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失敗の仕方を学ぶ?

ABCニュースが、「金持ち父さん貧乏父さん」の著者ロバート・キヨサキ氏に挑戦した。誰でもキヨサキ氏の言うように、本当に金持ちになれるのだろうか?スタート資金は1000ドル、そして制限時間は20日間の設定で、3人が実験に参加した。先ずメンバーを紹介しよう。広告会社勤務のシェリルさん、建築会社に務めるジュリーさん、そしてカウンセラーのジェームズさんだ。

集まった3人を前に、キヨサキ氏は話し始める。「あなた方の中で、誰が最も起業家としての才能があるかをテストしたいと思います。与えられた20日間で、手持ち資金の1000ドルを増やしてください。方法は、あなたが自分で決めてください。もちろん、法に違反するやり方はダメです。それから、もう一つ約束してほしいことは、だれにもABCニュースが主催者であることを言わないでください。」

説明が終わり3人が去った後、キヨサキ氏はABCニュースにこう語った。「一人も利益を上げられないかもしれませんが、それは決して不思議なことではありません。ひょっとしたら、全資金を失うこともありえるでしょう。こんなことは言いたくないのですが、ビジネスを始める人たちの90%が失敗します。ですから、私はいつもこう強調しています。きびしい現実を恐れて何もしないことは、成功を避けているのと同じです。」

シェリルさんは、非営利団体のために資金集めをすることにした。集まった資金の一部を、手数料として受け取ろうという作戦だ。ジェームズさんはキャンディーを売ることにした。箱に詰めたキャンディーを学校において、売上を学校と分けるやり方だ。ジュリーさんは、頭痛薬や胃腸薬用の自動販売機を売ることにした。自動販売機は安くない。そのため、ジュリーさんは更に自己資金の1000ドルを足すことになった。

制限時間の半分、10日が経過した。困ったことに、ジュリーさんには注文した自動販売機がまだ届かない。イライラするジュリーさんに、キヨサキ氏はこう語った。「あと10日しか残っていないのに、こんな状態では絶望的ですね。」この言葉は意外だった。ジュリーさんは言う。「キヨサキ氏は、具体的なことを何ひとつ教えてくれません。私が知りたいのは、効果的なセールス方法です。」

ジェームズ氏はわずかな利益を上げたが、その全額を慈善組織に寄付してしまった。ジェームズさんに、キヨサキ氏はこんな発言をした。「なぜそんなことをしたのですか?先ず自分が利益を確保することが肝心です。あなたは優先順序を間違っています。」シェリルさんにも、キヨサキ氏はきびしい言葉を放った。「もっと積極的に宣伝をしなければダメです。あなたのビジネスは、非常事態に直面しています。いいですか、チャンスは一度しかないのですよ。」

最終結果を見てみよう。ジュリーさんは、自動販売機を一台も売ることができなかった。キヨサキ氏は、ジュリーさんの非現実的なビジネスを批判した。ジェームズ氏は540ドルの儲けがあったが、全てを慈善組織に寄付した。シェリルさんは243ドルの利益が手元に残った。

ジュリーさんの言うように、キヨサキ氏は具体的なことを参加者に教えることはなかった。ABCニュースは、単刀直入にキヨサキ氏に質問した。「あなたの本からは、いったい何を学ぶことができるのですか?」返って来た答えはこれだ。「仕事を辞めないで、パートタイムでビジネスを始めてください。そして何度も失敗を繰り返してください。」

どの株番組でも同じことが討論されている。はたして、本格的なベアマーケットが始まったのだろうか?「中国と米国経済は、やや減速気味の傾向があります。インフレをかなり心配している人たちが多いですが、私はそれほど気にしていません」、と言うのはヘッジ・ファンド・マネージャーのマーク・バウチャー氏だ。「アメリカと中国の経済成長が急ピッチで下がるのではなく、ゆっくりしたペースで修正するなら、世界経済のソフトランディングが可能です。」

これから先、株式市場は何回かの下げを展開することになりそうだが、バウチャー氏は投資者が注目すべき点をいくつか挙げている。「2006年度の投資を成功させるには、国債の監視を忘れてはいけません。下は長期国債ファンド(TLT)の月足ですが、注意を払わなくてはいけないのが、82付近を走るサポートラインです。もしこのラインが崩れるようなら、株式市場は厳しい状況に陥ることでしょう。」

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「更なるドルのブレイクダウンは、株式市場に悪影響です。ユーロ・カレンシー・トラスト(FXE)の日足で分かるように、ユーロが大きく上げています。127.49で先週の取り引きを終えましたが、135を超えるような事態が起きると、株式市場にはかなりマイナス材料になります。」

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「長期的なトレンドを判断する方法の一つとして、200日移動平均線が利用されますが、最近話題の金、オイル銘柄、そして新興成長市場が200日移動平均線あたりまで修正することも必要です。下げた後、直ぐ反発するのではなく、しばらく横ばいをしてエネルギーをためるようであれば、いっそうマーケットに好ましい環境が出来上がります。

投資者が現在しなくてはいけないことは、守りを固めることです。ここから積極的な空売りを実行するのは、もはや遅すぎます。もちろん、ヘッジという意味での空売りなら別です。

あまりに報道が誇大化されていますが、マスコミが言うような悪性インフレに、アメリカが陥る危険はありません。最近のデータを検討すると、インフレは既にピークに達したような気配が見え始めています。ですから、国債が長期サポートを維持し、ドルの下落が止まるなら、株式市場は2002年から出した利益を全て無くすほどの修正で済むことでしょう。」

マスコミが言うほどの、深刻なインフレはアメリカに存在しない。最悪な状態は既に過ぎ去っている。そんなバウチャー氏の言葉を聞くと楽観的な感じがしてしまう。しかし、氏の見方はきびしい。最後の部分で分かるように、バウチャー氏は、2002年からの上昇を帳消しにする下げを予測している。もし国債とドルが更に崩れるなら、株式市場は悪性なベアマーケットになりそうだ。

あなたは短期投資専門ですか、それとも長期投資が専門ですか?この質問に明確な回答ができる投資者は少ない、とコラムニストのケン・シュリーブ氏は言う。「ほとんどの人たちは、こう教えられてきたはずです。株を買ったら、長く持ち続けなさい。多少の値動きに動揺してはダメです。もし株価が半分になるようなことがあったら、迷わず買い足しなさい。全ては時間の問題です。きっと株価は元に戻るだけでなく、利益も上げることができるでしょう。」

シュリーブ氏の例で分かるように、長期投資者の欠点は、現在の株価や経済状態にあまり注意を払わないことだ。場合によっては、株は長期持てば必ず儲かる、と信じている人もいるから、持ち株のことを完全に忘れてしまっている投資家もいる。「長期投資を専門にすることは構いません。しかし、多くの人は株を必要以上に長く持ちすぎです」、とシュリーブ氏は指摘する。

どうして人々は長期投資を選ぶのだろうか?シュリーブ氏の説明に戻ろう。「最初から、きちんと投資スタイル決めて株を買う投資家はマレです。20%の儲けを狙っている場合なら、1カ月でそれが達成できることもあれば、運良く二日間で達成してしまうこともあります。ようするに、納得できる利益さえ出れば、投資期間などあまり問題にならないわけです。しかし現状は、多数の投資者が長期投資が中心だと言います。なぜでしょうか?

好例を挙げましょう。2000年のナスダック市場を思い出してください。アナリストは次々とインターネット銘柄に超強気な買い推奨を連発していました。事実、株価も面白いように上がっていました。しかし有頂天になっていた投資家には、差し迫ったバブル崩壊など予期することはできません。あまりにも割高な株価はとうとう下げ始めるのですが、ここで投資者たちはどうしたでしょうか?

