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知っておきたい二つのルール

打撃を受けた株を買え、しかし打撃を受けた企業を買ってはいけない。これは、ジム・クレーマー氏がよく口にする言葉だ。ウォールストリートはデパートとは違う。買った製品に欠陥があっても、全額払い戻しなど期待できない。だから、慎重な銘柄選びが必要になる。

打撃を受けた株、打撃を受けた企業、この二つを混同したら大変だ。どうやって二つを見分けるのだろうか。クレーマー氏は、こんな例を挙げている。1998年、ニューヨークに本拠地がある不動産サービス会社、センダント・コープが36ドルから12ドルに大暴落した。ほぼ一直線の下げだったから、超割安な株価に魅せられて買った投資者も多かった。しかし、下げの原因はインチキな会計報告だから、この株を買うのは間違いだ。

2005年が始まって間もない頃、イーストマン・ケミカルは収益がアナリストの予想以下になることを発表した。悪いニュースだから売り物が殺到し、株価は簡単に4ポイントの下げとなった。実情を正確に把握してない大衆のパニック売りだから、この場合は明らかに買いだ。イーストマン・ケミカルの収益減少は、施設の一部に問題が起きたためで、経営陣も早い修復の可能性を語っていた。その後株価は、施設正常稼動ニュースで8ポイントのラリーを展開した。

宿題を忘れるな、というのもクレーマー氏の好きな言葉だ。銘柄を大して調べもせず買ってしまう投資者が多い。その原因は二つある、とクレーマー氏は言う。先ず、ほとんどの投資者は、長く持ちさえすれば、株は上がると信じている。そして二番めの理由は、時間が無い、というものだ。

1990年代のようなブルマーケットなら、トレンドに乗って株を保持し続けることは正しい。しかし、マーケットはいつも同じトレンドにあるわけではない。宿題を怠っていたら、トレンドの波に飲み込まれてしまう。時間が無い、と言い訳する人に、クレーマー氏はこう警告する。「時間が無いからピアノの練習はしない。時間が無いからゴルフの練習はしない。そんな態度では、何も身に付けることはできないでしょう。」

2006年度、もっとも期待できる銘柄は何だろうか。アナリストやファンドマネージャーが、既に来年の有望銘柄をテレビなどで発表しているが、これでは物足りなさを感じる投資家が多い。皆が知っている情報だから、あまり儲かりそうにない。それに、顧客でもない大衆に、ファンドマネージャーがテレビで本音を語るだろうか?

誰かが素晴らしい銘柄を発掘しているはずだ。株式市場の秘密を解き明かした天才がいてもおかしくない。そんな訳で、投資者たちは決まったように数々のニュースレターを購読することになる。言うまでもないが、ニュースレターの質にはピンからキリまである。はたして勝率の高いことで有名なニュースレターは、どんな銘柄を推奨しているのだろう?

先ず、来年の全体的な見通しから始めよう。ジェームズ・ポールソン氏(ウェルズ・キャピタル)によれば、多くの投資者は、インフレと住宅市場の下落を心配しすぎている。たしかに連銀は、13回連続で金利を引き上げたが、歴史的に見れば現在の金利は決して高レベルではない。不動産が冷え込めば、住宅ローンの借り換えが減り、その結果個人消費も落ち込むかもしれない。しかし、現在の雇用状況や製造業の伸びが個人消費低迷を防ぐだろう。

比較的割安な株が多いため、2006年度、株式市場から10%から15%の利益が期待できそうだ。景気に敏感な小売銘柄、それにテクノロジー株がマーケットを引っ張ることが予想される。今年好調だったエネルギーセクターは、原油や灯油価格の安定で3月過ぎまで冴えない動きになるだろう。もちろん、このセクターは長期アップトレンドが崩れていないから、4月頃から買っていけそうだ。

個別銘柄に移ろう。25年間、トップの座を保ち続けた、プルーデント・スペキュレーター・ニュースレターはアメリカン・イーグル・アウトフィッターズを推奨している。ティーンエージャー向けのファッション小売店だが、来年予想される利益で計算すると、株価収益率は魅力的な10.7だ。また、アメリカン・イーグル・アウトフィッターズは一株に換算すると3ドル70セントの現金を保有し、経営内容も安定している。

第3位のOTCインサイト紙は、ハンセン・ナチュラルを推している。栄養ドリンク剤を製造販売するハンセン・ナチュラルは、ニューエージ・ドリンクのイメージで爆発的な売上を記録した。株価も既に4倍の成長だが、更なる上昇が期待できるという。大手飲料品会社も、ハンセン・ナチュラルに注目しているから、買収の可能性もあるようだ。

2006年、アメリカの不況は間違いない、と断言する人たちがいる。理由を聞くと、イールド・カーブ、という単語が即座に返ってきた。国債利回りが、米国経済に悪影響をおよぼすのだろうか。その前に、少し説明しよう。

イールド・カーブとは、国債の利回り曲線のことだ。国債には3カ月、6カ月で満期になる短いものから、10年、30年といった長いものがある。普通の状況なら、短期のものほど利回りが低くなるから、30年物が一番高い利回りになる。問題なのは、この利回り曲線に異常な事態が起きている。

今日の利回りを見てみると、2年物が4.35%、5年物が4.30%、10年物が4.34%、そして30年物が4.50%だ。なんと2年債券利回りが、5年物と10年物を上回っている。たしかに30年物が最も高い率を示しているが、2年物国債と大した差は無い。

このように、短期債券の利回りが長期債券利回りを上回ることを逆イールド現象と呼び、これが米国経済の不安材料になっている。1970年以来、アメリカは6回の不況を経験した。サンフランシスコ連邦準備銀行のレポートによれば、これら6回の不況が訪れる前には、逆イールド現象が起きていたという事実がある。

6戦6勝、的中率100%だが、「今回は状況が違っています」、と言うのはJPモルガンのスチュアート・シュワイツァー氏だ。「以前6回の逆イールド現象は、短期と長期利回りの両方が上昇しました。今日の場合は、短期利率が上がりましたが、長期金利はほとんど動いていません。心配されるインフレも、実際の物価上昇はおだやかですから、米国経済に大きな悪影響をおよぼすことはないはずです。それに、クリスマスの小売売上は順調でしたから、個人消費が急速に冷え込むことはありません。」

逆イールド現象をそれほど気にする必要がないなら、2006年度の心配材料は何だろうか。投資アドバイザー、ヒュー・ジョンソン氏を引用しよう。「米国経済が最も恐れるのは連銀です。インフレ退治を目標に、連銀は短期金利を上げすぎてしまう可能性があります。連銀が10年物国債利回りに注目していることを願います。」

投資者はどう動いたら良いだろうか。アナリストたちは、銀行などの金融機関を避けることを勧めている。銀行は短期金利で借りた金を、長期金利で消費者に貸し付ける。だから、現在の金利状況ではローンビジネスが不利になるわけだ。また、米国経済を正しく把握するには、国債の利回り曲線だけでなく、新規就業者数や失業率などの雇用統計に注意を払うことが重要だ。

先入観の排除

株価は安値を更新した。しかし、MACDは逆に少し上がっている。値動きと指標が不一致だから、ひょっとしたらここが底かもしれない。たしか株の本にも、これはブリッシュ・ディバージェンス、という買いシグナルとして紹介されていたような気がする。よし、買いだ。

おかしい、まだ反発ラリーが来ない。ブリッシュ・ディバージェンスのシグナルは相変わらず有効だから、そろそろ株価は底を打つだろう。だが、一転反発が訪れないだけでなく、信じられないことが起きてしまった。上昇していたMACDが下げ始め、点滅していた買いシグナルが消えてしまった。何ということだ。あんな本を信じるのではなかった。

こんなケースもある。ここ数日間の壁を突破して、A株は上放れに成功した。分かりやすい買いシグナルだが、買わないことにした。たぶん、たいした上昇はないはずだ。なぜなら、ストキャスティクスは既に買われすぎのレベルを示している。こんな位置で買うのは素人のすることだ。

あれからA株は7%も上げた。勢いは一向に衰える兆しを見せない。もちろんストキャスティクスは、いぜんと買われすぎを表示したままだ。何故こんな過熱しているものが買われるのだろう。どうしてストキャスティクスは無視されたのだろう。どちらにしても、大きな獲物を取り逃がしてしまった。

似たような例なら、まだまだあるが、MACDなどのオシレーターが役に立たないわけではない。致命的だったのは、自分で作り上げた意見に縛られてしまったことだ。ストキャスティクスが買われすぎの位置にある、というのは実際の数値だから、間違った情報ではない。ただ、これを見てしまったために買わない、という決断をしてしまった。

