November 2005 のトップ・ストーリー一覧

中間価格増、しかし平均価格は減

何かの間違いだ、こんな筈はない。今朝発表された数字に皆おどろいた。10月分の新築住宅販売件数は、年間ベースで142万件にのぼり、予想された120万件を上回った。この数値は9月の販売高から13%増となり、これほど大きな上昇率を記録したのは1993年4月以来だ。

だれもが米国不動産は下降局面に入った、と信じていた。住宅着工戸数、それに建築申請数も減少が始まっていたから、今朝の数字はどうしても納得ができない。本当に今朝の発表は正確なのだろうか。全米住宅産業協会の、デービッド・サイダース氏はこう語っている。「住宅市場の状況は十分につかんでいるつもりでしたが、こんな統計は全く予期していませんでした。しかし、私の見通しは変わりません。数々のデータを総合してみると、米国不動産は下向きが始まっています。」

報道された売上を地域別に見ると、ハリケーンの被害を受けた南部は1.9%の上昇だったが、北東部と西部はなんと40%以上の跳ね上がりだった。実際に低迷が発表されたのは中西部だけで、新築住宅の販売数は9月分を9.5%下回った。中間価格は、9月の23万1300ドルを1.6%上回った。(中間価格は、ちょうど真ん中にあたる値段だから、半数がこの値段より高く売られ、半数がこの値段よりも安く売られていることになる。)

しかし、平均新築住宅価格は9月より低くなっている。こんな現象は高級住宅の下げ幅が、低価格住宅の下げ幅よりも大きい時に起きやすい。1年前の値段と比較してみると、平均新築住宅価格は1%の下落、そして中間新築住宅価格は1%の上昇だ。一見矛盾するような数字だが、不動産エコノミストの説明によれば住宅建築会社は、以前よりも小さな家を建てている可能性が高いという。

住宅ローンの金利上昇が、10月の好調な売上に結びついた、という説もある。9月、30年ローンの平均は5.77%だったが、今日は6.07%だ。これ以上金利が上がってしまったら、マイホームの夢を逃してしまう。だから今買うしかない。そんな理由で、買い手たちが一斉に住宅マーケットに押し寄せた、というわけだ。これが買いのピークだろうか。いよいよ本格的な冷え込みが来るだろうか。ワコビア証券の、フィリップ・ニューハート氏を引用しよう。「ピークかどうかは断言できません。しかし、今回のような伸びを継続するのは無理です。」

デスクトップコンピュータ299ドル、ラップトップ型499ドル、クリスマスセールが始まった。ショッピングが大好き、という人なら、正に夢のシーズンが到来したわけだ。小売店は、あの手この手を使って消費者を誘惑する。現金が無くても、クレジットカードがあれば何でも買える。気がついた時には、3000ドル以上の支払いがたまり、衝動的な買い物が、大きな頭痛へと変わっていく。さっそく、ファイナンシャルプランナーの話を聞いてみよう。

「今これを買うことで、自分は何を成し遂げようとしているのかを確認することが大切です」、と語るのはエルドリッジ・ファイナンシャル・プランニング社のジェームズ・キブラー氏だ。「考えてください。どんなに沢山のプレゼントで子どもや奥さんを喜ばせても、あなた自身が破産裁判所行きでは、単に家族をガッカリさせるだけです。」

理想的なのは、次のようなことが、既に計画されていたことだ。2004年のクリスマスが終わった後、2005年用のプレゼントリストを作成する。ここには、誰にいくらくらいの物を贈るかが、具体的に記されている。もしプレゼントの合計金額が1800ドルなら、10ヶ月かけて毎月少しずつ貯金していくわけだ。しかし、現実は中々こううまく進まない。住宅ローンに自動車ローン、それに今年はガソリンが高くなり、月々の出費が増えた。だから、どうしてもクレジットカードに手が伸びてしまう。

愛する家族や友人のために、クリスマスには無理してでも気前の良いプレゼントをする人が多い。たとえ経済的に余裕が無くても、米国社会の風習だからプレゼントをしないと気が引ける。「クレジットカードを使うな、と言っているわけではありません。ただ、これだけは守ってください。クレジットカードの支払いは、必ず2ヶ月以内に全額を済ませてください。それ以上期間を引き延ばすことは、利子を無駄に払うだけです」、とファイナンシャル・アセット・マネージメントのスコット・カハン氏は忠告する。

どちらにしても、アメリカ社会ではクレジットカードが借金を作るナンバー1の原因だ。だから、ファイナンシャルプランナーのアドバイスは下記の4つに要約される。

1、クレジットカードは財布に入れない。
2、デパートから発行されているカードでショッピングをしない。これは一般のクレジットカードより金利が高い。
3、まだ受け取っていない収入をあてにして買い物をしない。
4、自分のためにプレゼントを買わない。

どうやら、プレゼントは現金で買うのが最善のようだ。

大幅に増える空売り残高

投資者たちに笑顔が戻ってきた。なんと言っても、ナスダック市場は4年半ぶりの高値だから、ハイテク銘柄が好調だ。売り手は完全にマーケットから撤退したのだろうか。もう空売りの心配は要らないのだろうか。ニューヨーク証券取引所のデータによれば、ショートインタレストと呼ばれる空売り残高が、2ヶ月連続で記録的なレベルに膨れ上がっている。もちろん、ナスダック市場も同様な状況だ。

マーケットが順調な時、空売り残が大きく増えることは不思議な現象でない。機関投資家やミューチュアルファンドなどのように大量な株を抱えるグループは、マーケットが上がるたびに空売りを入れて、万が一の時に備える。だから空売り残の増加は、必ずしもマーケットの下落要因になるとは断定できない。

レイモンド・ジェームズ社のジェフリー・サウト氏は、空売り残上昇について、こんな見方をしている。「最近ヘッジファンドはペアトレードを積極的に行っていますが、これが空売り残高を極端に増やしている一つの理由です。ペアトレードを簡単に説明しましょう。先ず好調な株を買います。たとえばトヨタ・モーターを買ったとしましょう。次は同業種で、低迷している銘柄を空売ります。ですから、不調のゼネラル・モータースが空売られることになります。こんなわけで、単に空売り残が増えただけで、マーケットの下げを予測するのは間違いです。」

ここで、基本的な質問をしよう。今週もマーケットが強ければ、売り手はどうするだろうか。目論見が外れるのだから、とうぜん空売った株を買い戻すことになる。買い戻しでも、買いは買いだ。これで更にマーケットの上げに弾みがつき、俗に言う踏み上げが起きる。

ストラテジスト、スボッド・クマー氏も踏み上げを予想している。「極端に高い空売り残高は、マーケットにとって好材料です。言い換えれば、現在展開されているマーケットラリーは、売り手にとって予想外な動きですから、株を買い戻すしかありません。売り手が買い手に参戦する形になりますから、これは大きな買いエネルギーになります。」

今年を振り返ると、高値が来るたびに売り手たちは空売りで成功していた。しかし、11月に入ってから様子が変わってしまった。今月もそろそろ終わりだが、12月はどんな相場になるだろうか。ストック・トレーダーズ・アルマナック社の調べによれば、1950年以来12月はS&P500指数が最も成績の良い月だという。売り手は動揺しているだろうか。

会社資金の無駄使い

8.45%。これは、先日3万人の従業員削減計画を発表した、ゼネラル・モータース(GM)の株式配当利回りだ。一株に対して2ドルの配当金だから、GMは約11億ドルを株主に毎年支払っていることになる。2年以内に倒産の確率が半々と噂されるGMだけに、アナリストや自動車労働組合は、この高額な配当金中止を訴えている。