普通なら、一定の損額が生じたら株を売却しますが、多くの投資者はそこで昔おしえられたことを実行したのです。株が下がったら買い足せば良い。あとは時間の問題、待てば必ず株価は回復する。もちろん、下げ相場で難平買いが成功するはずがありません。度重なる買い足しで資金も尽き、こうして長期投資者が誕生したわけです。」

たしかに、長期保有で株が元の値段に復帰することもある。しかし2000年3月、5132ドルだったナスダック指数は、今日現在まだ2169ドルだ。個別銘柄なら、2000年64ドルだったサン・マイクロシステムズは今日4ドル30セント、104ドルだったEMCコープは12ドル40セント、150ドルだったJDSユニフェーズは現在たったの2ドル87セントだ。

株を塩漬けにしないためには、どうしたらいいのだろうか?シュリーブ氏はこう語っている。「長期短期にかかわりなく、投資者はトレンドに敏感でなくてはいけません。トレンドの転換を確かめるのは簡単です。チャートに一本の、トレンドラインを入れるだけで、ダメな株をイタズラに保有することはなくなることでしょう。」

第1四半期、米国GDP(国内総生産)は5.3%の伸びを見せたが、こんな好調もこれで終わりだ、と言うアナリストたちがいる。最近のデータによれば、製造業は冷えこみ始め、住宅市場も下向きだ。たび重なる金利引き上げ、それにオイルやガソリンなどのエネルギー価格上昇は、消費者の家計に重圧となっている。

「第1四半期のGDPは強い数値でしたが、5%台の数字を見るのは、これが最後になると思われます」、と語るのはグローバル・インサイト社のアナリスト、ナリマン・ベラベッシュ氏だ。「低迷がハッキリし始めた不動産、個人消費の低下は米国経済を減速させることでしょう。」

ドイツ銀行の、ジョセフ・ラボグナ氏は、こんな見方をしている。「+5.3%という第1四半期の結果は目覚しい成長率です。しかし、だからといって将来の見通しに楽観的になることはできません。まだ推測の段階ですが、今期のGDPは2%以下の伸びになる可能性があります。非農業部門の新規雇用者数、小売売上は下降の兆しが見えますから、米国経済の成長率は急ピッチで下がることでしょう。」

発表されたGDPを見る限り、個人消費、設備投資、そして輸出には問題がないようだが、一つ忘れている事実がある。第1四半期と、去年第4四半期の個人所得が下方修正されたのだ。アナリストたちは、最終的な手数料収入やボーナスの結果が反映されて、第1四半期は大きな上方修正になることを予想していたが、実際に公表された数字は最初に出されたものより510億ドルも下回っていた。連銀の役員たちは人件費の大きな増大を心配していたから、個人所得の下方修正は好ニュースだ。これで、少しインフレ懸念が薄れたことだろう。

2005年、消費者のサラリーは4.2%の上昇を記録した。インフレ率の3%と、1.8%増えた就業者数を考慮すると、2005年度のサラリーは事実上2004年度より少なくなったことになる。「最近までの様子を振り返ってみると、家庭収入の増大は株のキャピタルゲイン、ボーナス、それに不動産の手数料などといった特殊な収入が主でした。しかし、これらの収入が下がり始めている今日、個人所得の上昇を期待することはできません」、とロンバード・ストリート・リサーチのガブリエル・スタイン氏は述べている。

もう一つ、家庭の重要な財源になっていたのが不動産ローンの借り換えだが、これも既にあてにできない。金利引き上げ政策で不動産ローンの金利も上昇し、おまけに住宅市場は下降が始まっているから、銀行も以前のようにローンの借り換えに積極的でない。最新のデータによれば、新築住宅価格は去年より0.9%高いだけだから、インフレ率にも追いついていないわけだ。

米国は不況に襲われるのだろうか?2007年、アメリカが不況になる可能性は50/50とロンバード・ストリートのアナリストは言うが、ほとんどのアナリストは企業による積極的な設備投資、それに輸出部門の成長で極端な経済減速は避けられると予測している。「米国経済の行方を決定するのは今期と来期の結果にかかっています」、とRBSグリーンウィッチのスティーブン・スタンレー氏は強調している。

ふところが寂しくなると、さすがに心細いものだが、現在のフォード・モーターが正にそんな状況だ。ビジネス・ウィーク誌の報道によれば、きびしい展開が予想される向こう18カ月間に備えて、フォードは貴重な現金を節約しているという。その証拠に、5月24日、フォードは今年10月に満期となる社債保持者に、高金利の2010年と2011年に満期になる社債へ乗り換えることを説得した。

少し説明すれば、10月に満期を迎える社債総額は25億ドルにおよび、4.95%の利子が支払われていた。当然、フォードはこれで25億ドルの金が必要になるわけだが、この出費は経営の苦しいフォードはどうしても避けたい。そこでフォードが思いついた策が、現金を払う代わりに、社債保持者に他の債券への乗り換えを強く勧めているわけだ。

もちろん、社債保持者はフォードの悪化する経営状況を知っているから、10月には満期になる社債を現金化したいと思っている。こんな投資者の気持ちを変えるために、フォードが乗り換えを勧める債券は、なんと10.6%の金利支払いがある。満期になる債券は4.95%だから雲泥の差だ。

第1四半期の決算報告書によれば、フォードは210億ドルの現金を持っている。これだけあるなら、投資者に社債乗り換えを説得しなくてもよさそうだが、なぜフォードは現金節約に懸命なのだろう?原因は最近5年間で2回目になるリストラだ。

今回のリストラで、フォードは大幅な経費削減を計画している。自動車工場の閉鎖、従業員数の縮小、そして労働組合との交渉が主な内容だ。工場の閉鎖、それに従業員を解雇するには、膨大な離職手当金を払わなければならない。しかし、労働組合側はスト決行の動きを見せているから、そんなことが起きればフォードの収益に悪影響だ。

推定によれば、現在75%のフォード北米工場が稼動している。アナリストの話では、稼働率が80から85%以下になると、企業の保有する現金消費速度が大きく上昇するという。稼働率が減れば、もちろん自動車の生産数も減少するが、従業員には給料を払い続けるわけだから、アナリストが言うように現金消費速度が上がることになる。

「フォードにとって、きびしい現況ですが、これは更に悪くなることでしょう」、と投資アドバイザーのジョン・カセサ氏は言う。「今年フォードは離職手当として2億5000万ドル、それに工場閉鎖に2億2000万ドルの出費が計画されています。しかし、問題は自動車労働者組合(UAW)です。工場閉鎖反対を求めてスト決行を考えているようですが、これはフォードに致命的な打撃を与える可能性があります。」

マーケットシェア減少を防ぐために、過去6カ月間フォードは新車を発表しているが、自動車評論家やウォールストリートのアナリストは冷たい評価をしている。おまけにガソリン高も重なって、期待されたスポーツ・ユーティリティ車の売上は冴えない。暗いニュースばかりのフォード、はたしてどのくらいの投資者が、社債乗り換えに同意するのだろう。

人気番組「マッド・マネー」で、ジム・クレーマー氏は「ボラティリティが今日のマーケットを支配している」、と視聴者に警告した。どういう意味だろうか?簡単に説明すれば、株価が乱高下する変動率の高いマーケットでは、損は予想以上に大きくなり、逆にうまく行った場合は思わぬ大きな利益を手にすることができる、ということになる。

マーケットに下げは付き物だが、「まだこれから大きな下落がある」、とクレーマー氏は断言する。投資者はどうするべきだろうか?クレーマー氏の回答を記す前に、投資アドバイザーが薦める一般的な方法を説明しよう。

1、株を現金化する
2000年から2003年まで続いたベアマーケットを思い出してほしい。ハイテク株は徹底的に叩かれ、50%以上下げる株が続出した。ウォーレン・バフェット氏が言うように、投資で成功する秘訣は損を出さないこと。ここは持ち株を売って、しばらく休憩するのも一案だ。

2、超保守的な投資のみを選ぶ
2000年、異常な株価収益率に気がついた投資者は、危険な株を処分して資金を債券ファンドやマネーマーケットに避難させた。結果的にこれは正解だったわけだが、保守的な投資でも、短期債券と中期債券の組み合わせで、年に10%近い利益を上げることもできる。

3、起業家へ転身
超保守的な投資が嫌なら、おもいきってビジネスを始めたらどうだろうか?ミリオネアの地位を獲得した、ほとんどの人たちは起業家だ。誰にでもできることではないが、経営コンサルタントなどに相談して、自分の可能性に賭けるのも悪くない。

4、何もしない
もちろん、これには条件がある。あなたがベアマーケットに備えたポートフォリオを既に持っているなら、何もする必要はない。一部の資金を、商品市場に回すことも重要だ。

それでは、クレーマー氏の回答に戻ろう。「どんなに下げが厳しくても、マーケットから買い手が消えてしまうわけではありません。下がるたびに、買い手を集める銘柄があるのです。自社株買い戻し、という言葉を耳にしたことがあると思いますが、下げ相場では自社株買い戻しを頻繁にする株を買うことが秘訣です。例を挙げましょう。

シティグループ(C)、タイム・ワーナー(TWX)、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、ペプシ(PEP)、CBS(CBS)、ホーム・デポ(HD)、ニュース・コープ(NWS)、アムジェン(AMGN)、シェブロン(CVX)、テキサス・インスツルメンツ(TXN)、ジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)、マクドナルド(MCD)、ノキア(NOK)、シアーズ(SHLD)」

この中で、クレーマー氏が一番気に入っているのは、最後に記されているシアーズ(小売セクター)だ。なんでも、最高経営責任者のエディー・ランパート氏は、会社収益のためならガンガン自社株を買い戻すことだろう、とシアーズをべた褒めだ。

注目される日銀の動き

世界で最も力がある銀行は日銀だ、とジム・ジューバック氏(経済コラムニスト)は言う。ヨーロッパ、アジア、米国株式市場が5月11日から大きな下方修正となったが、どうやらこれは日銀が原因らしい。ジューバック氏の意見を聞いてみよう。

