デモ中ですが、ほとんどのお客様も効果を確かめてから購入され大ヒット中です!

当店の1週間、1ヶ月の集中売り上げ記録になりました。

内には認識しなかったDISCが処理後、読み取り可となった例もありました。(カーステレオにて・・)ほんの5分後のことでした。

この結果を得て尚更マジック、空耳、オカルトの類では無いと思いました。

カーステレオで聴くと良く判るらしく、愛聴盤の2枚組みの1枚を処理して差し上げて店頭で聴いて頂きましたが、「良く判らないので、また考えて来る・・」といって車で帰られたお客様は12分後に戻ってこられてNESPA #1を購入されました。


 

他のオーディオマニアのブログへの書き込みをざっと見ても、かなり効果があるという。

本当にこれで、手持ちのすべてのCDやDVDがすべて、ワンランクアップの音になるのなら、安いものだ。

秋葉原の取り扱い一覧店へ片っ端から電話をしたが、ダイナミックオーディオ各店は在庫なし。

木村無線は7万円近かった。

結局は値段が最も安く、そして在庫のあったテレオン第1店で、5万5千800円(税込)で購入。

 

 

この手のものでは、よく効いて使いやすい電気接点誘導・改善剤がある。

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同じナノテック・システムズが作っている製品だ。

 

 
まず自分用に編集した、いわゆる焼いたCDが何枚かあったので、それを処理したものとオリジナルを比べてみる。

NESPA Pro は30パルス・60パルス・120パルスと3段階の処理ができるので、処理をしていないものを含め、合計4枚の同じ曲のCDを用意。

表裏とも処理をしてみたが、どの程度の処理をするかによって音の落ち着き度が変わるが、このあたりの按配は、その人の好みだろう。

処理をしていないものと、120で処理をしたものをとっかえひっかえ、まずはヘッドフォンで聴いて比べてみた。

 


まず低域、たとえばベースのランニングのラインの明瞭さが全く違う。

処理をしていないものがヘタクソなベースで、処理をしたものが上手なベースといったくらい違うのだ。

うーん、しかしこれは問題だ。

手持ちの全部のCDとDVDをすべて処理しなくてはならないような予感が・・

面倒だなあ・・という心情と、音がよくなって嬉しいという相反した感情が交錯するわけで困ったものだ。

と口元はニヤケているのだが。(笑)

  

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では自分で焼いたCDではなく、市販のCDを処理するとどれくらい違うのか?

同じアルバムを2枚持っているものを何セットか試してみた。

まずは、Hubert Laws のIn The Beggining を処理してみる。

7曲目のReconciliation をまず処理なしのCDでじっくりと聴き込む。

10分08秒の長さだが、ロンカーターのベースと、スティーブ・ガッドの素晴らしいプレイもあわせて楽しめる佳曲だ。

そして処理したCDと比べると・・

 

 

ベースのタッチと、その後で膨らんでゆく音の分離がまず違っている。

処理をしたものは、ベースのプレイの中でその2種類の違いを明瞭に聞き分けることができる。

この違いがわからないのは、耳がそういうレベルの耳であるか、もしくはオーディオシステムの問題のどちらかだろう。

とまあ断言してしまいたくなるほど、とにかくはっきりと、私の耳には明瞭に違って聞こえるのだ。

 

 

ベースを含む低域が特に顕著なのだが、音質が全体に量感より質感方向へ、つまり締まったものになるために、システムによっては低域が物足りなく感じるかもしれない。

とにかく音像がピシッとシャープにフォーカスして、ナマナマしいのだ。

これは数曲を通して「ぼやっ」と聞いていても共通して感じる点だ。

 

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次に David Sanborn の Pearls のアルバムで聴いてみる。

アルトサックスが、これ以上音量を上げるとうるさくなるというレベルまで音量を上げて、まず処理していないものを聴いてから、次に処理をしたものを聴いてみる。

処理をしたものだと、ダイナミックレンジが大きくなるところで、音が詰まってうるさく感じるという傾向がなくなるため、もっとボリュームを上げてもいいかなと思える。

それでいてダイナミックレンジの大きなブロウするところでは、ブロウがより強く前へ出て、こちらへ突き刺さって来る。

これは堪らんなあ・・

 

 
2曲目の Try a little Tenderness では、途中の生ピアノの音がきめ細かくそれでいて、音質の細部のディテールがよくわかるのだ。

しかもSN比が全体によくなったように感じるため、エコーや反響成分が空間に消えてゆく様が、よりリリカルに表現される。

とにかくオーディオ装置の再現能力が高くなればなるほど、そしてCDの録音状態がワイドレンジで高品質であればあるほど、処理後の音の違いは顕著になる。

だからラジカセ程度では、違いはわからないかもしれない。

 

ちなみに、stereo 2006年1月号の「stereo視聴室・話題の新製品を聴く」では、優れている製品として「特選」に選定されていた。

 

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記事では30や60で処理したものを試聴して評価しているが、それでは120ではダメなのだろうか?

