グレートウォール

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月14日(金)より公開の「グレートウォール」をアサイチの部で鑑賞。

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建造に約1700年、長さ21196.18キロの長さを誇る、人類史上最大の建造物「万里の長城」を舞台に、本当は何のために建てられたのかをめぐっての伝説を映画化。

万里の長城を「人類を守ってきた最後の防壁」という位置づけで、饕餮と決死隊のド派手なバトルが見物だ。

 

監督は2008年の北京オリンピック開会式の演出を手がけた巨匠チャン・イーモウ。

「HERO」「LOVERS」でおなじみの監督だ。

  

「ジェイソン・ボーン」シリーズのマット・デイモンが主演なので、まず外れないだろうと踏んだわけだ。

ヒロインは2014年にハリウッド映画賞国際賞を受賞した女優ジン・ティエン。

アジアを代表する俳優アンディ・ラウなどの、中国を代表する豪華キャストが集結。

  

異様な雰囲気に包まれたシーンから始まるオープニングで期待は高まる。

この作品は中国プロパガンダ映画の超大作だが、その映像美はさすが。

 

チャン・イーモウは五輪開会式を手がけるなど、中共政府にも好意的な大作を手がけることの多い映画監督。実力は折り紙付きで、本作でも完璧なエンターテナーとしての力を見せつける。

  

『グレートウォール』30秒SPOT 予告編

   

時は12世紀の宋王朝時代。

マット・デイモン演じる弓の名手ウィリアムと、親友トバールの傭兵一団が、新兵器とされる、不思議な黒い粉(火薬)を探しにやってきたという設定。

 

だが一団は見たこともない怪物に襲われるが、ウィリアムはその一匹を仕留めたが、中国の軍隊に捕らわれる。

 

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怪物はやがて首都を占領し、人間たちすべてを食い尽くしてしまう勢いで襲撃。

60年ごとに襲ってくるモンスターの、団結力と知性は高く、怪物たちは増殖し続け、世界中を支配することができるパワーと恐怖感を、映像から感じさせる映像の力量は半端ではないレベルだ。

  

自己中心的だったウィリアムは、万里の長城を守っている名もなき戦士たちと戦うことを決意。

長城に陣取る中国軍は、ウィリアムとの協力で何千匹にもおよぶ、怪物との戦いに挑む。

   

『グレートウォール』予告編

  

ストーリーとしては荒唐無稽だが、映像の色彩や光に加え、圧巻のアクションシーンとあいまって、脚本のナンセンスさは、気にならなくなってしまう。

B級怪物映画に成り下がる一歩手前で踏みとどまっているのは、潤沢な制作費をつぎ込み、見せ場を連続させるというチカラ技ゆえだろう。

惜しむことなくVFXを駆使したシーンを次々と投入するという、シンプルで潔い横綱相撲といえばいいだろうか。

   

冒頭から、呆れるほどの人数を投入する中国軍は、完璧な統制のもとで、奇想天外かつ常軌を逸したスケールで総攻撃を仕掛けるのが圧巻。

また監督は「統制」と「覚悟」「信頼」という3つの要素をハイレベルに擬似的に体験させてくれる。

そのため、中国人とアメリカ人という垣根を超えて共感できる感動も織り込み済み。

 

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監督は集団が戦うことの意味を、いわゆる外人としてのマットデイモン達の傍観者目線で描いている。

そして観客の感情移入を促すシークエンスとして、偶然に彼らが怪物達の弱点を発見し、中国群の指揮官達にその活躍と力量を認められ、やがて共闘へと展開するという伏線もしっかりと張られている。

このように、監督は物語を盛り上げるための要素を押さえたうえで、ストーリーを複雑にすることなく、シンプルにしているため、よりそうした布石が際立つわけだ。

  

『グレートウォール』 チャン・イーモウ監督 特別映像

  

北京オリンピック開会式の演出を手がけただけあって、色彩とスペクタクル感は秀逸。

その戦闘シーンは美しくもあり、さらにはある種の滑稽さも感じさせてくれる。

    

戦士の部隊はいくつかに分かれているが、どの部隊も鮮やかな色で特徴付けられている。

単に巨大な太鼓を叩き合図を送るというだけの、ビビッドな色で統一された部隊は、こうした印象を観客に存分に味わわせてくれる。

   

武器を持った部隊は、腰にロープを巻き、槍を握って長城から跳躍。

怪物たちを突き刺し、バンジージャンプのように、万里の長城へ戻ルという仕掛けも実に凝っている。

  

モンスターは、灰色のイボイシシ軍団の様相のため、中国軍のカラフルな軍団とを対比させることで、観客の目を釘付けにするという監督の作戦は実に見事だ。

  

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映画としては103分と短めの上映時間がまた憎い。

   

もっと見ていたいと思わせているウチに終わってしまうという、太く短いコンセプト。

こういうところも実に巧い。

 

とにかくシンプルでそつのない演出に加え、スケールの大きな大作にもかかわらず、一分の隙も無く完璧にコントロールされた映画は実に気持ちよい。

この作品はエンターテイメント性の高さが面白さとダイレクトにリンクさせることに成功した希有な作品だ。

    

チャイナマネーとハリウッドとのコラボレーションが、実に巧く融合した結果だろう。

音楽家もクリーチャーもパシフィック・リムのスタッフが再結集しているため、実にレベルが高い。

   

恐るべき中国資本。

      

そのため映画の中では、英語と日本の字幕つきで広東語が縦横無尽に飛び交う。

そのため、3Dでの上映は目にかなりキツかった。(笑)

    

  

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このページは、hatchが2017年4月15日 08:27に書いた記事です。

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