「なぜこんなに株が売られたのでしょうか?5月17日、ダウ指数は214ポイントにのぼる大きな下落を展開しました。アメリカは悪性なインフレに陥る可能性がある。だから連銀は予想以上に金利を引き上げることになるだろう、といったことが株不調の原因と説明されています。

5月17日の朝、発表された消費者物価指数は+2.3%でした。危険信号の2.5%に近い数値だったので、6月の会議で短期金利が引き上げられる可能性が、35%から50%に上昇しました。もし6月に利上げが実施されると、17回連続ということになります。金利上昇は株に悪影響と言われますが、先週マーケットが売り込まれる以前時点で見ると、ダウ指数は2004年6月以来12%の伸びを記録していました。

金利が上昇すると、国債の値段が下がるのですが、国債マーケットが崩れることはありませんでした。例えば5月18日ですが、ダウはマイナス77ポイント、そしてナスダック市場は2005年11月以来の安値に落ち込みましたが、10年物国債は0.75%上がって利回りは5.07%に下がりました。

金の価格も、おかしな動きを見せました。インフレ対策として人気の金ですが、高まるインフレ懸念が売り材料になりました。5月10日、1オンス700ドルで取引されていた金は、5月19日657ドル50セントで終了しました。もし投資者が本当にアメリカのインフレを心配しているなら、この下げは納得できません。おかしな動きはドルにも見られます。連銀議長のバーナンキ氏が、インフレ抑制に失敗しているなら、ドルは更に売られたはずです。しかし事実は、5月10日ドルは110.6円、そして5月18日110.7円とほとんど変化がありません。

ここで注目されるのが日銀です。ここ2カ月間で、日銀は日本国内の銀行から約16兆円の現金を吸い上げ、貨幣供給量は10%減りました。なぜこんなことをしているのでしょうか?デフレに苦しんだ経済も上向き始め、インフレの傾向が見えてきたためです。この現金吸い上げ終了までまだ少し時間がかかりますが、終了と同時に日銀は、金利を引き上げることでしょう。

海外の機関投資家は、安い金利で日本から金を借りて、世界の市場で株を買っていました。過去12カ月で7割の伸びを見せたムンバイ市場には、100億ドルの資金が海外から流れ込んでいます。これだけの金額では、巨大なニューヨーク市場を動かすことは無理ですが、小さなムンバイを上昇させるには十分な額です。この好調なマーケットを継続させるには、新しい資金が必要ですが、積極的に日銀が現金を吸い上げている今日、日本からの資金をあてにすることができません。これが、結局ムンバイ市場が月曜に大きく下げた理由です。」

新興成長市場が好調だったのは、正に日本のおかげだったわけだが、これからは無謀な投機が減ることだろう。危険度の高い国が避けられ、安全な投資が中心になりそうだ。

アナリストも大衆の一人

バブルが弾けた2000年、いったい何パーセントの株に売り推奨が出されたのだろうか?正解は、たったの5%だ。投資者の資金を守るために、とうぜん売りが薦められるべきだったが、事実は割高なインターネット銘柄が推され続けた。50%の下落など良い方で、シエナやCMGIのように、99%の価値を失う株も続出した。

それから5年、「現状は今日もあまり変わりがありません」、とリッチ・スミス氏(フール・ドット・コム)は言う。話を聞いてみよう。

「インターネットバブルが弾けた後、新しいトレンドが生まれました。アナリストたちが、売り推奨を出すようになったのです。そこで、少し調べてみました。2000年から2004年までに、売りが推薦された株は、年平均で19%の伸びがありました。買いとホールドの格付けが発表された銘柄は、年平均で7%の上昇です。

アナリストは馬鹿ではありません。皆すばらしい学歴があります。問題は、彼らの意見が投資者に大した利益をもたらさないことです。覚えておいて欲しいことがあります。格上げ、格下げ、買い推奨などを発表するのは、セル・サイド( 証券会社)のアナリストです。証券会社は手数料収入を上げなくてはいけません。売り推奨を連発したのでは、大衆が恐れてマーケットに参入してきません。これでは、証券会社の収入が落ちてしまいます。ですから必然的に、アナリストは買い推奨が圧倒的に多くなります。

買い推奨が多いのは、手数料だけが目当てではありません。例を挙げましょう。設定は5年前です。あなたがアナリストなら、人気株サン・マイクロシステムズと、水道の蛇口メーカー、アメリカン・スタンダードのどちらに買い推奨を出すでしょうか?結果的には、地味な蛇口メーカーは3倍以上になり、人気株のサンはバブル崩壊で大暴落になりました。しかし5年前、アメリカン・スタンダードを推薦するアナリストはいませんでした。

なぜアナリストは蛇口メーカーの買い推奨を出せなかったのでしょうか?現在、アップル・コンピュータには17の買い推奨、8のホールド推奨が出ていますが、売りを薦めるアナリストは一人もいません。アップルが悪い決算を発表して、株価が急落したとしましょう。アナリストは慌てるでしょうか?もちろん、動揺するアナリストなど一人もいないことでしょう。皆が皆、買いとホールド推奨ですから、アップルに騙された、の一言で終わりです。

皆と足並みを揃えていれば安心です。当たればヒーローですが、20人のアナリストが買いを出している時、自分だけ売りを推薦することは勇気が要ります。外れたら、たぶん上司にこう言われるでしょう。「なぜ売りを薦めたのだ?皆が買っているのに、どうしてそんな馬鹿な事を言ったのだ?」

アナリストも大衆の一人です。牛は群れの中で行動する限り安全です。しかし、群れから離れた牛はオオカミの餌になってしまいます。投資で成功するためには、大衆の一部になってはいけません。カウボーイのように、少し離れた場所から、牛の大群を観察するべきです。買いのチャンスは、アナリストの売り推奨です。パニック売りが殺到し、株価は正当評価額以下に下がることでしょう。」

(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)

夏用の株

まだ5月だ、と言われるかもしれないが、そろそろ本格的な夏がやって来る。夏休みでマーケット参加者が減ることを理由に、秋まで株式市場から遠ざかる投資者もいるが、完全に投資を一旦中止してしまうのは勿体ない。「今年の夏、どんなマーケットが展開されるかを、正確に予測できる人はいません。退屈な相場になる可能性もありますが、大切なことは、夏用の投資ポートフォリオを作ることです」、と投資アドバイザーのハリー・ドマッシュ氏は言う。夏用の投資ポートフォリオ?氏の話を続けよう。

「夏は横ばいする傾向がありますから、方向性のはっきりしないマーケットで、良い成績を上げることの出来る株を選ぶことが肝心です。簡単に言うと、高配当銘柄が対象になります。もちろん、企業のサイズ、収益性、アナリストによる格付け、リスク/リワード比なども考慮する必要があります。

配当の利回りは、過去の配当金を使って計算しないで、向こう12カ月で支払いが予想される金額で計算します。ですから、現在10ドルの株が、今年50セントの配当が予想される場合なら、利回りは5パーセントです。それでは株価が7ドル50セントに下がると、配当利回りはどれくらいになるでしょうか?50セント割る7ドル50セントは0.066ですから、新配当利回りはほぼ6.7%です。ひじょうに魅力的な利率ですから、とうぜん買い手が集まり、それが株価の回復につながります。もちろん、高配当があれば、株価が横ばいしてもさほど気になりません。利回りが4.5%以上ある株だけに焦点を合わせることをすすめます。

マーケットが崩れ始めると、小型株が特に大きな被害を受ける傾向があります。必要以上のリスクを避けるために、小型株をポートフォリオから外すことが大切です。小型株の定義は、時価総額が10億ドル以下の銘柄です。一般的に大型株ほど投資リスクが低くなりますから、時価総額が20億ドル以上の企業を選ぶことを推奨します。

企業の収益性を確かめるには資本収益率が役立ちます。業績の悪い会社は、資本収益率がマイナスになりますが、きわめて業績の良い会社なら25%以上の数値を記録することがあります。少なくとも過去5年平均が、10%以上ある会社だけに絞ってください。

アナリストの格付けも重要です。ほとんどのアナリストは、Strong Buy、Buy、Hold、Sell、そしてStrong Sellを格付けに使いますが、SellとStrong Sellの出ている会社は避けてください。」

ドマッシュ氏は、上記の条件以外にレラティブストレンクスや、今年後半の収益予想も考慮して、下記のような夏用銘柄を候補に挙げている。これらは買い推奨ではなく、投資の一アイディアであることを強調しておきたい。

Alliance Bernstein (AB) 配当利回り4.7%
Allied Capital (ALD) 配当利回り7.7%
Companhia Siderurgica (SID) 配当利回り13.4%
Energy Transfer Partners (ETP) 配当利回り5.8%
World Wrestling Entertainment (WWE) 配当利回り5.6%