MACDの場合でも、もしこの指標を見ていなければ、わざわざ買うことはなかっただろう。ニュースも同じだ。有名アナリストの買い推奨や格上げは素早く報道され、多くの投資家がそれらの銘柄に殺到する。言うまでもないが、そんなニュースを聞いていなければ、きっと買うことはなかっただろう。

株トレーダー養成で知られる、ベネット・マクドウェル氏の言葉を引用しよう。「100%確実に値動きを予知できる指標などありません。もしそのようなものを探しているのでしたら単なる時間の無駄です。よく考えてください。これだけコンピュータが発達した今日ですが、ほとんどの人たちは損を出しています。コンピュータのなかった50年前と状況は全く変わっていません。」

繰り返しになるが、情報や指標を見るのは悪くない。ただ、それに縛られてはいけない。影響されやすいタイプの人なら、株価だけを頼りに売買するのも一案だ。

チャート分析のルール

威勢の良い東京市場、「こんな大相場は初めて。チャートの上昇トレンドが崩れるまで行くしかない!」、そんな声が聞こえてくる。売上、新製品、一株利益などのファンダメンタルズだけを頼っていた人が、チャート分析に興味を持ち始めたようだ。

チャートを分析すると言っても、どこから手をつけたらいいのだろうか。さっそくテクニカル分析の大ベテラン、ジョン・マーフィー氏から、いくつか重要なポイントを説明してもらおう。

1、長期チャートから分析を始めること。月足チャート、そして週足チャートの順番で過去数年間の株価動向を観察しよう。こうすることで、銘柄の大きな流れを把握することができる。長期トレンドが確認できたら、日足、さらに60分足などの日中足に移ろう。私は短期投資専門だから、週足は要らない、という意見もあるが、短期トレンドは中期トレンドから大きな影響を受ける事実を覚えておきたい。

2、長期トレンド、中期トレンド、短期トレンドがつかめたら、どのトレンドで投資するかを決めよう。もし中期トレンドを選んだなら、利用するチャートは週足と日足だ。週足チャートが銘柄のトレンドを表し、日足で売買タイミングを計る。週足トレンドが上向きなら、空売りをしてはいけない。

3、支持線、抵抗線の位置を確かめよう。支持線近辺で買い、抵抗線近くで売ることが基本になる。支持線は以前の安値付近、そして抵抗線は過去の高値あたりにできやすい性質がある。

4、たとえ棒上げ状態な銘柄でも、休みなく永遠に上昇することはない。もし下げ始めたら、どのあたりで止まりそうかを予測しておこう。一転反発が起きやすい場所は、高値から1/3下げた所、次が半値戻しレベルだ。

5、トレンドラインを引いてみよう。上昇するトレンドラインは、切り上がる安値を結び、下降するトレンドラインは右下がりの高値を結ぶことで引ける。単純な方法だが、これで銘柄のトレンドが明確になる。

6、移動平均線を利用しよう。トレンドの転換は、二本の移動平均線を入れることで確かめることができる。4日と9日移動平均線、9日と18日移動平均線、それに5日と20日移動平均線が人気のある組み合わせだ。株価が横ばいの時は、移動平均線が役に立たないことを覚えておきたい。

7、ストキャスティクスなどのオシレーターも使ってみよう。株にトレンドが無い時は、移動平均線が当てにならないことを上記したが、こんな状況で力を発揮するのがオシレーターだ。ストキャスティクスが80以上なら株は買われすぎ、20以下なら売られすぎを示す。

8、トレンドが明確な時は移動平均線、そして横ばいの時はオシレーターを利用することを説明したが、この使い分け方はADXをチャートに表示させることで明瞭になる。ADXが上昇中なら移動平均線、下降中ならオシレーターが適した環境だ。

9、オシレーターや移動平均線の他にも、出来高の分析を忘れないようにしよう。出来高は、投資者のマーケット参加状態を表す重要な指標だ。新高値が記録されても出来高が平均以下なら、その銘柄が更に大きく上昇することはない。膨大な出来高で安値更新なら、それは売りのクライマックスになる可能性がある。もちろん、連休直前などは出来高は極端に減るから、全ての出来高を同様に扱ってはいけない。

「花火を期待してはいけません」、と語るのはチャールズ・シュワブでチーフ・インベストメント・ストラテジストを務める、リズ・アン・ソンダース氏だ。退屈な2006年度の米国株式市場を予想する氏は、新興成長市場、日本、大型成長株、そしてヘルスケアへの投資を勧めている。

なぜ方向性の無い、横ばい市場が予想されるのだろうか。ソンダース氏はこう説明する。「上昇マーケットが継続する可能性もありますが、平均以上の伸びを展開するのは難しい状況です。最近の強い経済指数を検討すると、具体的にいつ連銀が金利引き上げを終了させるかが予測できません。これでは投資者が積極的に買うことは無理です。」

オイル、ガソリンなどのエネルギーセクターを推すのは、オーク・アソシエーツのエド・ヤーデニ氏だ。「2006年度に大きな心配材料はありません。インフレ懸念はありますが、実際に米国経済を脅かすことはないでしょう。2006年、米国経済は3.5%増が見込まれ、2%のインフレ率を予想しています。」

どうしてヤーデニ氏は、これほど低いインフレ率が予測できたのだろうか。「鍵は生産性です。過去10年間、アメリカの生産性は年間3%の割合で向上しています。来年も同様な伸びが期待できます。高い生産性はインフレを抑えるだけでなく、企業の利益を上昇させます。もちろん、それは労働者の収入を上げ、更に生活水準を高める結果になるわけです。」

これだけ明るい見方のヤーデニ氏だから、米国株式市場から簡単に8%以上のリターンが望めるという。「グローバル化が急テンポで進む2006年は、引き続きエネルギーセクターが注目です。物資や人が今以上に頻繁に世界を動き回ることになるのですから、ガソリンやオイルの需要が増大します。関連したオイルサービスセクターも伸びることでしょう。」

それでは、2006年の心配材料はなんだろうか。ヤーデニ氏の希望的観測を、地政学的な出来事が台無しにしてしまう可能性がある。ニューヨーク世界貿易センター、ロンドン地下鉄が最近の例だが、テロリストが一時的にマーケットに与える影響を無視することはできない。ハリケーンなどの自然災害も、経済に強烈なダメージを与える。地域的に特に注目したいのは、北朝鮮とイランの核兵器プロジェクトだ。正確な情報を集めて、敏感な投資家を目指したい。

三人が同じ日に同じ銘柄を買った。しかし、投資結果は三様だった。この違いは、何が原因になったのだろうか。これだけでは、各投資家の経験年数や売買スタイルが分からないから、不公平な質問かもしれないが、感情が投資成績を大きく左右することが多い。

感情的な売買は投資に悪影響を与える一つの要素だが、その他に投資者たちは、どんな間違いを頻繁に犯しているのだろう。マーケットアナリスト、ジム・ワイコフ氏は、投資者の持つ悪い癖8つを説明している。

1、全く計画性の無い売買

あらかじめ利食いのポイント、そして損切り値が設定されていないため、せっかくの利益を損に変えてしまうことが多い。

2、非現実的なゴール

株や先物だけで食っていこう、といきなり仕事を辞めてしまう人がいるが、これはあまりにも無謀だ。先ず実績を作ること。それが肝心だ。

3、トレンドを無視した売買

だれでも良いものを安く買いたいと思う。株価が大きく下げた後、ここが底だ、とばかり積極的に買ってみるが、そのようなやり方が好結果になることは少ない。逆の場合なら、天井と思われる位置での空売りも、中々うまくいかないものだ。上げ基調にある銘柄は空売ってはいけない。空売りは、下げ基調の銘柄だけに絞るのが基本だ。

4、頻繁すぎる売買

これは、月に50回の売買は多すぎる、といった売買回数の問題ではない。短期投資が専門なら、毎月50回の売買は決して多すぎるとは言えない。投資に損は付き物だが、早く損を取り戻すために頻繁な売買をしてしまう人たちがいる。損の後だけに冷静さが無く、まるで復讐戦にでも臨むような態度だから負けを連発する結果になってしまう。こうなると更に頭に血が昇り、いたずらに売買回数が増えていくわけだ。

5、適切でない資金管理

たとえ口座に50万ドルあっても、いつも信用取引で買えるだけ買っていたのではダメだ。リスクに合わせて、適切な株数で売買しよう。

6、損切りができない

計画していた位置に株価が下がっても、株を処分できない人たちがいる。これでは、売買計画を立てた意味がない。マーケットは、あなたが損を出していることなど何とも思っていない。買い注文が成立したら、直ぐ損切り注文も入れることを勧める。

