デジャヴ

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デジャヴとは既視感(きしかん)。

実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じることで「デジャヴ」、「デジャブ」、「デジャヴュ」(フランス語: Deja vu)などとも呼ばれる。 by Wikipedia

映画の内容は、本来持っているデジャヴの意味とは直接関係ないが、見終わってみると実にうまいタイトルだと思う。

だが、デジャヴは、説明の難しい映画だ。

dejave.jpg


ストーリーだが、フェリーがテロ目的で何者かに爆破されたため、複数の偵察衛星を組み合わせた極秘開発の衛星地上監視システムを使った捜査チームに、デンゼル・ワシントン扮するやり手の地元ベテラン捜査官が加わるというもの。

このシステムは現実には依然SFの世界レベルなのだが、手を伸ばせば届きそうに思えるアイテムで構成されているため、観客は映画を見ているうちに絵空事とは思えなってしまうという寸法だ。

このあたりの設定の案配は実にうまい。

 

それもそのはずで、ディレクターとプロデューサーはあのトニー・スコットとジェリー・ブラッカイマーのコンビ。

Director :Tony Scott (トニー・スコット)

トップガン・ビバリーヒルズ・コップ2・デイズオブサンダー・ラストボーイスカウト・クリムゾンタイド・エネミーオブアメリカ・マイボディガードなどで知られる
 
Producer:Jerry Bruckheimer(ジェリー・ブラッカイマー)

フラッシュダンス・トップガン・ビバリーヒルズコップ2・ザロック・アルマゲドン・パールハーバー・パイレーツオブカリビアン呪われた海賊たち・ナショナルトレジャーなどが主な作品


このシステムは各種センサーと偵察衛星の情報で構成されているのだが、取得した膨大な情報処理のため、約4日前の映像しか見られないというシバリがあり、さらに一度に見られるのは1カ所だけ。

巻き戻しも早送りもできないというのがミソで、こうした制限を設けることで、制作陣はこの映画の魅力をさらに際だたせることに成功している。

エリア内であれば、相手に知られず、どの角度からでも自由自在にその相手の映像を鮮明に映し出せるという、「ストーカーなら泣いて喜びそうな性能」を持っているというシステムを使うというアイデアが、またストーリーにうまくマッチしている。

 

映画ではヒロインの女性がシャワーを浴びているところを、まさにストーカーのように覗き見るシーンがあるのだが、観客も思わずデンゼルや捜査陣と一体となってのめり込んでしまう。

このあたりの観客の掴み方が秀逸。

冒頭から意味ありげな音楽と画面展開によって、観るものを一時たりとも飽きさせず、知らず知らずのうちに、制作陣のペースに嵌めてしまうという手腕は実に見事。

 

現在から過去へ戻るという、いわゆるSFモノの定番ともいえるシークエンをベースにしているのだが、冒頭からしばらくはそうした素振りを感じさせない展開となっている。

だが、映画が進むにつれ、この作品のジェリー・ブラッカイマーとトニー・スコットは、観客が抱いているであろう、この手のSFものの「暗黙の了解」ともいえる常識を盾にとり、観るものの心理を実にスリリングに揺さぶってくるのだから堪らない。

4日前のどこの誰を監視すれば解決の糸口が見つかるのか?

といろいろやっているウチに、それはタイムマシンとしても使えることがわかり、物語は一気にSFの世界へ突入する。

このあたりでの細かいアラはいくつかあるのだが、観ているウチにそうしたことが全く気にならなくなるのは、面白さによって帳消しになるからだろうか。

音楽がまた実にいい。

ビーチボーイズのDon't Worry Baby が効果的に使われているうえ「ボーン・スプレマシー」で確立された、ストリングスを中低音で重ねたメロディーラインをリズム楽器と組み合わせるという手法を取り入れ、映像をさらに際だたせている。

スピード感のある映像とストーリー展開に加え、100億円以上もの資金を投入したリアリティーの味付けはまさに圧巻で、粒の粗い独特の色調もこれまた印象的。

 

最後に用意されている「観客への裏切り」というどんでん返しで、一気にクライマックスへ持ってゆく脚本は、まさにため息が出るような興奮を掻き立て、息つく暇なく観るものを楽しませてくれる。

死んでしまったヒロインの過去を眺めるうちに、恋愛にも似た感情を抱き始める Denzel Washington(デンゼル・ワシントン)の表情は、彼のファンならずとも魅了されるはず。

それだけでなく制作陣は、ヒロインの新人Paula Patton (ポーラ・パットン)と悪役 Jim Carviezel (ジム・カヴィーゼル)から、デンゼルに負けない魅力を引き出すことにも成功している。

二度目は計算され尽くして張られた伏線を味わいながら楽しむことができる希有な作品、といえば、この映画の持ち味がおわかりいただけるだろうか。


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