また120で処理したものはどうなのだろう?

ということで、2005年版のクリスマスアルバムを、30+120、60+120、120+120という3種類で処理をしたものを作り、未処理、120という5種類をMichael Franks Dianna Krall Warren Hill Beach boys という録音状態が違ったアルバムの曲で比較。

結論は私の好みで言えば、120+120がベストだった。

ビーチボーイズのような古くレンジの狭い録音であっても非常に効果があり、音が膨らみすぎずに、タイトにまとまるのだ。

未処理>120+120>未処理>120+120>未処理>120>120+120というように聴き比べるとよくわかるだろう。

 

 
Dianna Krall の The Christmas song のイントロ部分はピアノソロから始まる

そのピアノソロの部分では、ピアノのペダルを踏む音が、エコー成分に混じって録音されている。

120+120だとピアノにまとわりつく余分な音がほとんどなくなるため、ピアノそのものがタイトで音量が小さくなったような印象さえ受ける。

だがそれは音量が小さくなったのではなく、付帯する余分なノイズという贅肉がそぎ落とされた結果、シェイプアップされた本来の裸の音が聴こえているため、音のない空間の割合が増え、その結果として音量が下がったかのように感じるのだ。

そのため相対的に、ペダルを踏む音が大きく聴こえるというわけだ。

こうした現象は、30+120のレベルから顕著に見られるようになる。

30+120では、ダイアナが口を開いて発音する前の、舌というか口の中を動かしたときの、かすかな音がにわかに浮き出て聴こえ出したのだ。

何度も聴いている部分であるにもかかわらず、耳のそばでいきなり聴こえたものだから一瞬ドキっ!。

これはもう堪りません。

 

 
では、未処理のオリジナルでは聴こえていないのかと、オリジナルを聴きなおすと、確かにオリジナルにもその音は含まれている。

だがそれは30+120の処理のもので、それを意識して聴いて知っているために、それを聴こうとして、未処理のものを聴いているから聴こえるのだ。

つまり知っているから、聴こうとするために、未処理のものでも聴こえてくるのだ。

つまり30+120で「それ」に気がつかなければ、この部分をそれほど意識して聴くというシーンには出会えなかったというわけだ。

120+120で聴くと、こうしたいままで隠れていた微細な音が次々と浮き出てくるため、意外な部分でこうした新しい「めくるめく体験」に出会えるのだ。

嗚呼!

 

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白いボタンを押すたびに、処理のプロセスを、30>60>120>OFFというように切り替えることができる。

DVDだと映像のバランスからいえば120がいいようだ。

120+120だと、ちょっと輪郭のくっきりが強過ぎるというか、濃くなりすぎると思う。

 

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処理中は上の写真のように左側にあるかなり明るいインジケーターが周期的に点滅し、処理が終わると白いボタンの右側のインジケーターが消える。

そして蓋を開けてまた一枚を入れて蓋を閉めると、自動的にあらかじめセットしたパルス数の処理を実行する。

同じサイクルのものを何枚も続けて処理をするときには、全くスイッチを押さなくてもいいので便利だ。

 


NESPA Pro での処理速度だが、30パルスの処理時間は約50秒。

60パルスだと処理時間は約1分35-45秒。

60+120などいろいろ聴き比べたが、120パルスになると処理時間は一回で約3分10-20秒にもなるので、所要時間が6-7分になる120+120が現実的な時間対効果の最適バランスだと思う。

とにかく、何だかCD、DVDのプレス屋でバイトをやっているような状況というか、片っ端から処理しまくっている自分がいた。(笑)

 

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とにかくこれを使って聴いたあとでは、世の中にあるCDやDVDをプレス屋では、これで処理をしてからでしか出荷できない、という法律を作って欲しいとさえ思う。

まあ比較しなければ問題ない、というかまさに「知らぬが仏」なのだけれどね。

というわけで、もちろん普通のCDやDVDを今までどおりに使えば何も全く問題ないわけだが、一度これで処理をした音と映像を知ってしまうと、もう元には戻れない。

世の中には知らないほうが幸せなこともあるのだ、ということを実感できてしまうという、全く困った製品だ。(笑)

 

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