Saturday November 4, 2006

US Market Recap

ファンダメンタルアナリスト一転反落

意外な数字が発表された。10月分の米国失業率は4.4%に下がり、なんと5年半ぶりの低水準だ。おまけに平均時給も予想を上回る+0.4%だったから、賃金インフレを唱えるアナリストが、次々とテレビに登場している。皆、つい昨日まで、弱いGDPと住宅市場を例に挙げて、予想以上に悪い米国経済を強調していたことなど、すっかり忘れてしまったようだ。

インフレを嫌う国債は、さっそくこのニュースで大きく売り込まれ、10年物利回りは4.596%だった木曜の終値から、一気に4.7%台に跳ね上がっている。国債が売り叩かれる理由は、もう一つある。株式市場開始30分後、ISMサービス業指数が発表された。結果は予想された54.5を超える57.1だったから、インフレ懸念をいっそう高めてしまった。

もちろん、ブッシュ大統領は喜んでいるはずだ。火曜に中間選挙が迫り、議員たちは低失業率を必要以上に引用して、共和党の推進してきた経済政策の正しさを強調することだろう。

国債市場のような派手な動きは無いが、株投資家にとっても、今日の雇用統計とISMサービス業指数は警報になった。雇用状況は思ったほど悪くなく、逆に賃金インフレのおそれがあるなら、皆が期待している金利引下げが早急に実施されることはない。現に、好調な株式市場は、利下げを織り込んでいるだけに、ここに来てインフレが再台頭すると買い手が不安になるのは確実だ。

少し話がそれるが、ファンダメンタル・アナリストは、チャートを基本にする、テクニカル・アナリストを軽視する傾向がある。しかし、雇用統計発表後のファンダメンタル・アナリストたちの感情的な意見を聞いていると、一晩のうちに米国経済のファンダメンタルズは180度転換してしまったようだ。ファンダメンタルズは、そんなに早く変わるものなのだろうか。話を戻そう。

短気金利の先物(フェドファンズ)を見てみよう。木曜時点では、20%の確率で1月に金利引下げが実施されることが示されていたが、現在その確率は0に下がっている。バークレーズ・キャピタルのブレント・ベイガン氏は、「市場から、完全に金利引下げ期待が消え失せました」、と語っている。

ドイツ銀行の債券取引部門責任者、ギャリー・ポーラック氏はこう述べている。「今まで国債は、減速する米国経済を前提にトレードされていましたが、今朝のデータは、予想以上に強い経済を顕著に表しています。もしこのまま国債の崩れが止まらず、10年債利回りが4.8%に達するようなら、たぶんパニックする投資者が出てくるはずです。しかし、私にとって、それは良い買いチャンスです。」

木曜、ダラス連銀のリチャード・フィッシャー氏は、「まだ満足できるレベルではないが、インフレは既にピークに達したと思われる」、と語っていることを付け加えておこう。

Stocks You Need To Know About

話題の国債

ほぼ売り一色となった国債市場だが、長期債券に連動する上場投信、TLTの週足チャートを見てみよう。

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9月、難関になった50%レベル(半値戻し)が、今回も壁になった。どのあたりまで下げるだろうか?

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これも、半値戻しがサポートになりそうだ。

Wall Street English

急落の国債

大きく売られる国債を見て、国債投資戦略家のデービッド・アダー氏はこんなことを言った。

There is no silver lining to this cloud.

silver lining は「明るいヘリ」、という意味だから、この雲には明るいヘリが無い、ということになる。

少し説明すると、アメリカには「There is a silver lining to every cloud.」、という諺がある。「雲にも明るいヘリはある」、と訳すことができるが、「どんな悪いことにも良い面がある」、という意味だ。

ということは、今日の国債マーケットは一方的な売り。全く買い手には良い場面がなかったわけだ。

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