7、自分で責任をとれない

損をしたのは証券会社のせいだ。自分は正しかったが、ディーラーの株価操作にやられてしまった。投資は自己判断でするものだ。言い訳はやめよう。

8、全体的な流れを見ない

投資を始めたばかりの人は自分の銘柄だけに目がいってしまい、マーケット全体を眺めることを忘れている。たとえ持ち株が好調でも、マーケットが崩れ始めたら、持ち株が影響を受けるのも時間の問題だ。もう一つ重要なのは、チャートは日足だけでなく、週足や月足も利用してほしい。日足が見事なアップトレンドでも、週足がダウントレンドなら注意しなくてはいけない。一つの方向だけからマーケットを観察していると、思わぬ反転に巻き込まれてしまうものだ。

見切りをつけられたGM

なぜこんな安いところで売ったのだろう。報道によれば節税対策ということだが、どうも納得できない。経済新聞などで読まれた方もいると思うが、大株主のカーク・カーコリアン氏が、ゼネラル・モータース(GM)を1200万株売却した。10%近いGM株を買い占めていた氏だったが、これで率が7.8%に下がった。

一口に節税対策と言っても、水曜に23年来の安値をつけたGMだけに、カーコリアン氏の損額は少なくとも5億ドルにのぼる、と見られている。メリーランド大学のピーター・モリキ教授は、「これは、カーコリアン氏の本格的なGMからの撤退開始です。たぶん、全く姿勢の変わらない経営陣に見切りをつけたのだと思います」、と述べている。

カーコリアン氏の真意は分からないが、GMに非難を浴びせる投資者は多数いる。単に最高経営責任者の能力を疑問視するだけでなく、GMをダウ銘柄から削除せよ、という声も聞こえる。今年、GMの株価は半分以下になった。この下げは、ダウ指数を160ドル下落させ、もしGMが無ければ指数は2%以上の上昇だった。

著しい売上の低下、減少が続くマーケットシェア、おまけに社債はジャンクボンドと呼ばれる、屑社債に格下げされてしまった。会社側は、その心配は無いと断言するが、アナリストはGM倒産の可能性を真剣に語っている。

ダウ銘柄は、誰が選ぶかご存知だろうか。ダウ指数は1896年に生まれ、指数に入れる銘柄は、ウォール・ストリート・ジャーナルの編集者たちが決定する。「銘柄の入れ替えは滅多にありませんが、企業収益の悪化を理由に、銘柄が削除された実例もありますから、GMがリストから落とされても不思議ではありません」、とダウ・セオリー・フォーキャスツのリッチ・モロニー氏は言う。

50%以上の株価下落、貧弱な経営内容、GMがダウ指数から外される日が本当に来るかもしれない。しかし、単なる大幅な下げなら、2002年インテルとホーム・ディポが5割以上の下げを記録したが、指数から取り除かれることはなかった。経営危機ならデルタ航空とノースウエスト航空があるが、これら二社が実際にダウ輸送指数から削除されたのは倒産が発表されてからだ。

もしGMを外した場合、どの銘柄と入れ替えるのだろうか。フォード・モーターもGMと同様な内容だから、まずそれはありえない。ならトヨタ・モーター、それともダイムラー・クライスラー?もちろん、そんなことが起きるはずがない。言うまでもなく、両社とも外国企業だ。それとも、グローバル化する社会を反映させて、ダウ銘柄に外国企業が組み込まれる日が訪れるのだろうか。

2005年、アメリカ人はどんなことを考え、そして何を2006年の目標にしているのだろうか。さっそくギャラップ世論調査や、大手新聞社からのアンケート結果を紹介しよう。

先ず、政治経済関連を見てみると、現在のアメリカは間違った方向に進んでいる、と62%の人たちが回答している。70%が親の世代よりも、アメリカンドリームを達成することが難しくなったと答え、経済的な不満が圧倒的に多い。ブッシュ大統領は、徹底的に民主党支持者から嫌われている。なんと91%が、大統領は誤解しやすい情報を使って国民を欺いている、と大非難だ。

テロリズムに質問を移すと、ニューヨークを襲った9月11日の惨事が、アメリカ人に深い傷を与えていたことが分かる。いまでも69%の人たちが、週に一度は崩れ去った世界貿易センターのことを思い出すようだ。テロリストのリーダー、オサマ・ビン・ラディンは捕まるだろうか。回答はほぼ半々のイエスは45%、ノーが55%だ。

今どんなことが心配になりますか?鳥インフルエンザの回答が63%、そして約半数が、実際に冒されるだろうと思っている。ほぼ100%が、アメリカ政府の鳥インフルエンザ対策に懐疑的だ。政府の準備は完璧、と答えた人は4%にすぎない。カトリーナの記憶が新しいだけに、ハリケーンや竜巻などの自然災害を恐れる意見も多い。特にハリケーン被害者の救助が遅かっただけに、45%が連邦政府の不能さを訴えている。

ストレスの解消方法は?ポーカーブームのせいだろうか。ギャンブルの回答が25%だ。その次が飲むことなのだが、ビールがトップの座をワインに初めて奪われている。セックスもストレス解消法の一つだ。25%が週に3回のセックスをする、と答えている。

次は宗教的道徳的な質問だ。67%の人たちが、毎日必ず一度は祈るという。53%は自分を神の僕、と思っている。あなたは宗教的だと思いますか、の問いに対しては21%が「イエス」だった。35%は道徳的絶対真理の存在を認め、32%は道徳的真理は状況に左右されると言う。道徳的真理の判断を聖書だけに頼る、と答えたのは16%だった。

まだまだ他にも、「あなたは自分自身に満足してますか」、「老後の準備はできていますか」などの質問があるが、アメリカ人が、来年もっとも実現したいことを記そう。ナンバー1は、家族と過ごす時間を増やすことだ。そうするためには、何かをやめて時間を作らないといけない。平均的なアメリカ人の一日は、7.9時間の睡眠、5.5時間の仕事、2.3時間のテレビ、1時間の食事、49分間の風呂や洗面、47分間の電話、10分間の考え事、それに7分間の祈りや宗教的行動だ。さて、どの時間を削ろうか。

どうしたらグーグルに追いつくことができるだろうか。グーグルの成長速度を鈍らせる方法はあるだろうか。競争相手なら、いつもそんなことを考えているはずだ。時価総額1270億ドル、急ピッチで巨大企業の一員となったグーグルが、2006年行き詰まりになる、とフォーチュン誌が報道した。

特に浮き沈みの激しいテクノロジー業界で、常に首位を走り続けることは難しい。事実グーグルは、既に新コンセプト分野でヤフーに遅れを取っている。コミュニティー・パワーサーチが主流になることが予測され、先週ヤフーはdel.icio.usを推定3500万ドルで買収した。

コミュニティー・パワーサーチを理解するには、人気サイトのマイスペース・ドット・コムを見てもらうのが一番早い。メンバーがメンバーを助ける。これがコミュニティー・パワーサーチの基本になる。だからデートの相手探し、同好会の結成、それに好きな音楽やホームページの情報交換が簡単にできる。今回ヤフーが買収したdel.icio.usは、役立ちそうなホームページがメンバーによって満載された、コミュニティー型情報サイトだ。

アマゾン・ドット・コムで買い物をされた方は多いと思うが、アマゾンではコミュニティー・パワーサーチのアイディアが利用されている。例えば、芥川賞受賞の「土の中の子供」に興味があったとしよう。クリックして直ぐ支払いページに行くこともできるが、目に入ってくるのが「この本を買った人はこんな本も買っています」、という一文だ。「花まんま」、「悪意の手記」などの本が紹介され、他の読者が「土の中の子供」以外に何を買ったかが分かる仕組みになっている。

さらにアマゾンが優れているのは「カスタマーレビュー」が読めることだ。実際に本を読んだ人からの感想文だから、買おうかどうかと迷っている人には決め手になるかもしれない。このようにコミュニティー・パワーサーチは、単に情報を提供するだけでなく、どの情報に一番人気があるかも瞬時で分かり、大衆の意見を把握することもできる。まだベータ版の段階だが、コミュニティー型のサーチエンジンとして、ヤフーはMy Web 2.0を発表している。

ヤフーがグーグルに対抗できるなら、ホットメールなどでお馴染みのMSNはどうだろうか。以前ライコスで最高経営責任者を務めたボブ・デービス氏によれば、この業界で生き残れるのはグーグルとヤフーの二社だけだと言う。また、先日SGコーウェンが主催した会議でも、MSNにはグーグルに追いつくだけの技術が無い、という発言が何度かあったようだ。来年は、グーグルファンとヤフー派が大きく争うことになりそうだ。