(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)

新人トレーダーへの言葉

「あなたなら、どちらを選びますか?完璧なトレードシステムですか、それとも素晴らしい友人ですか?」と質問するのは、先物トレーダーのノーマン・ハレット氏だ。妙な質問と思われるかもしれないが、トレードばかりに熱中してしまうと、当然な答えが分からなくなってしまう。氏の話を続けよう。

「先ず、完璧なトレードシステムの定義から始めましょう。完璧なトレードシステムとは、あなたのトレードスタイルと性格にピッタリ一致するシステムのことです。あなたは長く待つことが嫌いですか?オーバーナイトで株を持つと、気になって眠れなくなりますか?週足チャートより、3分足の方がやりやすいですか?このような質問に回答することで、自分の性格をつかむことができます。

ベテラントレーダーは、なぜ新人トレーダーを大歓迎するか分かりますか。誰でもトレードを始めると、高価なコンピュータを買って、チャートソフト、それにニュースレターの購読をして、少しでもベテランに近いトレードをしようと頑張ります。しかし、ほとんどの場合、ルーキーのすることはベテランと正反対です。ようするに、新人がマーケットに投入する資金は、単にベテラントレーダーのポケットに入るだけなのです。ベテランばかりのマーケットでは、相場が難しくなって、簡単に利益を出すことができません。

トレードを始めて、日が浅いトレーダーだけが新人ではありません。2年、4年という経験があっても同じ間違いを繰り返す人もルーキーの一人です。私は22年間マーケットを見てきましたが、ほとんどの人たちは新人のままで、全くプロになることができません。

新人からプロに成長する方法ですが、鍵は既にあなたが持っています。あなたは既に高性能なチャートソフトを使って、プロと同様のトレードができます。違いは精神面です。あなたは、あまりにもビクビクしています。トレードは確率の世界ですから、勝算のあるトレードはプロのように自信を持ってやることです。ダメだったら、プロのように素早く損切ればいいだけです。トレード手法よりも、精神面の強さの方がずっと大切です。」

(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)

トレーダーのコーチとして知られるダグ・ハーシュホーン氏は、大学を卒業するまで、野球に明け暮れる毎日だったと言う。シカゴ・マーカンタイル取引所で、しばらくフロア・トレーダーを務めたが、やはり野球を忘れることができない。そんな訳で氏は、大学へ戻ってスポーツ心理学を学び、野球コーチとしての生活が始まった。

「スポーツ心理学が、トレードに応用できることに気がつきました。トレードも野球のように、メンタル・ゲームの要素を多分に持っています」、とハーシュホーン氏は言う。「ほとんどの人たちは、トレードで成功するには、プロ・スポーツ選手のようなタフ・メンタリティーが必要と思っています。しかし、それは誤解です。」誤解?タフなメンタリティーは要らないのだろうか?氏の話を続けよう。

「スポーツの場合ですが、失敗したらうまく出来るようになるまで、徹底的に練習することが強調されます。失敗が重なっても、練習を繰り返すことで、必ず成功できると信じるわけです。トレードも、うまくなるまで練習することが大切と言われますが、練習が逆効果になってしまうことが多いのです。

スポーツはイメージ訓練をして、自分が最高のプレイをしている場面を想像します。トレードもイメージ訓練が使えますが、最高の売買をしている自分を想像する前に、現実問題として、先ず最悪な結果を知っておかねばなりません。成功しているトレーダーは、うまく行くことだけを考えているのではなく、もしこんな状況が起きたらどうしょうか、ということを常に頭の中に入れています。」

数多くのトレーダーを成功に導いたハーシュホーン氏だが、成功するトレーダーに共通することは何だろうか?「自己認識が成功への鍵です。成功しているトレーダーは、自分の長所欠点を理解しています。」この長所短所ということで、ハーシュホーン氏は面白い例を挙げている。「あなたがカーブ打ちの名人だったとしましょう。相手チームは、あなたの優れたカーブ打ち技術を、直ぐ見破ることでしょう。ですから、ピッチャーはシンカーやスライダーを中心にして、あなたに一球もカーブを投げることはないでしょう。

しかし、マーケットは違います。マーケットは、あなたの得意トレード手法を知りません。もちろん、知りたいとも思っていません。成功しているトレーダーは、明確なゴールを持って、自分の得意技でいつも勝負しています。繰り返しますが、マーケットはあなたの得意技を避けようとして、故意に値動きを変えることなどありません。」

トレードはいつもうまく行くとは限らない。どうやったら、うまいタイミングで損切ることができるだろうか。「神様、助けてください。お願いですから、あともう5セント株価を上げてください。こんな祈りが思わず出る時が損切りのタイミングです」、とハーシュホーン氏は冗談まじりに言う。

(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)

「株を持っていると、よく眠れないのです。ですから、私がデイトレードを選んだのは自然な成り行きです」、とデービッド・ベイカー氏は言う。「ベテラン・トレーダーから手法を学びましたが、これは小さな利益を素早く取る、スカルピングでした。一回の利益が少ないですから、スカルピングに要求されるのは、頻繁な売買です。」

ベイカー氏が本格的にトレードを始めたのは、大学2年生の時だ。株の儲けで、授業料、アパート代、食費などを全てまかなったというから、生まれつきの才能があったのかもしれない。とにかく株が最優先だったから、午前中の講義には一切出席しなかった、とベイカー氏は回顧する。

天才少年、と呼ばれるようになるまでスカルピングの腕は上がったが、ある日ベイカー氏は口座資金の半分を失う大損を出した。「この損で、しばらくトレードが出来なくなりました。資金が不足したからではありません。ここが買いだ、と分かっていても引き金を引けなくなってしまったのです。そんなわけで、3カ月ほどマーケットを離れました。」

ベイカー氏が、たった一日で50%もの資金を無くした原因は、適切な損切りをしなかったことだ。「買いが成立してから一分もたたないうちに、株価が急ピッチに下げ始めました。もちろん、そこで損切りしていれば小さな傷ですんだのですが、私はそこで買い足しました。下げ止まるかのように見えたのですが、また下げが始まりました。完全に私は動転してしまい、結局パニック売りです。」

3カ月ほど相場を休んだ、とベイカー氏は言うが、正確には違ったトレード方法を求めて、トレーダーの話を聞いたり、様々な本を読みあさりペーパートレードに没頭した。「一つの株と長く付き合うことは有益です。同じ銘柄を毎日寄付きから大引けまで追っていると、その株が持つ習性や癖が分かるようになります。ある証券会社の株ですが、同様なトレードパターンを60日間も繰り返したことがあります。チャートはどの銘柄にも使えますが、一銘柄を知り尽くすことで、他のトレーダーに大きな差をつけることができます。」

ベイカー氏の好きなチャートパターンは何だろうか?「私は5分足チャートを使ってデイトレードをしています。寄付き直後の激しい動きが済んだ後、高値圏で株価が横ばいすることがあります。値幅が大き過ぎる横ばいはダメですが、ひじょうにきついレンジでの横ばいは注目です。3本4本の横ばいでは大した結果を望むことはできませんが、40分以上の長さなら、強力なブレイクアウトが期待できます。最初の上放れで買うと騙されることが多いですから、直ぐ飛びつくのではなく、ブレイクアウトを十分に確認することが肝心です。」 

(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)

ニュースを聞いてからでは遅すぎる、とよく耳にするが、ケン・ウルフ氏はニュースを利用したトレードが上手いことで有名だ。「一見するとデタラメのようですが、ニュースが作り上げる値動きには、一定のパターンがあります。例えば格下げ、予想以下の決算発表はギャップダウンを引き起こします。小さなギャップではダメですが、極端に大きな時は注目です。高い確率で一転反発がありますから、強力なラリーに乗ることができます。」

とにかくニュースが無くてはトレードができないウルフ氏だから、テレビ、ラジオが消されることはない。ニュース・トレーダーになるには、どんなことに注意する必要があるのだろうか?「たぶんトレード方法はあると思うのですが、5ドル以下の安い銘柄は避けた方が無難です。インチキというわけではないですが、あまり安い銘柄はマーケット・メーカー(注文に応じて売買する義務を負う証券会社)の数が少ないので、株価がコントロールされやすい危険性があります。

ニュースは、ダウ・ジョーンズなどの信頼できる会社から発表されたものを使うことが大切です。チャットルーム、掲示板などはニュースではありません。株価を煽るために、インターネットは悪用されていますから、ニュース源の確かな情報だけを選ばなければいけません。

決算発表の前には、アナリストの予想が頻繁に報道されます。どんなに有名なアナリストの意見でも、それだけを頼りに株を売買してはいけません。大手証券のアナリストが、「グーグルは間違いなく、予想された一株利益を上回るでしょう」などとテレビで発言すると、実際の決算を待たずにグーグルを買ってしまう人たちがいますが、これはあまりにも危険です。肝心なことは、実際の決算に大衆がどう反応するかであって、アナリストの予想に基いたギャンブルではありません。