中国での売上見通しが上向きになったことで、GM株は最近少し反発を見せたが、事実はここ5ヶ月間で50%近い下げだ。この大幅な下落が配当利回りを押し上げ、ダウ銘柄ではGMの8.45%を上回る株は一つも無い。二番目に率が良いのはAT&Tの5.22%、三番目はVerizonの5.08%、4位はMerckの4.99%、そして5位はAltriaの4.34%だから、いかにGMが破格か分かっていただけると思う。

工場の閉鎖で多くの従業員が犠牲になるのだから、企業側は配当金の支払いを当然中止するべきだ、という労働組合側の主張に、リック・ワゴナー氏(最高経営責任者)はこう答えている。「配当金は、四半期毎に開かれる役員会議で、全ての関連事項を十分検討した上で決定します。」具体的な回答を避けたわけだが、バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ロン・タドロス氏はこんな見方をしている。「11億ドルにおよぶ配当金は、約半分に減らされることでしょう。そうすることを以前から期待していましたが、今となっては少し遅すぎるような気がします。」

更に、このような意見もある。モーニングスター社のジョッシュ・ピータース氏によれば、近々ミューチュアルファンドによるGM株売りがありそうだという。「ここまでのGMの収益と配当金を比較してみると、あまりにも配当金が大きくなりすぎています。これはファンドマネージャーにとって心配材料です。それに、ただでさえGMは現金が必要なのに、11億ドルも配当金に回すことは納得できません。どちらにしても、配当金目当てでGMに投資をするのは間違いです。こんな高額な配当が継続できる見込みは無いのですから。」

今ここでGM株を買うのは、金の無駄使いだろうか。デービッド・ヒーリー氏(バーナム証券)の話を聞いてみよう。「配当金の支払い中止は、もうある程度、現在の株価に織り込まれていると思います。実際にそのニュースが発表されたとしても、ここから大きく下げることは無い筈です。もちろん、経営陣が正しい方向へ動き始めた、と取る人もいるわけですから、一時的な株価上昇も考えられます。」

ということは、底値拾いを試す価値があるのだろうか。もう一度、モーニングスター社のピータース氏を引用しよう。「GMでは役員、労働組合、それに部品メーカーが優先されることはあっても、株主が優遇されることはありません。たしかに誰もが配当金の中止を予想しています。それにGMの経営陣は、ウォールストリートから全く信頼されていないことも皆承知です。しかし、実際に配当金を取り止めることは、経営陣がウォールストリートの見方が正しかったことを認めるだけです。これでは株は下がります。」

口座を襲った悪夢

この銘柄さえなければ今年の成績はプラスだった。投資家なら、一度はそんな悪魔のような株に悩まされることがあるだろう。米国の投資家たちは、いったいどんな銘柄で口座に大きな穴を開けたのだろうか。ビジネスウィークが報道した、2005年度版悪夢の銘柄リストをさっそく紹介しよう。

1、クリスピー・クリーム・ドーナツ
華麗な飛躍を見せていた株価は完全に焦げついてしまった。今年12ドル25セントでスタートを切った株価は、今日5ドル付近で低迷している。ピークは2003年半ばに記録した40ドル台だ。あれから数々の訴訟、不審な決算報告、それに売上の減少と続き、全く良いところが無い。企業再建スペシャリストを雇ってみたが、お手上げの状態だ。現在クリスピー・クリーム・ドーナツは、最高経営責任者を探している。

2、テイザー・インターナショナル
電気ショック銃で知られるテイザー、製品は違うが話はクリスピー・クリーム・ドーナツと共通点がある。毎日のように話題になったテイザーは、かつてウォールストリートの花形株だった。今日たった7ドルの株価は、11ヶ月前32ドル50セントで取引されていた。転落の原因は、安全なはずの電気ショック銃が、人の命を奪ってしまったのだ。警察でも使われていた製品だったが、ニュースがニュースだっただけに、売上は急落となった。おまけに、決算報告書にも疑わしい点が発見され、証券取引委員会からも目をつけられてしまった。

3、バイオジェン・アイデック
開発していた薬品が、患者の脳に致命的な損傷を与え、正にバイオテクノロジー銘柄の悪夢が現実化してしまった。薬の販売は即刻中止され、株価は67ドルから35ドルに暴落した。それから株は45ドルまで回復しているが、問題になった薬品に対して、まだ食品医薬品局からの認可はおりていない。

4、メルク
大手製薬会社メルク、関節炎の治療薬が心臓病の原因になってしまった。そんな副作用を知りながら販売を続けていた、との疑いが浮かび、多くの患者から告訴される結果になった。裁判がいつ終わるかは、今のところ全く見当がつかない。

5、ファニー・メイ
驚いたことに、二年の期間にわたって偽った決算報告書を発表していた。これがアメリカ政府支援の、住宅投資そして融資会社の実態なのだから呆れてしまう。証券取引委員会から、2004年度からの決算再報告を要求されているが、まだ書類は提出されていない。

さて、最後に質問しよう。今年、投資者から最も持てはやされた株は何だろうか。200ドルから400ドル台に成長したグーグル、と思われるかもしれないが、正解はアップル・コンピュータだ。iPodの成功例から分かるように、アナリストのクリス・ジョンソン氏は、今のアメリカでアップルほど革新的な会社は存在しないと言う。

ゲームファン待望のXbox360が、ついに店頭に並んだ。しかし、開店前からどの店にも長い列ができ、あっと言う間に売切れてしまった。値段は399ドル、円に換算すると約4万7千円だ。これが高いか安いかは別として、ビジネスウィークの報道によれば、マイクロソフトにかかったコストは470ドルにおよぶという。だから、1台売れると71ドルの損が出るわけだ。

なぜ損を覚悟で販売するのだろうか。狙いは何と言っても、2006年に販売が開始されるPS3が現れる前に、強敵ソニーから、出来る限りのマーケットシェアを奪うことだ。利益は2007年まで出なくても構わない。マイクロソフトの広報担当者はこう語っている。「2006年度は±0になれば良いと思っています。ゲーム機だけでは赤字ですが、ゲームソフトウェアや他の付属品を合わせることで、損益はトントンになる筈です。」

はたしてXbox360は、ソニーを倒すことができるだろうか。399ドルを払ってまで買う価値がある製品だろうか。フォーチュン誌でシニア・エディターを務める、ピーター・ルイス氏の意見を聞いてみよう。「約400ドルという高価な値段、まだ数の乏しいゲーム、それに高速インターネットも必要です。ですから、Xboxはコンピューターに詳しい人にはヒットすることでしょう。」

CNNでコンテンツ開発をするクリス・モリス氏の話を紹介しよう。「良い製品ですが、ベストではありません。大のゲームファンなら、Xbox360を買うことは、もうかなり前に決めていたことです。ゲーム通の地位を保つためには、買わないことなどありえません。それでは、一般の消費者も通に混じって、さっそく買った方が良いでしょうか。答えは簡単です。発売の初日に、店へ行く必要はありません。」

どちらにしても売り切れの続出、好調なスタートだ。ところが、せっかく手に入れたXbox360を、もう手放す人たちがいる。場所は、オンラインオークションのイーベイだ。最初は650ドルほどで売買が成立していたようだが、22日の昼前には、何と5100ドルの値がついた。これでマイクロソフトの新しい戦略が決まった。小売店をやめて、イーベイで売ればいいのだ。(笑)

1バレル100ドルは夢物語?