ブルの鼻息

2006年度の米国相場を悲観する必要は無い、とウォール・ストリートのブルたちは言う。あたりまえだ。ブルが弱気になったらベアになってしまう。ブルの言いたいことは、ある程度見当つくが、ひょっとしたら見落としていることがあるかもしれない。そんな訳で、最後まで話を聞いてみることにした。

マーケットは5年来の高値を記録するだけでなく、企業収益も堅調に4年連続の伸びとなるだろう。今年の夏、70ドルに達したオイルも下降基調になり、インフレを主張していたアナリストたちの声も聞こえなくなるはずだ。それに、心配されている住宅市場の大幅下落も有りえない。これがブルの要点だ。

現実を無視した夢物語だろうか。ゼネラル・モータースに代表される不振米国自動車産業、経営破たん続出の航空会社、南部を襲ったハリケーン、クレジットカードの借金に苦しむ消費者、そしてオイル価格の上昇、とにかく嫌なニュースの多い2005年だった。しかし、それらの悪材料には、株式市場を脱線させるだけの力は無かった。それだけではない。13回連続の金利引き上げにもかかわらず、第3四半期アメリカ経済は、予想を超える4.3%の成長を記録した。

「多くの投資者は、横ばいマーケットに不満の声をあげていますが、この厳しい環境での横ばいは、マーケットの底力が表れています」、とメロン・ファイナンシャルのロナルド・オーハンリー氏は語る。11月からのラリーで高値を更新する銘柄が増えているが、S&P500指数に属する銘柄の平均株価収益率はまだ16だから更なる成長が望める、と言うアナリストも多い。

ウェストウッド・ホールディングズの、デービッド・スパイカ氏も強気な一人だ。マーケットは比較的割安なレベル、と述べる氏は、2006年度のS&P500指数に約7%上昇を予測している。終了が近い金利引き上げ、エネルギー価格の安定が好材料になるようだが、同じテーマが2006年度の相場を崩す可能性もある。クレジットカードの借金に苦しむ消費者のことは上記したが、これは個人破産増加の原因になるから、小売セクターは投資対象から外した方が良さそうだ。

小型株に遅れていただけに、来年は大型株の年になる、という見方が多い。だから、推奨されている銘柄を見ると、ゼネラル・エレクトリック、コカコーラ、それにゼロックスといった消費者に馴染みの深いものばかりだ。ウォール・ストリートのブルたちとは裏腹に、個人投資家たちは極端に悲観的な来年の相場を予想している。シティグループの調べによれば、個人投資家がこれほど弱気になったのは、1994年以来初めてのことだという。これもプロを強気にさせる一因だ。

不安材料?それとも無視?

3.6対1が最近8週間の状況だ。売り株数が買い株数を上回ったことを示す数字なのだが、これは個人投資家から得たデータではない。機関投資家でもない。対象になったのはインサイダーだ。言い直せば、ここ8週間を振り返ると、最高経営責任者や役員は、積極的に自社株を売っていたことになる。

S&P500指数は10月13日の安値から順調に回復し、4年ぶりの高値を記録したのだから、インサイダーの売りは当然、と思うかもしれない。ここで、はっきりさせなければいけないのは、3.6対1の持つ意味だ。さっそく、ビッカース・ウィークリー・インサイダー・レポートの、デービッド・コールマン氏に説明してもらおう。

「前回11月の数値は2.7対1でしたから、インサイダーによる売りが加速しています。先週だけの様子を見てみると、売りが更にエスカレートし、比率は5.2対1に達しました。ほとんどの場合、売買レシオは2対1から2.5対1の間に落ち着きます。2.5対1を超える数字は、マーケットを弱らせる可能性があります。携帯電話用チップを製造するクワルコム、それに高級デパート、サックスのインサイダーによる売りが目立ちます。」

アナリスト、マイケル・ペインシャウド氏も、最近2週間のインサイダーによる売りが活発だと言う。「歴然としているのが、大手銀行のインサイダーです。例えば、サンフランシスコに本拠地がある、ウェルズ・ファーゴー銀行の最高経営責任者は合計で12万91株売っています。他の銀行では、バンク・オブ・ニューヨーク、それにノースカロライナ州のワコビア・コープです。」

インサイダーの売りは気にする必要はない、という意見もある。トリム・タブス・インベストメント・リサーチのチャールズ・バイダーマン氏によれば、企業による自社株買い戻し、それに配当金などがインサイダーの売りを十分に埋め合わせているという。そうかもしれないが、会社経営内容に詳しいインサイダーだけに、気にするな、と言われても気になる。考えてほしい。まだ上げ材料が残っているなら、わざわざここで売るだろうか。

季節的に、11月と12月はインサイダーの売りが増える傾向がる。現に2004年12月14日、AP通信は異常に膨れ上がるインサイダー売りを報道していた。インサイダーの売りは、投資者心理に大きな影響を与えるだけでなく、チャートパターンを結果的に変えてしまうこともある。新しい家の購入、車の買い換え、奥さんにダイヤモンドのプレゼント、そんな理由でインサイダーは持ち株を処分することもあるだろう。一つだけ言えるのは、トレンドが崩れないなら、インサイダーの売りに便乗することはない。

皆がそっちへ行くならこっちへ行こう。あまのじゃく、と言われるかもしれないが、投資者にもそういうタイプの人たちがいる。最近の例を挙げるなら日本株だ。メリルリンチの報告によると、アメリカ人投資者が最も好む海外投資は、日本株専門ミューチュアルファンドだという。もちろん、積極的な日本株買いがアナリストによって勧められていたから、これは当然な結果かもしれない。

あまのじゃく型投資家なら、日本株は買わない。なら何を買うのだろうか。「日本株ではありません、米国株です」、と回答するのは、コラムニストのジム・ジューバック氏だ。アメリカ株?13回連続の金利引き上げで、米国経済を支えてきた住宅市場が冷え込み始めている。来年はバーナンキ氏が連銀議長に就任するが、新議長の一年目は株が低迷する傾向がある。

株選びの名人、と呼ばれるリチャード・バーンスタイン氏(メリルリンチ)は2006年の株式市場について、こんな見方をしている。「株は大した成績を上げることはできないでしょう。一ケタ台、たぶん5%以下になると思います。既に株式市場には、十分すぎる以上の資金が入り、株は上げきったものが目立ちます。こんな状況ですから、配当金を狙った投資が適しています。もう一つの問題は連銀です。連銀には、利上げをストップさせるタイミングが、全く分かっていません。」

デービッド・スコット氏(チェース・インベストメント・カウンセル)も、バーンスタイン氏と似た意見を発表している。「2006年は警戒が必要です。連銀は金利を上げ続けることでしょう。たぶん上げすぎになるはずです。インフレが企業収益に悪影響になり、S&P500指数は5%ほど下げると思われます。景気が低迷ですから、ヘルスケア関連投資を勧めます。」

アメリカ株を推すジューバック氏の要点を説明しよう。海外から膨大な資金が東京市場へ流入しているが、日本の機関投資家は日本株を売ってアメリカへ資金を送っている。これだけ巨大な金が日本から来るのは、1989年以来初めてだ。日本の国債10年物は利回りがたった1.5%だが、米国債なら4.5%ある。日本経済は上向いてきたが成長率は2.4%であり、米国の4.3%に劣っている。また、つらい経済バブルで苦しんだ経験が、アメリカを投資先に選ぶことになる。

しかし、ジューバック氏は一つ大きな警告をしている。日本からの投資は永続的に見込まれるものでなく、その運命は2006年度のドル/円相場にかかっている。「焦点は連銀の金利引き上げ政策です。上げすぎは、米国経済を減速させます。あまりに経済が弱ってしまうと、次は金利の引き下げです。これはドルを下げます。そうなっては、海外からの資金が入ってきません。」はたして、次期連銀議長は、経済を壊さずに適切なところで金利を止めるられるのか?