これはニュース・トレードだけに限ったことではありませんが、勝率が9割以上になるまでは、徹底的にペーパー・トレードで練習してください。新しい手法を学ぶと、本物の資金を使ってトレードをしたくなりますが、頭で分かっていることが儲けという形で現実化されるには、有る程度の時間がかかります。はやる気持ちを抑えて、好成績が上げられるようになるまで、ペーパー・トレードを続けてください。

自分の考えに固執し過ぎるのは危険です。株価が逆方向へ動いた場合、私たちができることは素早い損切りです。個人トレーダーはヘッジ・ファンドのように豊富な資金があるわけではありませんから、口座資金は大切に扱わなくてはいけません。おかしい、なぜ下がるのだ?これだけ良いニュースだから、この辺で売りは止まるはずだ。そんな自分の考えに固執しないでください。素早い損切りができなくては、トレーダーとしての成功はありえません。」

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1990年代、トップクラスのヘッジファンドマネージャーとして活躍したマーク・バウチャー氏には、嫌な思い出がある。1973年のベアマーケットで、氏は口座資金の90%を失ってしまったのだ。徹底した資金管理抜きで、投資で勝つことはできない。それが、氏の学んだ最高のレッスンだった。以前CBSでレポーターを務めた、ケビン・マーダー氏がバウチャー氏をインタービューした。一部を紹介しよう。

ケビン・マーダー(KM):最初に株式市場に興味を持ったのはいつですか?

マーク・バウチャー(MB):初めて株を買ったのは高校生の時です。私が9才の時、父が亡くなってしまったのですが、大学のために10万ドルの資金を残してくれました。実際に私が大学に入学して間もない頃ですが、10万ドルの資金は、たったの1万ドルになっていました。銀行の人が私の資金を運用していたのですが、ベアマーケットで大失敗をおかしてしまったのです。90%の資金を失うことで、私は貴重なことを学びました。買ったまま持ち続ける、バイ・アンド・ホールドは通用しないということです。

KM:どこの大学へ行かれたのですか?

MB:カリフォルニア州立大学バークレー校です。

KM:大学でも株式投資をしたのですか?

MB:株投資は続けましたが、大学の頃夢中になったのが商品市場です。おかげで口座残高は派手に動きました。金の先物をやった時ですが、一時的に口座残高が100万ドルを超えました。もうそれこそ毎晩パーティーです。しかし、連銀議長の一言で金は大幅に下げ、最終的な利益は2万ドルでした。オレンジジュースの先物では、大きくやられました。空売りで10万ドルほどの利益が出ていたのですが、フロリダに霜のニュースで、翌日オレンジジュースは急騰です。儲けの10万ドルも吹き飛んでしまいました。こんな形で勝ち負けを繰り返し、卒業した時の口座残高は20万ドルでした。

KM:現在ファンドマネージャーとして活躍しておられるわけですが、どのような投資方法を使っているのですか?

MB:私の投資スタイルは、ウィリアム・オニール氏がモデルになっています。「オニールの成長株発掘法」の一読を強く薦めます。売上、一株利益、チャートパターンなどが説明されていますが、その一つ一つはファンドマネージャーにとっても重要です。

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残りの25項目を記そう。

26、フェンシングと、トレードの共通点は何だろうか?それはスピードと死だ。
27、儲かったことを自慢するな。
28、夢は大きければ大きいほど良い。
29、失敗の土台が無ければ、勝利を得ることはできない。
30、負けトレードは早く忘れろ。勝ちトレードは更に早く忘れろ。
31、どんなに悔やんでも過去を変えることはできない。開かないドアは忘れて、次のドアを探すことだ。
32、マーケットは、あなたの考えていることに全く興味は無い。いつも正しいのはマーケットだ。
33、出動よりも利食いの方が難しい。
34、思惑が外れたら直ぐ脱出すること。
35、冷静さを失うような大きな買い物をするな。一日で財産を築くのは無理な話だ。
36、連敗を避けろ。
37、高値で売ろうとするな。安値で拾おうとするな。
38、プロになりたいなら、確信できる手法を身に付けることだ。
39、値幅の狭いマーケットで、大きな利益を期待するな。
40、損切りの傷は、浅ければ浅いほど良い。小さな傷なら直ぐ回復できる。
41、他人のアドバイスで勝とうと思うな。
42、利益の出ている銘柄を売り、損の出ている銘柄を持ち続ける。失敗への近道だ。
43、持ち株に対して感情的になるな。
44、ニュースを知らなくても構わない。重要なのは、マーケットがニュースにどう反応するかだ。
45、高い授業料だが、マーケットは自分の本質を教えてくれる。
46、未来予測などいらない。それよりも、マーケットに素早く対応することが肝心だ。
47、絶好のチャンスを逃したことをクヨクヨするな。絶好に見えるものほど長続きしない。
48、船が沈みかけているなら直ぐ海に飛び込め。
49、つならない考えは、さっさと捨てよう。
50、自分に適したトレード方法を見つけたら、それを絶対に手放すな。

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下記のルールは決して新しいものではない。しかし、マーケットの魔術師として知られるリンダ・ラシュキ氏には、これら無しで成功を語ることはできない。さっそく見てみよう。

1、トレード計画を立てそれに従う。
2、全てのトレードを記録すること。
3、大きな損を出しても、前向きな姿勢を崩さないこと。
4、マーケットを家庭内に持ち込むな。
5、高い目標を設定しろ。
6、悪材料は買い、好材料は売り。
7、高値圏での買い、安値圏での売りを恐れるな。
8、マーケットの勉強を怠るな。
9、他人の意見を聞き過ぎるな。
10、苦しくても努力を中断するな。
11、損切りを確実にして、損を最小限に抑えろ。
12、一度入れた損切りを変更するな。
13、出動前に、利食いと損切りのポイントを設定しろ。
14、退屈しのぎの売買をするな。
15、意味の無い頻繁な売買をするな。
16、トレーダーを成長させるのは利益ではなく損失だ。
17、株価の予測が一番難しいのではない。最も困難なのは自分をコントロールすることだ。
18、途中でルールを変えるな。
19、3カ月間の上げ相場で得た利益は、1カ月の下げ相場で失ってしまうことがある。
20、利益の出ているトレードを損失にするな。
21、トレード手法を完全に身に付けて、それを使い切れ。
22、損を出したことに固執するな。次のトレードに悪影響だ。
23、どんなことがあっても、利益を半分以上減らしてはいけない。
24、自分の限界を理解しろ。
25、生まれつきの才能など無い。自己コントロールが成功の鍵だ。

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銘柄選びの注意点

上げ基調の確りした株を選ぶことが買いの基本になる。しかし、「確り」では意味があいまいだ。なだらかにゆっくりと上げる銘柄と、45度の角度で上昇する銘柄なら、どちらが確りした上げ基調だろうか?そんな時に役立つのが、ADX(アベレージ・ディレクショナル指数)だ。

ADXは0から100までの数値で示されるが、60を超えることは滅多に無い。30以上は極めて強いトレンドを表し、20以下なら、方向性に乏しい横ばいケースが多い。だから、買うならADXが30以上の銘柄、悪くとも25以上のADXを有する株を選ぶことが大切だ。ブレイクアウト候補を探すなら、ADXが20以下の横ばい銘柄を見てみるのも面白いだろう。

もう一つ利用したいのがRSI(レラティブストレンクス)だ。これは一般チャートソフトに付いてくるRSIのことではない。チャートのRSIは、過去の株価と現在の株価を比較して、株が買われ過ぎか、それとも売られ過ぎかを計るものだ。言い方を換えれば、今の自分と昔の自分を比べているにすぎない。

ここで言うRSIは、銘柄をS&P500指数に属する全銘柄と比べて、伸び率が優秀なのか劣っているのかを見るものだ。もしRSIが99なら、上位1%に入る強い銘柄を表し、RSIが10なら下位10%に属する劣等生だ。80以上の優等銘柄だけを選ぶことが大切だが、一つ注意したいことがある。

野球を見ていると、まさかと思う選手のホームランで、ひいきのチームが勝つことがある。それと同様に、チームのエースが初回に6点取られて、早々と降板することもある。どちらも極めてマレな出来事だから、一時的な現象を過大評価するのは間違いだ。株も一時人気で80以上のRSIを付けることがあるから、過去3カ月、できれば6カ月前のRSIも調べることが必要だ。ADXとRSI、併用したい2指標だ。

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スティーブ・パームクイスト氏は、マーケット経験20年のベテラントレーダーだ。多くの人たちと同じように、本やセミナーを通してトレードを習得した。問題なのは、本には様々なチャート・パターンが例として載っているが、どんな環境でそのパターンが有効なのかが説明されていない、とパームクイスト氏は言う。