7ヶ月前のことだった。ゴールドマンサックスのアナリストは、1バレル105ドルのオイル価格を予想した。テロ活動、中東政治情勢、それにハリケーン、まったく不安定な状態だったから、オイルの急騰は、ほぼ間違いないかに見えた。しかし、8月の71ドルをピークに、現在オイルは58ドル台で推移している。100ドルは単なる感情的な意見だったのだろうか。

「1バレル100ドルは、短期的な予想ではありません。オイルがそこまで上昇するためには、オイル設備がテロリストによって、壊滅的な打撃を受ける必要があります」、とワコビア社のジェーソン・シェンカー氏は語る。「100ドルという価格ですが、これは極めて起きる確率の低い事件を基にたてられた、大げさな予想です」、とストラテジック・エネルギー社のマイケル・リン氏は付け加える。

思い出してほしいのは、アメリカの海底油田地域を襲った3つのハリケーンだ。カトリーナ、リタ、そしてウィルマの被害から、オイル産業はまだ完全に回復していない。重要なオイル供給ラインが閉鎖されてしまったのにもかかわらず、オイルは100ドルに達することはなかった。二桁から三桁にオイル価格が暴騰するには、三つのハリケーン以上の災害が要るわけだ。

しかし、ファースト・エネキャスト・ファイナンシャル社、アグベリ・アメコ氏の見方は変わらない。「1バレル100ドルは、いずれやって来ます。時間の問題です。次のハリケーンシーズン、あるいは大きな地政的突発事件が、オイルを100ドルに上昇させることでしょう。テロ懸念があるかぎり、オイル価格は常に100ドルへの射程圏内にあると言えます。」

リサーチアナリスト、ダン・ハッセー氏は、こんな警告をする。「オイルの供給量に注意を払わなくてはいけません。現在、全世界には1兆バレルのオイルがあります。その60%は政治不安が付きまとう中東です。ハリケーンが証明したように、アメリカのオイル供給にも弱点があります。最大の産油国はサウジ・アラビアですが、大きく伸びる需要量を考えると、あと73年でサウジのオイルは空になるでしょう。」

ここで注目されるのが次世代エネルギーだが、最後にハッセー氏の言葉を記しておこう。「オイルに代替するエネルギーが開発されたら、本当にオイルの需要ば無くなるのでしょうか。生物体燃料などが研究されていますが、オイルに比べると割高です。2年から5年後に、大きな世界的経済成長が予測されていますが、それまでに低価格な代替エネルギーは間に合わないことでしょう。」

会社再建を目指して、ゼネラルモータース(GM)は北米12の工場とサービスセンター閉鎖計画を発表した。このため、少なくとも3万人の従業員が解雇され、GMは約27%の従業員を失うことになる。解雇の結果、年間で70億ドルのコストが削減できるようだが、いつGMが黒字転換できるかの目途は立っていない。

「この計画が発表されることは、既に皆が予期していたことです。しかし、これは、あまり積極的な会社建て直し計画ではありません」、とUBS証券のアナリスト、ロブ・ヒンクリフ氏は言う。6月、GMは2万5千人の解雇を予定だったから、今日出された数字は、それを5千人ほど上回っている。だが、自動車労働組合との契約があるため、GMは2007年の9月まで従業員を解雇することができない。

報道されているように、医療保険や年金コストがGMの業績不振を作り上げたことは事実だが、何と言っても問題は肝心な車が売れない。ニューヨークを襲ったテロ事件後、GMは画期的な金利0%自動車ローンを導入した。もちろん、消費者の反応は素早く、売上は史上最高に達した。経済学者たちも、GMは米国経済を不況から救った、と称賛した。

しかし、皮肉なことに、0%自動車ローンがGMの売上低迷原因の一つになってしまった。このローンプログラムが終了すると、GMの売上は極端な減少になった。通常のセールス方法では、他社と競争できなくなってしまったのだ。「今無理して買うことはない。次の0%ローンまで待とう」、こんな形で消費者は、0%ローンに匹敵する大胆な条件を要求するようになった。

最近の例では、社員割引セールがある。6月から9月まで、だれでもGMの自動車を社員と同価格で購入することができた。当然、消費者はGMディーラーに押し寄せ、売上は一時的な大幅上昇になった。おかげで在庫一掃に成功し、セールスマンは忙しい日々が続いた。だが、社員と同様な値段で車を売っても会社の収益は伸びない。結局GMが証明できたのは、割引プログラムでは会社を再建できないということだ。

1980年、GMは米国自動車マーケットの43.8%を握り、圧倒的な強さを見せていた。今日もGMはナンバー1だが、数値は18.8%に下落している。明らかに過去25年間、GMは着実に勢力を衰退させていた。やはり首位の座は、そう簡単に譲るわけにはいかない。そこで、1週間ほど前、GMはこんな発表をした。名前はレッドタグセール。来年の1月3日まで、コルベットなど一部の車種を除いて、だれでもGMに部品を納める子会社の社員と同様な値段で、2005年と2006年型の車が購入できる。ようするに、社員割引の復活だ。

あなたは何型の投資家?

あなたはA型、それともO型、と聞かれれば、直ぐ血液型のことだと分かる。それでは次の質問。あなたはNT型、それともDT型?たぶん、何のことかサッパリ見当がつかないことだろう。正解は、個人投資家のタイプだ。キャノン・トレーディング副社長、イアン・マイヤー氏によれば、投資家には大きく分けると4つのタイプがあるという。さっそく話を聞いてみよう。

「ダイエット、と一口に言っても、種類は一つだけではありません。人それぞれ状況が違うように、全ての人に同じダイエット療法は使えません。株や先物の取引でも同様なことが言えます。あなたは短気な投資家でしょうか、それとも気長にジックリと機を待つ方でしょうか。投資日誌をつけることは大切です。それは、あなたの投資家タイプを知る重要な手がかりになるからです。タイプが分かれば、あなたに合った投資方法を見つけることができます。4つのタイプを説明しましょう。

1、NT型

この質問に正直に答えてください。あなたは本当に株式投資に向いていると思いますか。株にリスクは付き物です。必ず利益が出る保証はありません。そんなリスクを冒してまで、株を本当にやりたいですか。もし答えがイエスでも、次の質問にノーなら、あなはNT型です。あなたには、投資用の資金が十分にありますか。大きな損を出しても困らない資金がありますか。NT型の方々には、株式投資を勧めません。

2、PT型

ここで買い、と分かっていても引き金が引けない、あるいはドタバタと良さそうな銘柄なら直ぐ買ってしまう。これはPT型です。ようするに、確立した売買ルールが無いため引き金が引けない、あるいは気まぐれに銘柄から銘柄へと乗り換えてしまうのです。PT型の人はマーケットの基礎を勉強して、適切な投資方法を身につけることが先決です。あとは自分のルールに従って、長期投資を実行してください。

3、DT型

自分のルールどおりに売買をし、ある程度の成績も上がっているのですが、どうもユックリとした投資ペースに性格が合わない。長期で儲けるよりも、短い時間で利益を得たい。時間外取引に大きな興味がある。そんな方なら、デイトレードに挑戦してみることが考えられます。デイトレーダーだからといって、毎日頻繁に売買する義務はありません。基本は同じです。自分のルールに従って、チャンスのある時だけ売買するのです。

4、ST型

デイトレードはしたくない、かといってPT型のような長期投資もしたくない。そんな人はST型です。株には、数日間のサイクルで動いているものが多くあります。先ず、狙った銘柄の現在の位置を把握する必要があります。サポートラインが近いでしょうか、それともレジスタンスレベルが目前でしょうか。こんなレジスタンスとサポートを利用するだけでも、数日間のサイクルをつかむことができます。」