まだ九日ある。それとも、もう九日しかない、と言うべきだろうか。クリスマスセールが始まった11月25日、別名ブラック・フライデイ、消費者はつかみ合いの喧嘩を起こすほど買い物に荒れ狂った。しかし、売上の良かったのはこの日だけだ。ひょっとしたら、今年のクリスマスセールは思ったほどの伸びが期待できないかもしれない。

まるで消費者は冬眠してしまったようだ、という報道を裏付けるように、アメリカズ・リサーチ・グループの調べによれば、クリスマスショッピングを終えたのは、たった25%の人たちだけだ。特に今年変わっているのが、通常クリスマスの2週間前から売上のジャンプが見られるのだが、今のところ全くその気配が無い。

メリルリンチのアナリスト、マーク・フリードマン氏を引用しよう。「クリスマス直前の2週間は、小売店にとって最も重要な期間です。40%以上の売上は、この2週間に集中するのが普通です。」また、NDPグループのマーシャル・コーエン氏はこう語る。「全く消費者にエンジンがかかりません。こんなに買う気の無い状態が見られたのは、2001年に一度あっただけです。ショッピングセンターに行っても、簡単に駐車する場所が見つかるのですから、明らかに何か変です。」

なぜショッピング熱が上がらないのだろうか。あるアナリストは、我慢比べの比喩を使って説明する。「最初に、まばたきするのはどちらでしょうか。消費者でしょうか、それとも小売店でしょうか。消費者は我慢比べが上手くなりました。今、店に行くべきか、それとも値下げを待つべきか。正に我慢比べの最中です。」

上記したフリードマン氏も、我慢比べ説に賛成する。「クリスマスイブは土曜です。消費者はこの土曜日に、大バーゲンセールが来ることを期待しているようです。」小売店経営者は、さぞイライラしているだろう、と思ったのだが、NDPグループのコーエン氏は、経営者たちに焦りの色はまだ見えないという。

泣いても笑っても残りは九日、最大手のウォルマートは積極的な値下げ作戦を既に発表している。どちらにしても、また今週末がダメなら、小売店はパニックボタンを押すことだろう。少し違った意見だが、物がそう盛大に売れなくても問題はない、と述べるアナリストもいる。「消費者に買う気がないのは、買いたい物がみつからないからです。残りの九日間は、商品券の売上が大きく伸び、これが小売店を救うことでしょう。」たしかにそうだ。へたな物を贈るより、商品券の方が無難かもしれない。

大きく外れた予想

12月13日、連銀は13回目の金利引き上げを実施した。連邦公開市場委員会後の声明文にも変化が見られ、マーケット関係者たちは、利上げサイクルが終わりに近いことを確信した。2006年度の米国経済はどうなるだろうか。投資者なら興味のあるところだが、エコノミストの意見は大きく二つに分かれている。

たとえ近未来でも、将来を正しく予測することは難しい。今年を例に挙げれば、はたしてどれほどのアナリストが、瞬時70ドルを突破したオイル価格を正確に予想していたのだろうか。ご存知のように、予想は面白いように外れる。そこで、ビジネスウィーク誌が選んだ、最も的外れだった今年の予想を紹介しよう。

予想 1

「マイクロソフトの真剣なサーチエンジン開発で、グーグルに存続危機が訪れる。」これは2005年1月に、テクノロジー・レビューの著者、チャールズ・ファーグソン氏が語った言葉だ。見事に外れた。グーグルは存続しているだけでなく、この業界では追従者を許さない圧倒的な首位独走だ。

予想 2

「積極的なリストラで経営状態が好転している。現時点で会社を解体したとしても、一株6ドルの価値は十分にある。」今年の有望銘柄として、カルパインを推奨した、ポートフォリオ・マネージャー、デービッド・ウィリアムズ氏の発言だ。その時点での株価は3ドル50セントだったが、今日たった32セントで取引されている。

予想 3

「中央銀行の売りで、金は暴落となることでしょう。」三井グローバル・プレシャス・メタルズ、アンディー・スミス氏。
暴落と正反対な展開になった。金は25年来の高値を更新し、今年20%増の大活躍だ。

予想 4

「2005年、ダウ指数は8000ドルで終了するでしょう。」バーニー・シェーファー氏(シェーファーズ・インベストメント・リサーチ)まだこの予測が達成する可能性はある。しかし、そのためには残る2週間で、ダウは25%下げないといけない。

予想 5

「将来的な不安材料です。OPECのオイル生産過剰で、オイル価格は急激な下げとなるでしょう。」イラン石油相、ビジャン・ザンゲネ氏。この発言は2004年11月の記者会見からだが、当時オイルは50ドルだった。それから2005年に入ってオイルは最高値70ドルを記録し、今日の値段は61ドルだ。

予想 6

「今年アメリカを襲うハリケーンの数は、2004年度より少なくなるでしょう。」コロラド大学からの発表だが、2005年、アメリカに上陸したハリケーンは合計14、新記録が達成された。コロラド大学は、6つのハリケーンを予想していた。

スターバックス対サムバックス

コーヒー業界の巨人、スターバックスが小さな田舎の喫茶店に営業停止を正式に申し入れた。1971年、シアトルのパイク・プレース・マーケットで誕生したスターバックスは、現在35カ国でビジネスを展開する国際企業だ。スターバックスは、いったい何が気に食わなかったのだろうか。さっそく説明しよう。

この小さな喫茶店は、オレゴン州のアストリアにある。人口はたったの1万人だ。物覚えの良い人なら、全住民の名前を記憶することができるだろう。問題は、喫茶店の名前サムバックス・コーヒーだ。何でわざわざスターバックスと似た名前をつけたのだろう。結論を言ってしまえば、別にスターバックス・コーヒーをまねたわけではない。経営者の名前はサム・バック。だから喫茶店をサムバックスと命名したまでだ。

ここで一つ注意しておこう。バックは旧姓で、1993年に結婚した彼女の正式名は、サム・ランデンバーグだ。喫茶店に旧姓を使った理由を、「この町では誰もが私のことをサム・バックと呼びます」、とサムさんは説明している。サムバックスがアストリアでビジネスを開始した時、まだスターバックスはこの喫茶店の160キロ以内で営業をしていなかった。

そして、スターバックスはサムさんを商標権侵害で訴えることになるのだが、どうもよく分からない。スターバックスとサムバックスは名前が類似しているため、消費者を混乱させた、とスターバックスは主張するが、人口1万のアストリアの住民は本当に二者を混同したのだろうか。「驚きました。あんな大きな会社が私を告訴したのです。サム・バックは私の名前です。自分の名前を使うのは違法ではありません」、とサムさんは憤慨する。

サムバックス・コーヒーは狭い。3メートル四方の店内にはビーフ・ジャーキーもおかれているが、広いスターバックスの雰囲気とは大違いだ。どう見ても、スターバックスには被害は無いと思われるのだが、商標に詳しい弁護士は、サムバックスはヒルのようなものだと言う。いったん前例ができてしまうと、次を取り締まることが難しくなる。だから、まぎらわしい名前の撲滅は、早ければ早いほどいいわけだ。

結果を記しておこう。サムバックスは負けた。7年間の結婚生活後、意図的に旧姓で喫茶店を始めた事実は、スターバックスの知名度を不法に利用した、と判断されたようだ。ここで質問。スターバックスの会社名は、どこから取ったかご存知だろうか。ホームページにはこう書かれている。Starbucks is named after the first mate in Herman Melville’s Moby Dick..モビー・ディックに登場する、一等航海士の名前がスターバックスだ。

地味な銘柄を嫌うアナリスト

退屈な銘柄は投資者の味方だ、と経済コラムニストのチェット・クリヤー氏は言う。「株がセクシーであればあるほど、株価は割高になります。そのような銘柄に投資をすると興奮するものですが、興奮は投資の敵です。長期投資で大切なことは、地味な株の中から格安なバーゲン銘柄を見つけ出すことです。」

地味で格安なら、人気株の正反対だ。そんな株に投資して、本当に儲かるのだろうか。310億ドルの資金を運用する、クリス・デービス氏は、こんなことを語っている。「私が投資対象にする銘柄は分かりにくくて複雑、それに味気が無くて華やかさに欠けるものばかりです。保険、砂と聞いて刺激される投資者はいません。しかし味気ない、ガイコやマーチン・マリエッタ・マテリアルズは大きな投資利益を生み出してくれました。」

過去10年間、S&P500指数を常に上回る成績を上げているデービス氏は、更にこう付け加える。「名門大学を卒業した若い優秀なアナリストは、保険などの退屈な業界には全く目もくれません。ですから、今のアメリカ証券業界には地味な銘柄を徹底的に調べるアナリストの数はごく限られています。これが、私たちファンドの強味です。」

地味な株には弾みや勢いが乏しいから、いったん買ったら、そう簡単に手放すことはない。違った言い方をすれば、退屈な銘柄投資で成功するには、強い忍耐力が必要だ。シニア・インベストメント・ストラテジスト、ティム・プライス氏を引用しよう。「プロと呼ばれる人たちも含めて、今日の投資家は売買が非常に頻繁です。隣の芝生はいつも青く見えるように、他人の持っている株は自分の持ち株よりずっと魅力的に映ります。証券会社からは絶えず情報が入ってきますから、投資者たちは自然に活発な売買をしてしまうわけです。」