試行錯誤を重ねて出した、パームクイスト氏の結論はこれだ。「あらゆるチャート・パターンをバックテストしましたが、重要なことは好きなパターンを見つけることではなく、マーケット環境に合ったパターンを適用することです。パターンに好き嫌いがあったのでは、利益を得る機会が減ってしまいます。ですから、数多くのパターンを用意しておくことをすすめます。」

株が専門ですか、それとも先物ですか?の質問に、氏はこう答えている。「私は何でもトレードします。たしかに株だけを専門にする人たちが多いですが、私はチャート・パターンを重視しますから、トレードするものは何でも構いません。」氏はどうやって銘柄を選び、どんなことに注意しているのだろうか?もっと説明してもらおう。

「毎晩データベースをスキャンして銘柄を選びます。高値からプルバックしているもの、安値からプルバックしているもの、ブレイクアウトした銘柄、ブレイクダウンした銘柄といった形でスキャンします。一つ一つのチャートを検討した後、買値、損切り、目標値などを設定します。

チャートを分析する時は、出来高に注目してください。出来高は、投資者たちの関心度を表しています。バックテストして分かったことですが、どんなに良い買いチャート・パターンでも、出来高が乏しいと大きな上昇を望むことはできません。もちろん、少ない出来高で大幅上昇もありますが、上げが長続きしません。MACD、RSI、ストキャスティクスなど指標には様々な種類がありますが最初に動くのは株価と出来高です。全ての指標は先行するものではなく、株価や出来高に遅れるものであることを頭に入れておいてほしいと思います。

現在のマーケット環境を正しく把握することも大切です。上げ基調なのか、下げ基調なのか、それとも横ばいなのかを確認せずに正しいトレードはできません。特に新人トレーダーに多いのですが、横ばいや下げマーケットで、強気なブレイクアウト手法を使う人たちがいます。これはダメです。弱いマーケットでは、たとえブレイクアウトしても、ほとんどの場合が騙しです。最初の数分間は良いかもしれませんが、直ぐ下げてしまいます。ブレイクアウトのトレードは、強いマーケットで有効なやり方です。

繰り返しますが、値動きと出来高が基本です。MACDやストキャスティクスに頼ってはいけません。ストキャスティクスは、現在の株価を過去と比較して、今の株価がどんな位置にあるかを見るものです。これは、チャートを見れば分かることで、ストキャスティクスは要りません。また、多くの指標は買われ過ぎ、売られ過ぎレベルを設定していますが、買われ過ぎなものは更に買われ、売られ過ぎているものは更に売られる傾向があるので、初心者に指標の利用はすすめません。」

(出張のため、12日から23日までは有名トレーダーの談話やインタビューの一部をお届けします。)

不安定な世の中を好む金

金の1オンスあたりの価格が700ドルを突破した。こんな高レベルに達するのは、1980年10月以来初めてだ。「世の中が不安定になるほど、金は値上がりします」、と金ディーラーのジョン・ナドラー氏は言う。5月だけでも、金は既に29ドルも上昇している。インフレ懸念、イランの原子力プロジェクト、下降が止まらないドル、それにミューチュアルファンドによる買いが主な金急騰の原因だ。

シティグループの調べによると、4月末における商品市場の総ロングポジションは、オイルが300億ドル、ガソリンも300億ドル、そして金が第3位の130億ドルだ。「多数の人たちが、ドルベースの口座を保有していますから、とにかく口座を守ることが最優先されています。ですから投資者は、上昇する金を追いかけることを、全く気にしていません」、とナドラー氏は述べている。

上記した、イランの原子力問題も、なかなか思ったような解決方向へ進んでいない。AP通信によれば、マフムード・アフマディネジャード(イラン大統領)が米国政府に送った書簡には、何ら新しい事項が見つからなかったという。書簡は公表されていないが、ブッシュ大統領のイラク攻撃を非難する、いつもと変わらない陳腐な内容だったようだ。また、国連もイラン問題に対して大きな助けにならない。イギリス、フランス、それにアメリカは対イラン貿易制裁に賛成だが、中国とロシアの同意が得られない。

マシュー・パリー氏(エコノミー・ドット・コム)も、最近の派手な金の値動きに驚く一人だが、こんなことを言う。「700ドルを突破ですから、ここから更なる大きな上昇は見込めないと思います。もしイラン情勢が好転し、インフレの抑制にもめどがつけば、金は600ドル以下に落ちることでしょう。既にかなりの高レベルに達している金ですが、更に上昇するためには、こんなシナリオが考えられます。もしアメリカがイランに対して軍事力を行使するなら、金は爆発的な上げを記録することでしょう。こんなシナリオが現実化すれば、金は1000ドルを突破するはずです。」

金属市場で買われているのは金だけではない。銀7月限は+4.3%、銅7月限は+2%、そしてめざましいのが、1オンスあたり1239ドル50セントの新高値をつけたプラチナだ。

月曜に発表された供給量を見てみると、金は2万3484オンス減って763万オンス、銀は59万2836オンス増えて総供給量は1億2400万オンス、銅は326トン減少して1万4876トンだ。

起業家のための5項目

起業家を夢見るサラリーマンが多い。スモール・ビジネス・アドミニストレーションの統計によれば、三分の一のビジネスは2年以内、そして半分以上が5年以内に倒産するという。まことに厳しい現状だが、だからといって夢を捨てる必要は無い。何故、そんなに高いパーセンテージの失敗率なのだろうか?CNNニュースは、ビジネスオーナーが犯す、5つの大きな間違いを挙げている。

1、不十分な資金
ビジネスが破綻する最大の原因は、十分な資金を持って起業しなかったためだ。経営コンサルタントの、ダグラス・ロング氏はこんなことを言う。「ビジネスを始めるほとんどの人たちは、あまりにも経費を少なく見積もっています。もし少なくとも10万ドル必要と思うのであれば、その3倍の金額を用意することをすすめます。特に、予期していなかった事態が発生した場合、余剰資金の有る無しでは致命的な違いが出てきます。」

2、会社のサイズを気にしすぎる
顧客を得るために、大手企業に売り込みをしなければいけない時がある。ハーピット・シング氏がコミュニケーション会社を始めたのは、氏がまだビジネス・スクールに通っていた頃だ。「ある日のことですが、パートナーと私は何百キロも運転して、大手保険会社に製品とサービスの売り込みに行きました。社長をはじめ皆ひじょうに乗り気になったのですが、私の会社のサイズを説明したら、皆とつぜん豹変したように冷たい態度になってしまいました。これは良い勉強になりました。自分の会社が小さいこと、資金が乏しいことを説明した私が完全に間違っていました。」

3、設備投資にケチケチしすぎる
経費を低く抑えるのは大切だが、適切なラップトップ、ブラックベリー、それにワイヤレス機器抜きでビジネス成功はありえない。最新のテクノロジーは顧客とのコミュニケーションに必須なだけでなく、セールスマンにも大きな助けになる。小さな企業が大手に勝つためには、設備投資を惜しんでいてはいけない。

4、セールスの重要性が理解できていない
新ビジネスが伸びるために最も大切なのがセールスだ。売上が上がれば、月々の出費を簡単にカバーすることができる。どんなに小さなサイズのビジネスでも、プロのセールスマンを雇うことが必要だ。もちろんセールスマンを雇うだけの余裕が無く、オーナー自らセールスをしねければならない場合もある。しかし、どんなにアイディアが画期的なものでも、オーナーに売り込み能力が欠けていたのでは話にならない。繰り返すが、新ビジネスで最も重要なのはセールスだ。有る程度むりしても、プロ・セールスマンの採用をすすめたい。

5、明確なゴールが無い
単に儲けたいだけでは目標にならない。今日の売上目標、今週の売上目標、そして今月の売上目標などを設定して、常に具体的なゴールに向かって走ることが肝心だ。

注目される水曜のFOMC(連邦公開市場委員会)だが、金利は0.25ポイント引き上げれて5%ちょうどになる、というのが大方の意見だ。米国大和証券のエコノミスト、マイケル・モラン氏は、「米国経済は堅調なペースで伸びていますから、インフレが悪化する恐れが十分にあります。ですから、水曜の会議で金利引き上げがあったとしても、全く不思議ではありません」、と述べている。

今月の金利引き上げがほぼ確実なら、6月はどうだろうか?17回連続の引き上げの可能性は、どの程度あるのだろうか?アクション・エコノミクスのマイケル・エングランド氏は半々だと言う。「たぶん、バーナンキ議長は、5%で一旦金利引き上げ政策をストップすると思います。しかし、それを既成事実として完全に受け入れ要るのは危険です。」

執拗な利上げのおかげで、不動産ローンの金利も上がっている。週末の会議で、大投資家ウォーレン・バフェット氏はこんなことを述べている。「住宅市場の冷えこみは一部的な現象ではなく、アメリカ全体に広がっている。特にフロリダ州のような、値上がりの激しかった地域での冷えこみが顕著だ。一時は、マンションがデイトレードされるほど投機熱が上がっていたが、住宅価格は大幅に下げることになりそうだ。」