最後に、一つ付け加えよう。あなたがDT型だからといって、デイトレードだけに限ることはない。事実、DT型とST型を使いこなす人たちは多い。

迫る黒い金曜

来週木曜は感謝祭、家族揃ってお決まりの七面鳥を食べる。さて、ここで質問。アメリカで最も多くの七面鳥を生産している州はどこでしょうか。正解はミネソタ州。全米で毎年生産される七面鳥は約2億6300万羽だが、そのうちの18%がミネソタ産だ。2位はノースカロライナ州、3位アーカンソー州、4位ミズリー州、5位バージニア州、そして6位カリフォルニア州へと続く。

問題は感謝祭翌日の黒い金曜(ブラックフライデイ)だ。オカルト的な響きだが、この日クリスマスショッピングシーズンが正式に始まる。各小売店は朝早くから店を開け、営業は深夜まで続く。黒い金曜だけの特別なセールも用意され、クリスマスシーズンの売上を占う重要な長い一日だ。狙いをつけた商品を目指して、殺気だった女性たちが店に押しかける。(どんな男性でも、あの気迫には勝てない。)正にブラックフライデイなのだ。

小売業者は、黒い金曜にどんな企画をしているのだろうか。二つ見てみよう。先ず大手サムズ・クラブ。開店時間は、なんと早朝5時だ。メニューは発表されてないが、全ての客に無料で朝食が配られるそうだ。

格安価格で勝負する、ターゲットにも少し変わった作戦がある。タダの朝食ではないが、有名人がモーニングコールしてくれるのだ。お客さんが起きてくれないことには話にならない。前日は大いに飲んだり食べたりだから、だれだって金曜は寝坊したくなる。興味深いのは、有名人とはだれのことだろう。当然モーニングコールは録音だが、スーパーモデルのキャロリン・マーフィー、カントリーシンガーのブラッド・ペイスリー、それにセサミストリートでお馴染みの、カーミット・ザ・フロッグが予定されている。モーニングコールの申し込みは、来週水曜からターゲットのホームページでできる。

ショッピングセンター協会のデータによると、2004年、買い物客が最も多かったのはクリスマス直前の土曜日、そして二番目がブラックフライデイだ。具体的な数字で示せば、去年のブラックフライデイの週末には、1億3300万人が商店街に殺到した。はたして、来週はどうなるだろうか。小売業者の心配は、エネルギーコストが消費者に与えた影響だ。最近のガソリン値下がりは朗報だが、暖房用の灯油や天然ガスが大きく値上がっている。

さて、最後になったが、ブラックフライデイの本当の意味を記しておこう。殺気だった、喧嘩腰の買い物客が押し寄せるから黒い金曜と呼ばれるようになったわけではない。既に述べたが、感謝祭の翌日から一斉にクリスマスセールが開始される。ようするに儲かる季節が来るわけだ。儲けは店の収益になり、簡単に言えば黒字(ブラックインク)になる。これが黒い金曜の本当の意味だ。

大きな社会問題となったエンロンのおかげで、2002年、米国企業改革法が成立した。別名サーベンス・オクスリー法とも呼ばれ、エンロンのような不正会計を防ぐことを主眼に、企業が書類を改ざんしたり破棄することを重罪に定めた。そのため、企業でのビジネス倫理教育が義務付けられ、倫理産業という新分野が誕生した。AMRリサーチ社の調べによれば、今年度米国企業は、ビジネス倫理教育に約61億ドルを割り当てたという。

ゴルフを習うなら、プロに指導してもらうのが良い。空手なら、黒帯の先生から手ほどきを受けたい。なら、どんな人がビジネス倫理の講師として最適だろうか。さっそく人気講師を紹介しよう。名前はマーク・モルゼ、以前ZZZZ・ベスト・カーペット・クリーニング社で最高財務責任者を務めた。この肩書きだけなら何と言うこともないが、氏には暗い過去がある。約1億ドルを顧客と銀行から騙し取り、1980年代、モルゼ氏は5年の日々を監獄で暮らしている。

「毎年60回ほど、ビジネス倫理の講師として、企業だけでなく大学やFBIに招かれています」、とモルゼ氏は語る。講師料は少なくても500ドル、多ければ1万ドルに達する。「昔は株投資などで不正を犯すと、証券取引委員会から民事訴訟を起こされたものです。しかし今日、状況は変わり、単に訴訟だけでなく何百万何千万ドルという多額な罰金が科されます。これが、私のビジネス倫理講師業を忙しくさせたようです。」

映画をご覧になった方も多いと思うが、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」はペテン師が主人公だ。モデルになったのがフランク・アバグネール氏、正真正銘の詐欺師だった。言うまでもなく、アバグネール氏のビジネス倫理セミナーは大繁盛だ。「年間で35回くらいセミナーをしていました。しかし不正会計が多発し、今では毎年100回以上のセミナーをしています。」

前科者からビジネス倫理講師、いったいどうやって彼らは大きく変身することができたのだろうか。ウォルター・パブロ氏に聞いてみよう。「監獄から出た後、何度か入社面接をしましたが、前科のある私を雇ってくれる所はありませんでした。しかし、ある会社での面接で、こんなことを言われました。「君を雇うことはできない。だが、我が社の社員たちを教育してほしい。」これが、私のビジネス倫理教育講師業のスタートになりました。」正に失敗を生かした成功例だ。

アメリカで最もホットな不動産市場、それはアリゾナ州の州都フェニックスだ。ここ一年間で55.2%の値上がりだから、異常なブームと言うしかない。第2位はフロリダ州オーランド+44.8%、そして3位はケープ・コーラルフォート・マイヤーズ+42.5%(フロリダ州)だ。だが、アメリカの住宅価格は9月にピークを打った、そんな意見が広がり始めている。

火曜、全米不動産業協会から147の住宅市場を調査した結果が発表された。それによると、69の市場は過去12ヶ月間で10%以上の伸びを記録し、値下がりが起きたのは、たった6地域だけだった。第2四半期から第3四半期にかけて、住宅価格は平均で3.8%の上昇があったが、第1四半期から第2四半期は+10.4%だったから、明らかに値上がりスピードが鈍っている。

ここで、ナショナルシティー(不動産銀行)のエコノミスト、リチャード・ディカサー氏の話を聞いてみよう。「先週発表された、トール・ブラザース(住宅建築業)からのニュースが同業者に大きな影響を与えました。トール・ブラザースは高級住宅を専門にしていますが、2006年度の住宅需要を下方修正しました。また、住宅価格の値上がりも、今までのようなペースではなく、もっとおだやかな速度を予想しています。こんなトール・ブラザースの見方ですから、他の住宅建築業者も、やや悲観的になったようです。

新築住宅の売上状況は、既に陰りが見えます。現在売りに出されている新築住宅件数は、ついに50万件を超えました。こんなレベルに達したことは、アメリカ不動産史上初めてのことです。これが意味することは、住宅を売りに出しても、直ぐ売れないということです。実際の数字を示せば、今アメリカで新築住宅を売るには、平均で4.1ヶ月の時間が必要です。」

米国不動産は暴落するのだろうか。全米不動産業協会がメンバーの意見調査をしたところ、ほとんどのメンバーは来年度の伸び率は約5%と回答している。ひょっとしたら、+5%は希望的観測かもしれない。もう一度、ディカサー氏を引用しよう。「2005年度の第4四半期は1.7%ほどの下落になると思われます。その後は横ばい状態が2007年まで続くでしょう。」どちらにしても、二桁の成長率は過去の物となったようだ。

株投資は女性に任せろ!?