インターネットのおかげで、株の情報は簡単に手に入る。一般的なビジネスニュースだけでなく、掲示板やチャットルームもあるから、有望そうな銘柄はあちこちに氾濫している。ジックリと腰をすえた投資などしていたら、ファンドマネージャーとしての職を失ってしまう。とにかく皆、手っ取り早い結果がほしい。

私たちは今日、長期投資の難しい時代に生きている。即席結果が求められる証券業界は、アナリストやファンドマネージャーを華やかなスター銘柄に集中させる。もちろん、地味な銘柄のレポートは極端に少ないから、個人投資家もスター銘柄に飛びつく。こうなると、重要なのは売買のタイミングだ。退屈な銘柄を狙う必要はない。必要なのは、テクニカルアナリシスを利用した、適切な売買技術だ。これが無いと、全ての投資が塩漬けになってしまう。

国家に財政案があるように、私たち個人も予算の割り当てをする。食費、光熱費、子どもの教育費、住宅ローン、交際費、と使い道はやたらと多い。ここで忘れてならないのが投資だが、意外と明確な投資目標を持っている人たちが少ない。とにかく増えてくれれば良い、という漠然としたゴールではなく、正しい投資目標設定方法7つを紹介しよう。

1、目標を限定すること。

あれもこれも、と目標の数が多すぎてはいけない。それに、全ての目標を一度に達成するのは難しい。個々のゴールを検討して、どれが最も重要か、そしてなぜ重要なのかを確認しよう。優先度の高いものをゴールに選ぶことが肝心だ。

2、十分な時間を与えること。

時間が最大の味方であることを覚えておこう。一見将来性がない投資でも、適切な時間を割り当てることで大きな成長が可能になる。大げさな言い方をすれば、三日間で資金を倍にするような計画を立ててはいけない。それは大切な時間を敵にしてしまうだけだ。

3、正直になること。

各目標を読み返すとき、どんな気持ちになるだろうか。これなら行ける、といった前向きなエネルギーが体内から湧き上がってくるだろうか。それとも、こんなゴールは達成できるわけがない、と最初から諦めムードだろうか。自分の気持ちを正直に見つめて、本当にやる気を起こさせるものだけを選ぼう。

4、家族の意見も聞くこと。

妻や夫、それに子どもたちの意見も聞いてみよう。一人でやるよりも、家族が団結するなら、ゴールはよりいっそう達成しやすくなる。

5、直ぐ実行すること。

目標が決まったら、さっそく行動に移すことだ。千里の道も一歩から、第一歩が大切だ。

6、小さなことを気にしない。

お金を増やすことが目的だが、小さなことでケチケチしてはいけない。古い冷蔵庫の買い替えは、もう一年待とう。無駄使いになるから、夏の家族旅行は中止しよう。これでは人生を楽しめない。大きな目標だけに焦点を合わせよう。言うまでも無いが、生きている限り思わぬ出費は必ず起きる。そんな時に備えて、緊急資金口座を作っておくのも一案だ。

7、目標変更を恐れないこと。

単に目標自体が間違っていることもあるが、時間の経過とともに目標が変化するのは当然のことだ。子どもが大学を卒業してしまえば、大学資金用の投資は無用になる。30代には30代の投資があり、50代には50代にピッタリした投資がある。何を優先させるかを考えて、状況に合った投資目標を設定しよう。

レストランで分かる米国経済

1999年12月、米国株式市場はブルマーケットのピークを迎えていた。「向こう6年間で、最も伸びる可能性がある銘柄はどれだと思いますか?」、と投資者に質問していたら、どんな答えが返ってきただろうか。たぶんインターネットのイーベイ、それにバイオテックのメッドイミューンなどが挙げられたはずだ。

しかし、事実は全く違う。投資コラムニスト、ジョン・マークマン氏の話を聞いてみよう。「実際に計算してみましたが、過去6年間で一番成長したのは、ソーダでお馴染みのハンセン・ナチュラルです。2000年の1月から、何と3739%の上昇です。次が天然ガスのKCSエネルギー、これは3251%増です。そして3位は+3248%のIRISインターナショナルです。IRISは尿検査システム機器を製造する会社です。」

将来を正しく予測することは難しい。たとえば、来年のアメリカ経済はどうなっているだろうか、といった単純な疑問に適切な回答をするために、エコノミストは数多くのデータを集め分析する。失業率、新規雇用者数、耐久財受注、住宅着工件数、新築住宅販売件数、それに貿易収支などを総合して予想するのだから楽な話ではない。

エコノミストは、皆おなじ資料を持っている。それだけに、一味違った決め手になる情報がほしい。そんなものは、そう簡単に入手できない、と思われるかもしれないが、著名エコノミストたちは意外なところからヒントをつかんでいた。さっそく 2、3紹介しよう。

スティーブン・レビット氏(シカゴ大学経済学部教授)
「私の好きな風変わりな経済指標は交通量です。例を挙げましょう。インターネットバブルが弾けた時、シリコン・バレーの交通量は大きく減りました。一般的な解釈方法ですが、経済が好調な時は、ラッシュアワーの交通渋滞が極端にひどくなります。」

ナリマン・ベラベッシ氏(グローバル・インサイト社、チーフ・エコノミスト)
「レストランのウェイター、ウェイトレスのサービス度が、米国雇用状況判断に役立ちます。失業率の低い時は、質の高いウェイトレスを雇うことが難しく、レストランのサービスが悪くなります。逆に失業率が高くなってくると、レストランのサービスは向上する傾向があります。」

デービッド・ブランカキオ氏(経済ジャーナリスト)
「ミシガン州グリーンビルは、斜陽化した工業の町です。一軒の質屋があるのですが、店内に大きなソケットスパナーがおかれているのが外から見えました。この工具を使って生計を立てていた誰かが、質に入れたのです。職、仕事、これが経済を支える基盤です。古臭い言い方ですが、近所の人たちが失業中ならアメリカは不景気です。もしあなたが失業中なら、それは大恐慌です。」

1億9千700万ドル対2千万ドル。軍配は、もちろん1億9千700万ドルに上がった。「私たちは最善を尽くしました。しかし、テネシー州を上回る好条件を用意することはできませんでした。」カリフォルニア州、ガーデナ市にあるニッサン・モーター北米本社が、テネシー州ナッシュビル近郊に移動することになった。

移転費用などの名目で、テネシー州がニッサンに示した金額は1億9千700万ドル。そして、残留を求めるカリフォルニア側が提供したのが、減税と2千万ドルの電気代やガス代の割引だった。クッシマン&ウェークフィールド社のマイケル・クトリ氏は、「企業誘致のために、これほど巨大な金額が使われることは希なことです」、と言う。

ニッサンがカリフォルニアに北米本拠地を構えたのは、1958年のことだった。ガーデナ市はロサンゼルス国際空港から20分ほどだから、交通も便利だ。年間を通じておだやかな気候にも恵まれているが、コスト削減対策の一つとして、ニッサンは移転に踏み切った。

ニッサンを得ることで、テネシー州の経済は毎年5億2700万ドルが加算される。テネシー大学の調べによれば、ニッサンに関連した供給業者、それに他のサービス業者もテネシーに移転してくることが予想され、結果的には1万1000人の新規雇用が生まれそうだ。「1ドルが2ドル50セントになる投資です。これを見逃すことはできません」、とテネシー州経済開発部のマット・キズバー氏は語る。

テネシー州がニッサン誘致に乗り出したのは1998年のことだ。既にニッサンは1982年、テネシー州のスミルナに自動車組立工場を建てた。その後テネシー州は、第二の工場建設を積極的にニッサンに呼びかけていたが、それを実現することは失敗に終わった。工場がダメなら、というわけで狙われたのがガーデナ市の北米本社だったわけだ。

カリフォルニア州知事、アーノルド・シュワルツェネッガー氏もニッサン引き止めの努力をしたが、ニッサンの要求を受け入れるためには、カリフォルニア州の法律を大幅に変更するしかない極めて難しい条件だった。問題は、第二第三のニッサンが出そうなことだ。JDパワー&アソシエーツ社のトム・リビー氏を引用しよう。「南カリフォルニアにあるホンダ・モーター、ミツビシ・モータース、そしてマツダ・モーターも他州への移動を考慮することになるでしょう。」