バフェット氏が指摘するフロリダの住宅市場は、去年の冬頃から状況が大きく変わっている。「まるで凍ってしまったようです。物件を売るのが、非常に難しくなっています」、と不動産業者のピーター・セルニッカー氏は言う。好調な住宅市場に目をつけて、セルニッカー氏がフロリダにやって来たのは5年前だ。順調に住宅売買を繰り返して、去年の夏、氏はミリオネアのステータスを達成した。

「しかし、フロリダの住宅市場は一夜のうちに変わってしまいました」、とセルニッカー氏は続ける。「本当にあっと言う間の出来事です。以前なら、物件は24時間以内に売れてしまいましたが、今日は少なくとも3カ月から4カ月の時間がかかります。こんなに冷え込んでしまったのは、上昇が続く不動産ローンの金利が原因です。とにかく買い手がいません。私も物件を売るのを諦めて、全て貸すことで現状を切り抜けています。」

冷え込むフロリダ住宅市場について、セルニッカー氏と同業の、マーク・ジルバート氏はこう語っている。「新しいマンションが出来上がったので、さっそく不動産投資家たちに案内書を送りました。しかし、誰からも返答が無いのです。本当に突然のことでした。仕方がないので、直接何人かの投資家に電話をしました。返事は皆同様でした。フロリダの不動産は行き過ぎだ、と言うのです。」

去年完成したデルレイ・ビーチのマンションは、まだ40%以上が売れ残っている。素早い利益を予想した投資家も、物件が売れなくてイライラしている。物件の投げ売りが始まるのだろうか?

金こそ本物の通貨!?

「米ドルが死んだことを知らないのは、米ドルだけだ」、と言うのはグランディック・レターでエディターを務める、ピーター・グランディック氏だ。ウィズダム・ファイナンシャルの、エマニュエル・バラリー氏(マーケット・ストラテジスト)はこう付け加える。「最近のドル下落で、通貨の代用となる金は、いっそう投資者たちに注目されることになるでしょう。」

金はバラリー氏が指摘するように、代替通貨して昔から利用されてきただけでなく、インフレ対策投資として人気がある。4月半ばからドルの下げ足が速まり、ユーロに対しては1年ぶり、そして円に対しては7カ月ぶりの安値を記録した。こんな不安定なドルを背景に、金は今年に入ってから、既に1オンスあたり150ドルを超える上昇だ。

先日、連銀のバーナンキ議長は金利引き上げ政策を一時停止する考えがあることを述べ、この発言もドル売りを呼ぶ原因となった。中東には、イランの原子力プロジェクト問題もあるから、万が一に備えての投資として、金人気がさらに上がっている。「世界中にドルが溢れています。人々は紙幣を捨てて、金と銀に交換しています。ドルはもはや信頼できる通貨ではありません。金こそが本物の通貨です」、と投資戦略家のピーター・スピナ氏は言う。

直接、金貨や金地金を買う他に、金の先物、金鉱株、金専門ミューチュアルファンド、そして金専門の上場投信を通して金投資をするのが一般的だ。

25年ぶりの高値を記録している金だが、いったいいくらで2006年を終了するだろうか。1月、金は519ドルで取引が始まり、現在約680ドルの値段が付いている。いくらなんでも行き過ぎの声もあるが、アナリスト達の予想は1000ドルだ。「資金の一部を、金に回す投資家が増え続ける一方ですから、800ドル台が達成されると思います。しかし、こんな状況ですから1000ドルを突破してもおかしくありません」、とジョン・パーソン氏(ナショナル・フューチャーズ)は語る。

893ドルが金の記録した史上最高価格だが、この数値を鵜呑みにするのは間違いだ、とバラリー氏(ウィズダム・ファイナンシャル)は言う。「今日の金価格と、25年前の最高価格を、ただ比較するだけではダメです。正確に比べるためには、インフレ率を考慮しなくてはいけません。ですから893ドルは単に893ドルではなく、実際には2195ドルに相当します。」

強気なアナリストが多いが、スティーブ・カプラン氏(トゥルー・コントラリアン・ドット・コム)の反対意見も記しておこう。「金が現在のレベルから100ドル下方修正する、と言うアナリストはほとんどいません。まるで争うように、アナリストは金価格を上方修正しています。こんな時ほど天井が形成されているものです。」

「家出のすすめ」、という本があったと思う。読んだような気がするが、どんな内容であったかは忘れてしまった。毎日同じことを繰り返し、マンネリ化した生活が嫌になることがあるが、たまたまこんなコラムをバンクレート・ドット・コム(金融サイト)で見つけた。タイトルは「単調な生活に終止符、さあ出かけよう」だ。さっそく概要を紹介しよう。

「仕事がつまらないですか?毎日の通勤に疲れていますか?もっと刺激が欲しいですか?そうなら、そんな生活を止めるべきです。インターネット、携帯電話が発達し、在宅勤務が広く受け入れられている今日、両親と同様なライフスタイルを繰り返す必要はありません。

思い切ってジプシーになってみるのはどうでしょうか?魅力的なアイディアだが、現実的でないと思いますか?コリーン・シコラスさんと夫のボブさんは、現在ジプシー生活を送っています。ジプシーといっても、ホームレスになったわけではありません。お二人が住んでいるのはRV車(レクリエーショナル・ビークル)です。

「こんな放浪生活をするようになってから、もう10年以上の年月が経ちました」、とコリーンさんは言います。一体どうやって収入を得ているのでしょうか?それとも、十分なお金が銀行にあるのでしょうか?シコラスご夫妻は、「ハウ・ツー・RV」という旅行本の出版、そして「在RV車勤務」というニュースレターの発行で収入を得ています。」

シコラスさんが、実際にRV生活を開始したのは1992年だ。仕事を辞め、家を売り大きなRV車を購入した。多くの人たちから反対されたようだが、少数の人たちは、シコラスさん夫婦を羨んだという。現在、二人の暮らしは決して贅沢なものでない。夫のボブさんは水道局勤務、そしてコリーンさんはソーシャルワーカーだったから、膨大な貯金なども無い。ニュースレター収入も安定していないようだから、RV車で行く先々でパートタイムの職を探すこともある。

それでは、放浪の旅に出るにはいくらかかるのだろうか?先ず住居になるRV車の値段は、4000ドルから7万4000ドルだ。シコラスさんの話によれば、1万2000ドル程度のもので十分な暮らしができる。毎晩RV専用の施設を利用するが、一晩7ドルが平均的な値段だ。RV車はガソリンで走るから、だいたい1000キロで300ドルほどのガソリン代が要る。あとはRV車の保険代、携帯電話料金、医療保険代、そして食費などがある。

現代人は、今日のライフスタイルの奴隷になってしまった、という言葉をよく聞く。現状の暮らしに満足なら別だが、思い切って放浪生活を始めるのも面白いかもしれない。ヘッセの小説に「クヌルプ」というのがあるが、ひょっとしたらシコラスさんは、クヌルプになりたかったのだろうか?

ドル安は止まらない

「夏休みはヨーロッパ旅行ですか?それなら、いまのうちにドルをユーロに替えた方がいいですね」、というのはファイナンシャル・コラムニストのマイケル・ブラッシュ氏だ。ユーロだけに限らず、円に対してもドルは下げている。4月14日、118.72円で取引されていたドルだが、5月1日、112.32円が記録され円高が顕著になった。

膨大な貿易赤字で分かるように、アメリカは、おびただしい量の品物を海外から輸入している。性能の良い日本車、安い中国製品、そして中東からのオイル、とにかく外国製品の需要は増えるいっぽうだから、世界の国々にドルが溢れてしまった。その他にもドル安になる原因はあるのだが、ブラッシュ氏の話を聞いてみよう。

「特に日本が好例ですが、外国の経済成長が目立つようになりました。ですから、アメリカよりも海外株式市場の方が魅力的です。また、連邦準備理事会は一時的に金利引き上げを止める可能性があるようですから、これもドル安に結びつきます。更に、米国政府はアンバランスな貿易状況を改善するために、中国政府に対して人民元を適切なレベルに調整することを要求し続けることでしょう。」

エコノミストのジム・ポールソン氏によれば、向こう5年間で、ドルは20%近い下げがあってもおかしくないと言う。マーク・ハード・カレンシー・ファンドのアクセル・メルク氏は、「毎年5%から10%の下げを予想しています」、と悲観的な見方だ。ブラッシュ氏の話に戻ろう。

「既に述べたように、アメリカは海外から物を買い過ぎです。去年末での貿易赤字額は8000億ドルですが、他の国々が毎日米国製品を22億ドル相当買わないと、ドル安を防ぐことができません。問題は中国です。人工的に人民元を低く抑えて、安い品物をアメリカに輸出し続けています。米国政府もこんな中国の態度にウンザリですから、中国政府に更なる圧力をかけることでしょう。