男性ファンドマネージャーと、女性ファンドマネージャーを比べたら、どちらの方が優秀だろうか。こんな質問をするのは、経済コラムニストのマシュー・リン氏だ。証券業界で活躍する女性が増えていることは確かだが、まだまだ男性が圧倒的に多い。この現状に挑戦するかのように、女性だけを顧客対象にしたファンドを開始した女性がいる。リン氏の話を続けよう。

「男女の戦いを宣戦したのは、ロンドンの女性ファンドマネージャー、ニコラ・ホーリック氏です。今回ホーリック氏は、ブラムディーン・アセット・マネージメントの一部門としてブラムディバを開設しました。ここでは、裕福な女性の資金だけが特別に運用されます。この新部門を発表した時ですが、ホーリック氏は女性ファンドマネージャーの方が、男性ファンドマネージャーより優れている。なぜなら、女性は男性のように、つまらないエゴが無い、といった意見を述べています。」

本当に女性の方が、男性より株式投資の才能があるのだろうか。リン氏は興味深いエピソードを紹介している。「メリルリンチは、千人の投資家(人数は男女半々)を使って投資実験をしたことがあります。その結果分かったことは、女性の方が、男性より間違いが少ないのです。女性は男性のように、一銘柄に集中投資することはありません。また、女性は男性より損切りが早く、頻繁に銘柄を乗り換えることもしません。男性は損切りが遅いだけではありません。利食いのタイミングにも大きな問題があります。ホームランを打つことばかり考えてしまうので、ほどほどのところで利食うことができません。ですから、折角の儲けが台無しになるだけでなく、最終的には損を出してしまうのです。」

メリルリンチ以外にも、似た統計がイギリスで発表されている。10万人の投資家から得た、今年1月から5月までの投資結果を見てみると、女性の成績は+17%、男性は11%増だった。なぜ女性の方が好結果だったのだろうか。アンスバシャー社で、投資ストラテジストを務めるティム・プライス氏は、こう説明する。「男性はあまりに自信過剰です。売買回数も多すぎます。正に攻撃的な男性ホルモンが裏目に出たわけです。」

手っ取り早い結論は、女性にファンドマネージャーの地位を譲れ、ということになるが、それではあまりにも短絡的すぎる。男性は、ファンドマネージャーをやめる必要はない。リン氏の言葉を借りれば、男性は大投資家として有名な、ウォーレン・バフェット氏を見習えばよいのだ。バフェット氏は長期投資を信条とし、頻繁な売買や銘柄の乗り換えをしない。なるほど、バフェット氏は女性的な投資方法をマスターしていたようだ。

考慮したい5項目

エドセルというフォード社の車があったのをご存知だろうか。発表されたのは1957年9月、すべての消費者に満足されることを目的に作られた車だ。そんな車だから、ありとあらゆる趣向が凝らされていたのは言うまでもない。それなら、さぞたくさん売れただろう、と思われるかもしれないが、エドセルは大失敗に終わった。そんな訳で、アメリカ人はよくこんな事を言う。「コックは一人で十分。人数が多すぎると、肝心な料理が台無しになってしまう。」

見事な空振り三振となったエドセルだが、この実例から投資者たちは学ぶ必要がある、と指摘するのはMBHコモディティのジェーク・バーンスタイン氏だ。先ず、氏は5項目の検討を勧める。

1、株や商品売買には、いったいどれくらいの情報を集めたら十分と言えるのか?
2、十分に考えた上で売買判断を下すが、何を根拠にしたら十分考えたと判定できるのか?
3、客観的に売買判断の正しさを判定をする方法はあるだろうか?
4、売買判断に費やした時間と、投資結果には何らかの関係があるのだろうか?
5、徹底した分析が好結果に結びついているだろうか?

既にお分かりのように、長時間かけて分析したからといって、投資で勝てる保証は無い。シンプルなトレードを第一とするバーンスタイン氏から、もっと話を聞いてみよう。

「トレードは簡単であること。それが最も重要なことです。決してインテリトレーダーになってはいけません。たいした時間をかけずに、即席判断が投資に好結果を生むことは多々あります。考えてみてください。長時間の分析や会議での議論を通してファンド会社は銘柄を選びますが、その全てが高リターンという結果になっているのではありません。投資用ソフトウェアが発達した今日、売買判断は迅速にできます。あとはソフトウェアの判断に従った売買を実行するだけです。ここで本当に買って大丈夫だろうか、などと躊躇してはだめです。それは買わない言い訳を探そうとしているだけです。」

誤解されると困るので、少し付け加えておこう。バーンスタイン氏は、ただ闇雲に投資用ソフトウェアを信じて売買しろ、と勧めているのではない。順番は、先ず自分なりにマーケットの勉強をする。ざっと一通り相場の知識を身に付けて、初めてソフトウェアが有効になる。広告を鵜呑みにするのではなく、できれば実際にソフトウェアを使っている人たちの話を聞いてみることも大切だ。繰り返しになるが、いきなりソフトウェアに飛びつくのではなく、先ず基礎の習得から始めよう。

自社株買戻しは買い材料?

250億ドルにおよぶ巨額な自社株買戻しを発表したのはインテルだ。これだけの金額だから史上最高、と思われるかもしれないが、ナンバー1はマイクロソフトの300億ドルになる。トムソンファイナンシャルの調べによれば、2003年、ハイテク企業による自社株買戻し総額は197億ドル、2004年は723億ドル、そして今年は607億ドルにのぼる。

「自社株買戻しは、投資者にとって本当に良いニュースでしょうか」、と疑問を投げかけるのは、ハルバート・ファイナンシャル・ダイジェストのマーク・ハルバート氏だ。「自社株買戻しを発表した企業の株は、マーケット全体の伸び率を上回る、という学術的なレポートがあります。有名なものでは、イリノイ大学のデービッド・アイケンベリー教授とジョセフ・ラコニショック教授が発表したレポートです。」

しかし、ハルバート氏は、両教授によって出されたレポートを鵜呑みすることができない。「ウォールストリートは、自社株買戻しは株価に好影響、というイリノイ大学の研究結果を信じていますが、二教授によって出されたレポートは10年以上も前の話です。ご存知のように、投資方法はあまりに多数の人たちに知れ渡ってしまうと、その効力が失われる傾向があります。」

早速ハルバート氏はアイケンベリー教授をインタビューした。教授の言葉を要約すれば、自社株買戻しニュースは、今日もほぼ10年前と同様な好影響を株価に与えている、ということだが、こんな付け加えがある。「単に自社株買戻しを発表した企業を買うだけなら、リターンはマーケット全体の成績を4年間で平均3.53%上回ります。これ以上の利益を得たいのであれば、次の二点を考慮する必要があります。

先ず、自社株買戻しが発表される前の株価推移を見てください。大きく下落しているものほど、買戻しニュースは好材料になります。第二の要素は、買戻しの理由です。会社側は、株価がいかに大きく正当評価額を下回っているかを、株主たちに納得できるように説明しなければいけません。」

それでは、膨大な額の自社株買戻しを発表したインテルは買いだろうか。買戻しニュース以前の株価はパッとしないが、最近ダウントレンドから抜け出ているから、他社と比較して格別悪いとは言えない。記者会見でも、インテルは現在の株価と正当評価額については一切触れなかった。ようするに、インテルの買戻しニュースは、特に美味しい話ではないようだ。