スポンジボブやスクービードゥーは、健康的な食品のコマーシャルだけに使われるべきだ。こんなレポートが、米医学研究所から発表された。子どもの肥満が社会問題になっているから、人気キャラクターは、子どもに正しい食生活を教える義務がある、というわけだ。米医学研究所は議会の認可によって設立された機関であり、その影響力は各界のエキスパートや議員に広く及んでいる。

今回のレポートを要約しよう。「企業は子どもたちに、もっと高質な栄養を含んだ食品や飲み物を提供するべきだ。そのためにはカロリーを抑えて、脂肪、塩、そして砂糖の使用量を制限する必要がある。子どもたちの健康管理は最優先されるべきものであり、現在の食生活を継続することは、将来的に大きな問題がある。幼少時に形成された食習慣は、結果的にアメリカの食習慣を作り上げる。健全な食生活を米国に定着させるには、各界からの強力が必須だ。」

米医学研究所が指摘するように、子ども向けに放映される食品コマーシャルは、たしかに高カロリーなものが圧倒的に多い。このような食品製造を即刻停止せよ、といった極端な勧告はなかったが、米医学研究所はコマーシャルの模範基準を設定して、それに違反する企業を罰することを提案している。具体的には、2年の期間が過ぎても事態が改善されない場合は、子ども番組の時間帯には、非健康的な食品コマーシャルを全て禁止することが推薦されたようだ。

コマーシャルが子どもに与える影響力を無視することはできない。毎年100億ドル以上の資金が、子ども向けコマーシャルに使われ、ほとんどの食品は大した栄養のない、つまらないものばかりだ。その結果、上記した肥満問題に発展するのだが、既に31%の子どもは太りすぎだから、早く手を打たないと大変なことになる。ついでに言えば、大人の40%以上が肥満だから、正にアメリカは肥沃な国だ。

規制対象になるのは、食品コマーシャルだけではない。米医学研究所は、レストランや食品小売店の協力も要請している。メニューにカロリーを記している店も既にあるが、もう一歩進めて、健康的な材料だけを使った料理が好ましい。もっと重要なのは、家庭での教育だ。先ず親が先頭を切って、適切な食生活の見本にならなければいけない。テレビの影響も大きいが、何と言っても、子どもは親を見て育つ。と書いたら心配になった。4割以上の大人が太りすぎのアメリカで、本当に家庭教育は可能なのだろうか?

今回の東京は違う!

日本の経済回復は本物だ、とアナリストたちは自信満々に言う。2003年の5月から2倍になったジャパン・インデックス、さすがに皆さん強気に転向だ。ソニーやトヨタは知っていても、東京株式市場に詳しいアメリカ人は少ない。しかし、連日好調な東京マーケットを黙って見ているのは面白くない。そこで、日本株専門のミューチュアルファンドに資金を回すことになる。

一口に日本専門ファンドと言っても、その数は多い。ファンドも個別銘柄と同じで、有望な優れたものを選ばなくてはいけない。ティム・ミドルトン氏(経済コラムニスト)の意見を紹介しよう。「T.ロウ・プライス・ジャパンは、2006年度、最も成績優秀なファンドになるでしょう。9月に再選された小泉首相は、日本の経済問題を初めて直視した政治家です。再選を合図に買っているのは、日本の投資家だけではありません。海外の資金も東京へ向かっています。」

アメリカ人が日本へ投資するときの注意点は何だろうか。ミドルトン氏を引用しよう。「過去15年間を振り返ってみると、東京市場はラリーの後、急降下することがしばしばありました。これが原因で、多くの投資者が日本株専門ファンドを売却したのも事実です。ですから、これから初めて日本に投資する方々は、急落にあううかもしれません。しかし、今回のラリーはいつもと違います。モーニングスター社の調べによれば、ミューチュアルファンドはまだ本格的に日本株を買っていません。」

米国以上に、日本を注目しているのがヨーロッパのファンドマネージャーたちだ。先日、短期金利引き上げがあったが、ヨーロッパ経済は全体的に弱々しい。来年早々から、ヨーロッパ資金が更に日本へ流れ込むことが既に予測されているから、今年中に日本株専門ファンド購入を推奨するアドバイザーも少なくない。

もう一つ、ミドルトン氏は興味深い指摘をする。「長期投資ならミューチュアルファンドで十分ですが、短期資金は証券取引所に上場されている、日本専門インデックス・ファンドに向かうことでしょう。インデックス・ファンドとミューチュアルファンドには、大きな違いがあります。ミューチュアルファンドに集まった資金は、直ぐ投資する必要はありませんが、インデックス・ファンドの場合は直ぐ株購入に使われます。」明るい正月になりそうだ。

あなたの口座は大丈夫?

持ち株が全て売られ、オンライン口座の残高がゼロになっている。こんなハッカーによる被害が急増し、米証券取引委員会(SEC)は、オンライン投資家たちに十分注意を払うよう警告を発した。現在取り調べが行われている口座数は公表されなかったが、SECのスーザン・ワイダーコ氏によれば捜査中の口座は、最近6カ月以内に被害を受けたものが中心だ。

オンライン証券会社の大手と言えば、Eトレード、アメリトレード、チャールズ・シュワブ、そしてフィデリティの四社がある。例えば、Eトレードの口座数は360万におよび、その約三分の一は米国外からの投資者だ。チャールズ・シュワブに口座を持つ投資家は700万人にのぼり、その半数がオンライン口座を利用している。また、80%のオンライン口座は上記四社の管理下にある。

ハッカーはどうやって口座から金を奪うのだろうか。最もよく使われるのが「フィッシング」という手口だ。一見本物のようなEメールがオンライン証券会社から届く。下記をクリックしてパスワードを再登録してほしい、といったやり方で重要な個人情報を盗むわけだが、問題はあまりにも無防備な投資家たちの姿勢だ。覚えておいてほしいのは、証券会社がEメールで細心の注意を払う必要がある個人情報を求めることはない。

口座をハッカーから守るために、次の事項も忘れないでほしい。最新版のアンチウイルス・ソフトウェアはインストールされているだろうか。スパイウェア対策は十分にできているだろうか。ファイアウォールをインストールするのも効果的な手段だ。インターネット・エクスプローラをお使いなら、バージョン更新情報も必ず入手しよう。

不幸にも被害にあってしまったらどうするべきか。先ず証券会社に即刻連絡すること。ほとんどの人はそこまでで終わってしまうが、できれば証券会社が所在する市の警察にも報告してほしい。これは個人情報泥棒犯罪として、警察でも捜査をしてくれる。しかし、SECのワイダーコ氏はこんな指摘をする。「ハッカーの多くは米国の法律が届かないオフショアを拠点にしています。ですから実際の逮捕は、とても難しいのが現状です。」

もちろん、ハッカーの心配があるからといって、オンライントレードを止める必要はない。とにかく用心すること。極端に言えば、証券会社からのEメールは無視することだ。たとえ犯人が捕まったとしても、盗まれた金が全額戻ることはない。最新なソフトウェアをインストールして、疑い深い投資家になろう。

ついに500ドルを超えた。こんなレベルで金が取引されるのは1987年以来だ。好調なのは金だけでない。銀、パラジューム、プラチナ、それぞれ高値の更新だ。「世界経済はフルスピードで走っています。まるで金属を食い散らすモンスターのようです」、とマネー&マーケット誌のショーン・ブロドリック氏は言う。

金属市場の中で、最も身近に感じられるのが金だ。なぜ金が買われているのだろうか。ほとんどの人が指摘するのがインフレだ。9月の数字を上回ることはなかったが、消費者物価指数10月分は+4.3%だった。これほど高い数値を記録するのは14年ぶりになる。ご存知のように、物価上昇は紙幣の価値を下げる。歴史を振り返ると、金には究極的な貨幣としての価値があり、インフレ対策投資として常に選ばれてきた。

2004年1%だった米国短期金利は、連銀の執拗な引き上げで4%になった。これも、金人気を作り上げている一因だ。4%になった金利だが、これはまだインフレ率より低い。インベストメント・オフィサーのフランク・ホルムズ氏に説明してもらおう。「各国の中央銀行は、短期金利を実際のインフレ率以下に設定します。そうすることで、経済成長に勢いをつけることができるからです。しかし、結局これがインフレ原因になり、金が買われることになるのです。」

中国、インド、そして他アジア諸国からの金需要が増大している。金が伝統的な投資となっているこれらの国々は、最近目覚しい経済発展を遂げ、資金が豊富になった。しかし、需要が増えても肝心な供給が追いつかない。フランク・ホルムズ氏によれば、金精錬所を建てるには30億ドルの費用がかかり、約10年の建築期間が必要だという。また、環境保護を叫ぶ団体も多いから、そう簡単に精錬所用の土地を確保することもできないようだ。

