「みんなの意見」は案外正しいか?

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今やIT産業も、構造的にあたかも自動車産業型モデルのように、それぞれの分野で数社しか残らない状況になってきている。

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利用者層が拡大するにつれ、マイクロソフト・ヤフー・グーグルなどのように、大手がシェアを握るという様相を呈している。

  

所得の高い層は、外へ出かけて観光や遊びに十分なお金を使うことができる。

だがお金のない層ほどインターネットを利用する時間が長くなり、ますますその層は拡大するという傾向があらわれることになる。

 

年収300万円以下でも月額数百円の携帯電話などのサービスを利用するのはいまや一般的で、いわゆる生活のためのインフラ化という点からも、所得が低い人ほど 割合としてもネット利用が増えることになるわけだ。

つまり低価格で機器やサービスを提供できる、資本の大きなところだけがシェアを握ることができる傾向が強まることになる。

   

また、ベータ VS VHS の戦いでわかるように、優劣は製品そのものではなく、その周辺に依存することが多くなる。

iPod は Music Store があるからこそ、その魅力がより際立つのだ。

ウィンドウズの方がマックよりシェアを握ることができるのは、ソフトの数が多いからにほかならない。

  

トレードの世界でもマック用のソフトがないために、すべてがウィンドウズマシンであり、アップルの製品を使っているユーザーも、トレードを機会にウィンドウズ版へ移行せざるをえなくなっている 。つまり大多数を制するものが勝者になるというわけだ。

     

そのためコストをどれだけ下げることができるかという点での競争となるが、そうなると無料で提供するサービス上に、さらに別なサービスを載せて提供す るといった形態でコストを下げることになる。

プロモーションにしても、今までのような広告媒体を利用するのではなく、ブログやメールマガジンなど消費者自身が情報発信を行なうメディアを活用する というように、多様化し少しずつ様変わりしている。

  

こうした「パイの奪い合い競争」ではまず最初の段階で、競争に勝つこと以上に「生き残るために食べてしまう」ことが重要になる。

薄利多売、時には赤字覚悟で取り組まなければらならないので、財務内容の健全化や若くてやる気のある社員だけに切り替えるといった生き残りのために経営資源を集中する必要が出てくるのだ。

   

だが面白いことに、社会の構造は逆になってきている

これからは高年齢層の人口が増え、若くてやる気のある社員の活力は、その負担のために費やされてしまう。

  

こうした矛盾に立ち向かうため我々は、違うサイドからの目線が不可欠となるわけだが、問題は日本が「属した組織を一度も辞めたことのない人たち」ばかりで支配されている国だということだ。

だからこそ、そうではない目線が必要になるのではないだろうか?

 

という長い前フリだったが(笑)今日はこの本をご紹介。

   

「みんなの意見」は案外正しい

ジェームズ・スロウィッキー (翻訳), 小高 尚子
単行本: 286 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4047915068 ; (2006/01/31)

  

この本の著者は "Wisdom of Crowds" 発生の条件を4つを挙げている。

 

多様性(各自が独自の私的情報を多少なりとも持っている)
独立性(他者の考えに左右されない)
分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)
集約性(個々人の判断を集計して集団として1つの判断に集約するメカニズムの存在)

  

これって見方を変えるとトレードそのものだ。

     

これまでは、ごく少数の上手くいったやり方が「正しい」とする考え方だったが、この本での筆者は「システムの成功は、どれが敗者かはっきりさせて速やかに淘汰する能力にかかっているというのだ。

いや、もしかすると、そもそも大量の敗者を輩出できる能力の有無が、システム成功の鍵を握るとも言い換えられたほうがいいのかもしれない。」とも述べている。

 

私の専門の分野の株式市場に基づいて言わせてもらうなら、この本は、データをもとにした裏づけがなく、統計学的な手法での解析がないのが若干気になる。

ただ身近な例を豊富に挙げることで、読みやすくなっているという利点もあるので、このあたりは著者の思惑なのかな?

   

まあ気にならない読者にはかえってわかりやすいかもしれないが、空売りの説明は、トレードをやったことのない人には、なかなか分かりにくいだろう。

翻訳された方がトレードをされたことがなければ、この部分の翻訳はさぞ大変だったろうと思う。(笑)

   

 
目次

集団の知恵
違いから生まれる違い―8の字ダンス、ビッグス湾事件、多様性
ひと真似は近道―模倣、情報の流れ、独立性
ばらばらのカケラを一つに集める―CIA、リナックス、分散性
シャル・ウィ・ダンス?―複雑な世の中でコーディネーションをする
社会は確かに存在している―税金、チップ、テレビ、信頼
渋滞―調整が失敗したとき
科学―協力、競争、名声
委員会、陪審、チーム―コロンビア号の参事と小さなチームの動かし方
企業―新しいボスって、どうよ?
市場―美人投票、ボウリング場、株価
民主主義―公益という夢


という目次でわかるように書いてある事例は面白いから、この本から何か具体的な教訓を読み取ろうとせずに、アメリカという国に属している著者の目線ではそう見えているのか・・という感じで読むと、いろいろと見えてくるものがあると思う

   

たとえば・・

  

集団によって個人の意見が抑圧されてしまう言論弾圧が行われたり、「集団行動を乱したくない」という思いから自ら意見を封じ込めるなどが発生することが指摘されているが、これは日本でも、とうの昔からすでに起こっている現象だ。

つまりこれからの日本は、大組織中心の高度成長型モデルではない「変化する新しい社会構造に柔軟に対応できる「個と組織との関係」を考えなければならないことになる。

 

そういうことを感知できる若い人たちが「組織を一度も辞めたことのない」層と同化しないことを祈るばかりだ。

   

結論:一読に値するまじめな良書。

   

出版社/著者からの内容紹介

人間は集団になると烏合の衆と化し、愚かな行動に走ると言われてきたが、それは違う。一握りの天才や、専門家たちが下す判断よりも、普通の人の普通の集団の判断の方が実は賢いのだ。多様な人間が、独立して判断を下す重要性を説き、インターネット世界を中心に広まる「たった一人のユーザーの判断の積み重ねが価値を生む」という新しいコミュニケーションのあり方を提言する。来るべき未来社会のスタンダードを示す必読書。

  

  

出典

  

2006年3月5日

  

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