経験のプレゼント

そろそろクリスマスセールがやって来る。年商の半分が、この季節に集中している店もあるから、正に真剣勝負だ。何を贈ろうかと迷うものだが、子どもたちは、そろそろ今年欲しいクリスマスプレゼントのリスト作りを始めることだろう。さて、大切な人のために、一味違ったクリスマスプレゼントをお探しのあなたに、CNNMoneyはこんな提案をしている。

金に糸目はつけない、そんなあなたならエルトン・ジョンはいかかだろうか。必要経費は150万ドル(1億7700万円)。赤いグランドピアノを弾きながら、今や生きる伝説となったエルトン・ジョンが、あなたとゲストのために、たっぷりと一時間半のプライベートコンサートを開いてくれる。もちろん、赤いピアノは、あなたの物だ。

高価なギフト、といえば宝石や車だった。しかし、最近のトレンドは上記のエルトン・ジョンの例に見るような、経験や体験をプレゼントすることだ。「消費者は流行ファッションのように、直ぐ消えて無くなってしまうものに物足りなさを感じています。ですから、貴重な時間を使って、一生忘れることのない思い出が最高のプレゼントなのです」、とエクスペリエンス・デイズ社のミッシェル・ガイブ氏は言う。

ガイブ氏が経営する会社は、予算が50ドルから11万ドルまでの、経験体験ギフトを販売している。「最も人気があるのは、お互いに楽しみや喜びを分かち合うことができるものです。豪華客船でロマンチックな夕食、小型飛行機から眺める夜景、サンフランシスコでダンスパーティー、と様々ですが、変わったものでは戦闘機に乗って架空の空中戦を楽しむこともできます。」

たしかに普通のプレゼントと比べれば、経験体験ギフトは値段が一般庶民向きではない。だが、高級車や豪邸、それに別荘を持つ人たちは手に入れられるものは既に手に入れてしまった。もう一つダイヤモンドが増えても、そんなことは全く嬉しくない。だから、たとえ5百万ドルかかっても、宇宙旅行に申し込む人たちがいるわけだ。

「経験体験ギフトは、これから更にエスカレートしていくことでしょう」、というロイス・ハフ氏(小売コンサルタント)の言葉どおりになることだろう。安売りで知られるサムズ・クラブでさえ、今年はこんなギフトを始めた。デイトナ500ツアーなのだが、単にフェンスの向こうからレースを眺めるわけではない。費用は4万ドル(大人4人)で、特別な許可証が付いている。だからピットやガレージへの出入りが自由にでき、レーサーたちにも会えるわけだ。物を贈るのはもう古い、そんな時代が来たようだ。

「ウォールストリートは単なるステージにすぎません」、と言うのは経済コラムニストのポール・ファーレル氏だ。「証券会社、ミューチュアルファンド、アナリスト、投資ストラテジスト、出演者は多彩です。皆それぞれ脚本に従って役を演じますが、だれ一人として自分が役者であることを認めようとしません。けっきょく、皆、何も分かっていないのです。」

更に氏はこう付け加える。「投資者も、専門家たちの意見を分かったふりをしているだけです。米国経済、株式市場のことなど全く理解できていないのですが、いつも微笑みを浮かべて、自分たちをごまかしています。既にマネー誌が取り上げましたが、今こそ経済学でノーベル賞を受賞した、ダニエル・カーネマン氏の言葉を思い出すべきです。」さっそく投資に役立つ、カーネマン氏が指摘する5つの事項を紹介しよう。

1、全てのデータを信用するな。
正確に言うと、データそのものに問題は無い。悪いのは、私たちのデータ解釈方法だ。たとえば有名ファンドマネージャー、ビル・グロス氏の言葉がウォールストリートジャーナルに引用されていたとしよう。それを読んだあなたは、グロス氏の意見をどう取るだろうか。氏の言うことだから間違いない、と簡単に鵜呑みしてしまわないだろうか。

2、いつも冷静に。
証券会社の作戦にはまってはいけない。思い出して欲しいのは、90年代のインターネット株ブームだ。多数の投資家が、いい加減なレポートに熱狂してしまい、ドット・コム銘柄は常識を超える暴騰になった。冷静な頭で判断すれば、収益ゼロの会社を狂ったように買うことはなかったはずだ。

3、投資アドバイザーの意見を頼るな。
テレビに出ているからといって、アドバイザーを信じる必要はない。彼らの興味は購読者を増やすことだから、アドバイザーたちの言うことはセールストークだ。

4、口座残高ばかりを気にするな。
残高の動きだけを見ていると、感情的な投資家になってしまう。上記2でも述べたが、大切なのは冷静さだ。

5、総合的な立場で投資しよう。
一つの銘柄やセクターだけに集中投資するのではなく、バランスのとれた投資を心がけよう。これなら一つの銘柄がダメでも、他セクター銘柄が損を補ってくれる。

ドル高は終わった!?

二桁勝利を目標にするピッチャーが多い。9勝と10勝の差はたった1ゲームだが、桁数が一つ増えただけで、10勝の方がかなり重々しく見える。投資の世界でも、9%の利益より10%増の方がずっと優秀に映る。ドル高が話題になっているが、今年ドルは円に対して約14%、そしてユーロに対しては13%ほど上がっている。

ドル高を作り上げた一番の原因は短期金利だ。容赦ない連銀による金利引き上げで、現行の米国短期金利は4%ちょうどになった。日本の金利は0.1%、そして欧州ユーロ圏内の金利は2%だから、いかに米国金利が突出しているか分かっていただけると思う。

しかし、このドル高パーティーも終わりに近い、と警告する為替アナリストが出始めている。2003年6月以来、欧州中央銀行は金利を据え置いてきたが、いよいよ金利引き上げに踏み切る可能性があるようだ。これが現実となれば、少なくとも一時的なユーロ買いが起き、ドルの上伸に圧力をかけることができる。

広がる米国金利と海外金利の差が、ドルをベースにした投資を魅力的なものに変えた。これがドル人気の理由だが、ほとんどのアナリストは12月と1月にも連銀による金利引き上げを予測している。一方、ロイターからは、次のような報道がある。60人のエコノミストにインタビューした結果、ほぼ全員が来年の6月までに欧州中央銀行による金利引き上げを予想している。また、MGファイナンシャルグループのアシラフ・ライディ氏は、「たぶん75%から80%の確率で、中央銀行は12月に金利を上げることでしょう」、と述べている。

たとえヨーロッパが金利を12月に引き上げても、一気に米国金利に追いつくことはない。ドル高は更に進むのだろうか。為替アナリスト、デービッド・ソリン氏を引用しよう。「金利引き上げ政策は最終段階に入っていますから、あと1ヶ月から2ヶ月でドルの上昇サイクルは終わると思います。」もしドル安が訪れると、アメリカへの輸入品が値上がる。ドル高の逆になるのだから、ユーロや円をベースにした投資が有利になる。ということは、来年の米国株式市場は低迷する可能性が多分にあるわけだ。

推定されるアメリカ国内での死亡者数は190万人。これが、鳥インフルエンザの最悪シナリオだ。既に11月1日、ブッシュ大統領は鳥インフルエンザ対策として、71億ドルを投入する計画があることを発表している。しかし、正直なところアメリカ国民には、実感として鳥インフルエンザの怖さが分からない。本当に、この病気はそれほど深刻なのだろうか。経済ジャーナリスト、ジョン・カリー氏が指摘する、いくつかの重要な点を紹介しよう。

普通のインフルエンザ予防接種は、鳥インフルエンザに効きますか?