止まる気配を見せない金需要、極めて限られている供給量。まだまだ金は買える、と思われるかもしれないが、ここでファイナンシャル・アドバイザー、ウィリアム・バーンスタイン氏の言葉を聞いてほしい。「金に投資する理由はインフレ対策ですが、本当にインフレ率以上の成績を上げているのでしょうか。答えは「ノー」です。インフレ率を考慮すると、金の実質利益はゼロです。」

インフレ対策にならないのなら、無理して金を買うことはない、と早合点する前に、もう一度バーンスタイン氏の話に耳を傾けよう。「株式投資の一部に、金鉱銘柄を入れておくことで好結果を得られます。金鉱銘柄は全体のポートフォリオの10%で構いません。残りの90%は成長株です。100%成長株だけのポートフォリオと比較すると、金鉱株を含めたポートフォリオの方が優れたリターンを得られます。もちろん、問題が一つります。たとえ成長株と金鉱株をミックスしても、売買タイミングを間違えていたら何の意味もありません。」

機関投資家の探し物

ファンドマネージャー、ビル・グロス氏は言う。「やっとつかんだぞ、これが完璧なスイングだ、と喜んでいたのは良かったのですが、13番から14番ホールに行く途中で体得したはずの秘密をすっかり忘れてしまいました。」皆さんも、似た経験をお持ちではないだろうか。難しいパットを立て続けに沈めると、完全にパットのコツをマスターできた、と思ってしまう。しかし、次のホールからは、たった30センチのパットも決まらない。あれは単なるまぐれだったのだろうか。

株式投資でも、ご存知のように同様なことが起きる。連戦連勝の波に乗ると、マーケットの秘密を手に入れた、と確信することだろう。だが、連敗の悪いリズムに襲われると、つかんだ秘密を疑ってしまう。だから投資者たちは、もっと優れた方法を求めることになるが、実はウォールストリートの機関投資家も同じだ。もちろん、100%確実なやり方は要らない。彼らの求めているものは「アルファ」だ。

アルファを持ち出すと、必ずベータが出てくる。ウォールストリートでベータと言えば、マーケットと同様なリターンを生む投資方法だ。例えば、マーケット指標に使われるS&P500指数が8%増なら、あなたの口座も8%上昇することになり、指数が6.5%減なら、あなたの口座も6.5%減る。マーケットと同様では、やはり面白くない。そこでアルファが求められるわけだが、アルファとはマーケットが低迷する時も利益を上げることのできる投資方法のことだ。

アルファ投資などと言うと複雑に聞こえるかもしれないが、実際はそう難しいことではない。100億円の投資を想定して説明しよう。先ず、マーケットと同じ動きをするベータ投資に5%の資金を割り当てる。(10%でも構わない。)インデックスファンドのような、指数に連動するものを利用するのが手っ取り早い。繰り返しになるが、ベータの部分はマーケットと同じリターンになるから儲かることもあれば、その逆に損をすることもある。

次は残りの95億円をアルファ投資に使う。マーケットが悪くても利益を上げなくてはならないから、何に資金を回したら良いだろうか。ここで、また手っ取り早い方法を言うと、優秀な成績を誇るヘッジファンドに任せることだ。なんだ、つまらない、という声が聞こえてくるが、機関投資家はより良いアルファ投資を求めて、際立ったヘッジファンドマネージャーを絶えず探している。一口に機関投資家といっても、それには銀行、保険会社、ミューチュアルファンド、年金基金、そして農業団体などあるから莫大な資金だ。

アルファ投資につぎ込まれている正確な金額は公表されていないが、年金基金のような大手機関投資家の総合投資額は1250億ドルと推定されている。「機関投資家が今日のように、ここまで積極的にアルファ投資を探していたことはありません。彼らは種類など気にせず、ありとあらゆるものに手を出しています」、とジェーン・ビュシャン氏(ヘッジファンド会社勤務)は言う。90年代のブルマーケットが派手だっただけに、満足できるアルファを見つけることは難しいことだろう。

ゼネラル・モータース(GM)が弱体化した最大の原因は、革新性に欠けるためだ、とMSNマネーでシニアエディターを務めるジム・ジューバック氏は言う。だから、有利な環境でビジネスを展開できる競争相手にマーケットシェアを奪われてしまった、というのは単なる言い訳であり、会社成長を刺激する新鮮なアイディアを導入できなかった経営陣の責任だ、と氏は非難する。話を続けよう。

「ゼネラルモータースに限らず、大企業の経営者たちは一つの問題解決方法しか知りません。それは、GMの3万人解雇計画が示すように、コストを削減することです。最高経営責任者は、アメリカの労働者クラスを犠牲にし、肝心な会社を成長させることを怠っています。今日の米国大企業は、まるで成長することを忘れてしまったかのようです。

しかし、グーグルとアップル・コンピュータを見てください。革新的なアイディアを取り入れることで飛躍的な伸びを記録しています。デルやシスコ・システムズも世界制覇を目指して努力しています。大した将来性が無い、と言われるスチールやコーヒー産業でも、ニューコアとスターバックスの成功例があります。

グローバル化が進む現代のビジネス界では、外国企業との戦いを無視できません。GMの経営陣は、このグローバル化を売上不振の一因にあげていますが、それは理由になりません。海外から入って来る安いスチールにもかかわらず、ニューコアは確かに業績を伸ばしています。安い労働コストを武器にする外国企業との競争で、ニューコアは好成績を上げているのですから、同じことがGMにできないはずがありません。」

それでは実際にGMはどうしたらいいのだろうか。労働組合、年金、医療保険など問題があるが、何よりも大切なのは消費者が買いたい、と思う車を作ることが先決だ。現在GMでは55種類の自動車、トラック、そしてスポーツ用多目的車が製造されている。4ドアのセダンだけでも10種類あり、いったい何がGMの顔なのかが分からない。労働組合のリーダーたちもこう語っている。「GM復帰の鍵は、消費者を引き付ける魅力的な車をデザインすることです。」

中国にデフレがやって来る!?

中国とデフレ、今では縁遠い二つの言葉だが、デフレが中国を襲う、と真剣に考えている人たちがいる。過熱する中国経済がよく話題になったものだが、シャンハイで経営コンサルタントを務めるジョン・チャン氏が言うように、最近は中国経済がニュースになっても、過熱という表現は使われることがなくなった。

「先ず、適切な中国政府の対処を称賛したいと思います」、と経済ジャーナリストのウィリアム・ペセック氏は語る。「バブル経済が懸念されていましたが、中国政府関係者はうまくバブルをしぼませることに成功しました。更に今年中国は、2.1%の人民元切り上げも問題無く実行しましたから、リーダーたちは経済状況を正確に把握しているようです。」

しかし、現在の中国にはデフレを招く危険性があるという。モルガン・スタンレーのアンディー・シェイ氏を引用しよう。「アジアで第二番目の中国経済は、早ければ来年中に物価の低下が始まると思われます。最大の原因は超過生産です。中国はセメント、アルミニウム、繊維などの例に見られるように物を余分に作り過ぎです。同じように、工場やビルも建て過ぎです。」中国政府は行き過ぎな設備投資を避けようとしているが、経済を適当な速度に減速させるような積極的な措置ではない。だから、たとえ中国経済の成長率が9%落ちたとしても、超過生産を解消するのは無理だ。

アメリカ人が貯金をしないのとは正反対に、一般中国人の貯蓄率は極めて高い。この貯蓄率も、中国をデフレに導く原因になる。「中国政府は国民に、もっと消費を奨励しなくてはいけません。そのためには、国有されている資産を私営化する必要があります。さらに、年金制度、医療システム、それに学校教育の近代化も重要な課題です」、とシェイ氏は言う。北京大学教授、ジャスティン・リン氏も2006年デフレ論に賛成だ。「このような形で、中国が経済を成長させていくことは危険です。物があまりにも生産され過ぎですから、デフレ経済に逆もどりすることは十分考えられます。」

中国がデフレに襲われたら、米国経済に悪影響を与えるだろうか。ウイリアム・べセック氏の意見を要約しよう。「必ずしもアメリカが被害を受けるとは限りません。デフレに陥るということは、政府が健全な消費経済育成に失敗したことを意味します。ただでさえ金を使わない国民ですから、中国は米国への輸出を大幅に増やそうとすることでしょう。そのため貿易摩擦が深刻化することも予想されます。もちろん、デフレに苦しみ状況を改善させた日本の実例もありますから、中国に同様なことができるかもしれません。」

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