投資家は、成長が最も望める国に資金を移すものです。ここから数年間、外国の経済成長率がアメリカを上回ることでしょう。今年、新興経済国の平均成長率は7%、そしてアメリカは5%が予想されています。アメリカ経済には疲れが見えますが、日本の成長はまだ始まったばかりです。」

もう一つ、ブラッシュ氏はアメリカが外国ビジネスに対して、非友好的になっていることを指摘している。「去年ですが、アメリカは中国国営オイル会社による、Unocal買収を認めませんでした。そして、議会や国民は米国港湾をドバイに本拠地を持つ会社に管理させることに、大きな非難の声を上げています。」自由なビジネスを提唱するアメリカだが、どうやら閉鎖的な国になり始めたようだ。

「猿の惑星」に今日の株式市場を例えることができる、とポール・ファーレル氏(経済コラムニスト)は言う。9500万のナイーブな投資者が人間、そしてウォールストリートの支配者たちが猿だ。猿たちは、「ハリケーンは経済活動を刺激する」、「貿易赤字は悪材料にならない」などと発言し、投資者はいつも支配者たちの意見に左右されてしまう。氏の話を続けよう。

「猿たちは、人間が株式市場で大きな財産を築くことができるように、適切な情報を絶えず提供している、と言います。しかし、相変わらずアメリカ人の貯蓄率はゼロに近い状態です。政府も、投資者たちに無知のままでいてほしいようです。2004年、議会はミューチュアルファンドの改革法案を検討していましたが、けっきょくこの法案は成立しませんでした。法案には投資教育も含まれていましたが、議会はその必要性を認めなかったわけです。

投資者の無知ぶりが、最も顕著だったのが90年代のブルマーケットです。猿たちは、まるで羊飼いのように、いとも簡単に投資者たちを荒れ狂うインターネット銘柄に導きました。そして、バブルが弾けるのですが、人間は猿たちのように進化していませんから、ベアマーケットに対する準備などあるはずがありません。多くの投資者は50%を超える損を出しましたが、ウォールストリートの支配者たちは、平均サラリー50万ドル(5700万円)の高給を得ていたのです。」

ウォールストリートは、投資者たちを食い物にしている、といった観があるが、猿の餌食にならないようにするためにはどうしたら良いだろうか?ファーレル氏の話に戻ろう。

「正しい知識や情報が無いことを問題にする前に、私たち投資者が、自ら進んで無知な投資者のままでいることを選んだ事実に先ず目を向けてください。私たちには仕事があります。子どもや、両親の面倒を見なければいけない人たちもいることでしょう。人それぞれ違った境遇ですが、誰もがリッチな老後生活を望んでいます。そのためには、投資知識を身につけなければいけないのですが、私たちは投資の勉強をしようともしません。こんな怠け者の私たちですから、猿たちが私たちをコントロールすることなど簡単です。

猿たちは、投資者が無知であり続けることを好みます。正しい投資知識で武装などされたら、ウォールストリートに反乱が起き、猿による支配体制が崩れてしまいます。ウォールストリートの支配者たちは、自分たちの富を増やすことだけで頭がいっぱいです。私たちは、いつまでも無知のままではいけません。私たちの手で、新しい「猿の惑星」エピソードを書きたいものです。」

経営コンサルタントのスティーブ・シュトラウス氏には、最近こんな相談が増えている。「助けてください!ガソリンが急ピッチで上がっていますが、車を頻繁に使うセールスマンに、ガソリン代が大きな負担になってきました。ガソリンは自己負担という条件で雇ったのですが、先日、経営者の私にガソリン代を払ってほしいとセールスマンから強い要求がありました。小さな会社ですから、私にはガソリン代を払う余裕はありません。しかし、要求を呑まないと辞めてしまうかもしれません。何か良いアイディアをください。」

去年の同時期と比較すると、ガソリンは20%も上昇している。とうとう1ガロンあたりの値段は3ドル(1リットルあたり91円)を突破して、消費者の不満の声がいっそう大きくなった。一時的なガソリン高に終わってほしいところだが、サム・ボッドマン氏(エネルギー省長官)は、日曜日に放映された番組の中で、ガソリン高は向こう2ー3年間続くだろう、という見方を発表している。

さて、上記の悩む経営者に、シュトラウス氏はどんな回答をしたのだろうか?さっそく見てみよう。

燃費の良い車に買い換える:ガソリン高が定着しつつある現状だから、ハイブリッドカーのような省エネ車を考慮する時期かもしれない。

オートバイ、またはモペット(自転車バイク)の利用:セールスマンの業種によって無理かもしれないが、オートバイは1ガロン(3.785リットル)のガソリンで60マイル(108キロ)は走ることができる。モペットなら160キロまではいけるはずだから、間違いなくガソリン代を節約できる。

ガソリンの代わりにエタノールを使う:ニッサン・タイタン、それにフォード・エクスプローラーは、ガソリンより安いエタノールを燃料として使うことができる。

車の共有:セールスマン同士で調整するのが難しいかもしれないが、ガソリン代を倹約するために1台の車を複数のセールスマンで共有、または相乗り方式を取り入れることが考えられる。

在宅勤務の導入:セールスマンだけに限らず、在宅勤務は燃料費削減に役立つ。

インターネットの利用:オンライン会議を実施することで、運転量を減らすことができる。

値上げ:燃料費をカバーするために、取り扱い商品の値段を上げる。

ガソリン高で頭の痛い中小企業の経営者だが、場所が変わると見方もガラッと違ってくる。「ガソリンが1ガロンあたり3ドル突破?それはお気の毒ですね。でも、イギリスでは7ドルですよ」、と言うのはロンドン近郊に住むキャロライン・グレッグソンさんだ。

イギリス人だけでなく、ヨーロッパの人たちはアメリカのガソリン高に同情することはない。もう10年以上も前から3ドルを超えるガソリン代を払っているヨーロッパ人にとって、現在のアメリカのガソリンは破格に安い。他の言い方をすれば、いままでアメリカ人には省エネ意識が全くなかったわけだ。たしかに海外から見れば、まだアメリカのガソリンは安い。しかし3ドル突破のおかげで、ようやくアメリカ人に代替エネルギーの必要性が分かり始めてきた。

重要な収益の質

成長株を見つける方法の一つとして、ウィリアム・オニール氏は、収益が少なくとも毎年15%から50%の伸びがある企業を選ぶことを薦めている。しかし、INGインベストメント・マネージメントの、フェルナンド・ガーザ氏はこんなことを言う。「2003年からの動きを見ると、収益内容の悪い株が大きく上げています。第1四半期だけでも、収益内容が悪い企業の株は、内容の良い企業の株より17%以上も伸びています。」

もはや株式投資に、収益や一株利益を考慮する必要は無いのだろうか?「収益内容の悪い会社を、怪しげな企業と呼ぶことにしましょう。もちろん、怪しげな銘柄の上昇が、いつまで続くかは誰にも分かりません。しかし、長期的な投資には、収益の質を無視することはできません」、と語るのはジョン・ワゴナー氏(経済コラムニスト)だ。

「収益の質」、「収益内容が良い」とはどういう意味だろうか。ワゴナー氏の話を続けよう。「1993年にさかのぼりますが、ボストン・チキンという株が新規公開されました。覚えている方もいるかもしれませんが、取引が開始された初日、株価は倍になってしまったのです。その後ボストン・チキンはどうなったでしょうか?1998年、ボストン・チキンは連邦破産法第7章の適用を申請しました。ようするに破綻です。言うまでもありませんが、株券は単なる紙になってしまったわけです。

収益内容が分かっていれば、ボストン・チキンに投資することはありえませんでした。しかし、収益の質を簡単に説明することは楽なことではありません。なぜなら、それを理解するためには、バランスシートを細かく調べる必要があるからです。しかし、少なくともこの点に注意してください。売上が下がっているにもかかわらず、逆に一株利益が上がっているなら、それは大きな警告シグナルです。

スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)は、一株利益と配当金の一貫性を調べることで、収益内容の質を検討しています。例えば、S&PによってAプラス、A、そしてAマイナスの評価を受けた企業は、平均で15.7の株価収益率(PER)があります。Bプラス、B、Bマイナスと評価された企業のPERは平均で18.1です。Bマイナスだけを見るとPERは極めて高い28です。

PERは単に株価が割高か、それとも割安かを示すものではなく、収益の質を反映しています。ですから、S&PからAプラス、A、そしてAマイナスの評価を受けた株に投資対象を限定することが大切です。1990年からの成績ですが、Aプラス、A、そしてAマイナスに代表される収益の質の良い株は+453%、収益の質が悪い株は+44%です。」

 

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