「一般的なインフルエンザと、鳥インフルエンザは根本的に違いますから、普通の予防接種では効き目がありません。鳥インフルエンザのような病気は、100年に一度といった頻度で起きる希な病気です。1918年の鳥インフルエンザは、米国内に67万5000人の死亡者を出しました。全世界では、5000万人の死亡者です。」

鳥インフルエンザを警戒する必要が、本当にあるのですか?

「1918年の鳥インフルエンザは、ウイルスが鳥から人間に突然感染することで蔓延しました。現在アジアは、鳥インフルエンザの危機に直面していますが、このウイルスは鶏やアヒルだけでなく、渡り鳥にも感染します。既に感染した渡り鳥がヨーロッパで発見されていますから、アメリカに来るのも時間の問題です。」

鳥インフルエンザはどのように人へ感染するのですか?

「ウイルスに感染した鳥に接触しない限り、人にうつることはありません。ですから、今でもアジアへの旅行が禁じられていないわけです。」

でも、念のためにアジアへの旅行禁止、そしてアジアからの旅行者の米国入国を拒否するべきではないでしょうか?

「現時点で、そのような措置は全く必要ありません。重要なことは鳥との接触を避けることで、人の出入国の規制ではありません。」

もしアジアへ行った場合、卵を食べても大丈夫ですか?

「生はダメです。料理された卵なら大丈夫です。」

鳥インフルエンザは、どうやら感染しにくい病気のようですね。やはり、あまり警戒する必要は無いのですね?

「1918年の鳥インフルエンザは、感染した人たちの約2.5%から5%が死にましたが、感染者の50%が死亡した前例もあります。今のところ感染は鳥から人ですが、何らかの変異が生じて人から人への感染が将来起きる可能性もあります。」

ハリケーンと違い、鳥インフルエンザが工場やオフィスビルを破壊することはない。しかし、病気が蔓延すれば、半分近い従業員が欠勤することは十分有りえる。最高経営責任者、社長、そして会長が同時に倒れたら、その会社の指揮はだれがとるのだろうか。経営陣が大丈夫でも、製品配達担当者が皆休んでしまうことだって考えられる。万が一のために、あなたの会社は準備が整っているだろうか。

分かりきった理由トップ3

コールオプション、プットオプションという言葉を耳にされた方は多いと思う。個別銘柄オプション、インデックスオプションなどの種類があるが、ルールは簡単だ。上がると思えばコールオプションを買い、下がると思うならプットオプションを買う。人気銘柄のヤフーで説明しよう。

金曜、ヤフーは37ドル87セントで取引が終了した。もし、ヤフーが40ドルに行く、と確信するならコールオプションの40ドル物を買う。ただ、時間制限があるから、11月限にするか12月限にするかを決めなければならない。当然、時間に余裕があった方が良いから、ここでは12月限を買うことにしよう。

ヤフーの12月限40ドル物は、1枚(1コントラクト)60ドルで金曜の取引を終えた。1枚=100株だから、たった60ドルの資金でヤフー100株分をコントロールできるわけだ。株が上がれば、当然コールオプションの値段も上がる。12月限を買ったからといって、何も制限時間が来るまで持っている必要はない。株と同様に、値上がれば利食い、ダメなら損切るだけだ。

一見だれでも勝てそうなオプションだが、現実は厳しい。統計によれば、90%の人たちが損を出しているという。何故これほど成績が悪いのだろうか。ある証券会社が、「あなたは何故オプションでロスを出したと思いますか」、という意見調査をした。10以上の主な理由があげられていたが、上位の3つを紹介しよう。

1、すぐ損切りが出来ず、小さな損を大きくしてしまった。
なぜ素早い損切りが出来なかったのだろうか。ある投資家は、正直にこう語っている。「あらかじめ設定しておいた損切りの値段が来たのですが、オプションを処分することができませんでした。損切ることは、自分が間違っていたことを認めることであり、私はプライドを傷つけたくなかったのです。」

2、難平買い。
損切りをするかわりに行きつくのが、この下がったところでの買い増しだ。たしかに平均価格を下げることになるが、結果はかんばしくないようだ。

3、投資アドバイザーやニュースレター情報に頼ってしまった。
オプション歴1年半のFさんに説明してもらおう。「最初は少し投資の本などを読んで勉強したのですが、中々そう簡単ではないことが分かりました。ですから、この世界で成功している人たちの意見を聞いて、手っ取り早く儲けようと思ったのです。6種類のニュースレターを購読してますが、まだうまく行きません。」

成功している人たちは損切りが素早く、決して難平買いをせず、そして自己判断で投資をしている。こんなことを書くと、「当たり前なことを言うな」、と怒鳴られそうだが、株の世界では9割近い人たちが、肝心なところで当たり前なことができなくなってしまうようだ。

ポッドキャスティング

iPodの登場で、ポッドキャスティングに人気が集まっている。iPodは音声録音をいっそう簡単にし、だれでも楽に音声をホームページにのせることができるようになった。その結果、オンラインのラジオショーが身近になり、ポッドキャスティングが誕生したわけだ。ポッドキャスティングは、単に音楽だけではない。話題はスポーツ、釣り、日曜大工、とにかく豊富だ。

これだけ人気のポッドキャスティングだから、これをビジネスに応用できないだろうか。当然のことながら、既に企業はポッドキャスティングの有効な使い方を研究している。アダム・カリー、という名前には馴染みがないと思うが、カリー氏はポッドキャスティングのパイオニアだ。今月、氏はポッドキャストネットワークを開始し、30から50の番組を計画している。シリコンバレーにあるベンチャーキャピタル会社が、約980万ドルの資金をポッドキャストネットワークに投資したようだが、「絶好なビジネスチャンスだ」、と大きな期待をよせている。

ポッドキャスターの収入はスポンサーからのコマーシャルだ。ほとんどの場合、番組の開始前に、15秒から30秒のコマーシャルを流す。コマーシャル料金は、一月数千ドルが相場になるが、4万5000ドルといった高額な料金も現れている。ビジネスウィークの報道によれば、ボルボ社はウェブログインクのオートブログに、6万ドルのコマーシャル料金支払いに同意している。

サンタモニカのラジオ局、KCRWは従来のラジオ番組と平行して、ポッドキャスティングも開始した。さっそく、南カリフォルニアのレクサスディーラーからコマーシャルが依頼され、ポッドキャスティングは順調なスタートを切った。放送を始めた最初の週は、約2万件ほどダウンロードされたようだが、このダウンロード数は、あっというまに10万以上に膨れ上がってしまった。そのためラジオ局は、コマーシャル料金を1000回のダウンロードに対して25ドルへの変更を考慮している。

スポンサーの広告に頼らないポッドキャスティングも存在する。This Week In Techは20万の聴取者を持つポッドキャスターだが、毎月2ドルの寄付を呼びかけ、現在月々1万ドルの収入を上げている。まだまだ若いポッドキャスティング、はたしてこれからどう変貌していくのだろうか。

ダウ指数の1万ドル割れを予測するのは、JPモルガンのアブヒジット・チャクラボーティ氏だ。更に氏は、2006年度の企業収益成長率は0、という見方も発表している。年末ラリーを期待する投資家には嫌な意見だが、上昇の続く金利が、いよいよ企業利益を低下させるようだ。こんな見解のチャクラボーティ氏だから、とうぜん株を避けてマネーマーケットファンドのような現金ポジションを勧めている。

成長率0%には賛成しないが、アナリストのバリー・ハイマン氏も、2006年度の企業収益低下を予想している。「物価と金利上昇が悪影響なのは言うまでもありませんが、どちらにしても、2006年は企業の利益が下がります。過去3年間を振り返ってみると分かりますが、企業収益は予想以上に好調でした。ですから、このような伸びを4年連続で期待するのは無理です。」

トムソン・ファイナンシャルのデービッド・ドロップシー氏によれば、2002年の企業収益成長率が0.1%だった。これと同じことが来年再現されるためには、かなり破滅的なシナリオが必要になるという。ドロップシー氏を引用しよう。「成長率0が現実化するには、超異常な物価高、失業率の大幅増加、それに急激な金利引き上げが必要です。現状を見る限り、まずそのような事態が発生することは考えられません。」

連銀は12回連続の金利引き上げを実施したわけだが、この金利上昇がドル高という状況を作りあげている。ドルが上がれば、米国からの輸出品が高くなり魅力が落ちる。そうなれば売上の減少が起き、ただでさえ膨大な貿易赤字を抱える米国経済にマイナスだ。もちろん、米国内企業のリストラを更に進めて、労働賃金の安い国外での製造量を大幅に増やす対抗手段もあるが、これも結果的には国内企業収益を減らしてしまう。

暗い見通しだが、株はやめて本当に現金化した方が良いのだろうか。最後に、経済ジャーナリスト、ジム・ジューバック氏の見方を紹介しよう。「アメリカではなく、国外に目を向けることが大切です。ドル高が海外企業に有利な環境を生み出しています。もし連銀の金利引き上げが終わると、ドルの下降が始まるわけですが、そのような状況ではドルではなく、外貨をベースにした投資が有効です。ですから現時点では、日本株に投資をするファンドが最適と思われます。」

希少価値

株式市場は、スーパーマーケットのレジにできる列のようなものだ、とファイナンシャルタイムス紙のティム・ハートフォード氏は言う。「だれでも一番短い列に並びたい、と思うものですが、将来性のある株を選ぶのも、それに似ています。馬鹿らしい、と言われるかもしれませんが、そう簡単にできることではありません。この列が一番短い、と自分が発見するのと同時に、他の人たちも一斉にその列に殺到します。ですから、あっというまに一番短い列が、一番長い列になってしまうわけです。」

いつも一番短い列を選ぶためには、レジにできる列の習性などを調べる必要がある。例えば、あの人は仕事がテキパキと速い。だから列も直ぐ短くなる。この時間帯は、真ん中の列が一番遅い。そのようなことが分かっていれば、待ち時間の短い列が選びやすくなることだろう。それでは、ハートフォード氏に、銘柄の選び方について語ってもらおう。

「株を適切に選ぶためには、それなりに準備や勉強をしなくてはいけません。そのような時間は無い、と言う方にはインデックスファンドをお奨めします。繰り返しますが、マーケットで利益を上げるためには宿題を怠ってはダメです。最初に指摘したいことは、ファンドマネージャーやアナリストを頼ってはいけません。統計に表れているように、ほとんどのファンドマネージャーはインデックスファンド以上の成績をあげることができません。

この会社を買ってみよう、と思ったら「希少価値」という言葉を思い出してください。この会社には希少価値があるだろうか。この企業には、ライバル会社が真似できない何かを持っているだろうか。もし、投資者たちが、真剣にこれらの質問に答えていたなら、あのようなインターネット株バブルは起きなかったことでしょう。自宅の物置が本拠地になっているような会社では長続きしません。そんな会社なら、だれにでも作れます。」

希少価値のある会社として、ハートフォード氏は次のような例を挙げている。「イーベイは希な企業です。ネット上でオークションを成立させるには、買い手と売り手を同時に引き込む必要があります。これは簡単にできることではありません。他にはヤフー、アマゾン・ドット・コム、それにグーグルです。どの会社も、他社がた易く真似できません。」

最後に、人気商品iPodでお馴染みのアップルについて氏に聞いてみよう。「売る時期だと思います。企業収益は既に去年の4倍にもなっています。このような伸びを継続するのは無理です。たしかにiPodは希少価値のある商品ですが、確実に競争相手が接近しています。ソニーのWalkmanと同じです。永久に市場を独占することはできません。もう一つ付け加えれば、アップルの株価収益率は35倍に達しています。これは、とても割高なレベルです。」

インフレの心配は要らない!?

もうこれ以上金利を上げないでほしい、と8割の米国消費者がギャラップ世論調査に答えている。残念なことに、連銀の金利政策には、まだ何の変化も見られない。新任の連邦準備理事会議長が就任するまで、あと二回の連邦公開市場委員会がある。だからグリーンスパン氏は、短期金利を4.5%まで引き上げることができるわけだ。

火曜の利上げ後に発表された声明書には、累積的に上昇するエネルギーと他のコストは、更なる物価上昇の原因になることが考えられる、という一文がある。こんな心配が消えるまで、連銀は金利を上げ続けることになるが、ここで最近目立ち始めた物価の動きを見てみよう。

エネルギー価格と言えば、筆頭に来るのがオイルとガソリンだ。アメリカエネルギー情報局のデータによれば、8月、1バレルあたり70ドル85セントまで急騰したオイルは、現在59ドル85セントで取引されている。9月、1ガロン3ドル7セントだったガソリンも、今日は2ドル48セントまで下落している。ビジネスウィーク誌の調べによれば、ほとんどのエコノミストは、オイル価格が50ドル台に落ち着くことを予想しているようだ。

住宅バブルと騒がれてから、かなりの月日が経つ米国不動産マーケットだが、いよいよ冷え込みが始まった。9月に販売された新築住宅の中間価格は21万5700ドル、と発表され、これは8月の22万8800ドルを下回った。また、売りに出されている新築住宅数が史上最高の49万3000件に達し、需要の低下が表れている。「中古住宅の在庫量も増加しています。ここ3ヶ月間ですが、多くの住宅は値下げをしないと売ることができません。住宅市場の下降が始まったようです」、とアナリストのディーン・ベイカー氏は言う。

もうインフレを心配する必要はなくなったのだろうか。「まだ安心は早すぎます。たとえばガソリンですが、これは株と同じです。どんなに強い株でも、休みなしで上がることはありません。必ず利食いによる、一時的な下げがやって来ます。再上昇は、売り物が完全に終わってからです」、と経済ジャーナリストのジム・ロジャース氏は説明する。

たしかに、去年と比べればオイルもガソリンも値上がっている。12回連続の金利引き上げで、クレジットカードの利子は18%を超えた。これでは肝心なクリスマスセールが危ない。そんなわけで、大手小売のウォルマートは、大幅な値下げを発表した。HPパビリオン・ノートブック・コンピュータが398ドル、HPフォトスマート・デジタルカメラが98ドル88セント、それにコーヒーメーカーが4ドル24セントなどだ。当然、他の小売店も値下げに踏み切ることだろう。有難い、今年のクリスマスプレゼントには、あまり金を使わずに済みそうだ。

一大転換期に立つデル

無敵のデル、いつも単独首位だったデル、それは昔の話になろうとしている。世界最大のPCメーカーとして、全力疾走を続けたデル、いよいよ燃料補給が必要になったようだ。月曜のマーケット終了後、デルは投資者が嫌うニュースを発表した。第3四半期の決算は、売上そして収益の両方が予想以下の結果になる、という下方修正だ。

「デルに限らず、これだけ大きな企業が高成長を続けるのは難しいことです。デルの成長率低下は、当然の成り行きだと思います」、とTCWグループでファンドマネージャーを務めるジェーソン・マックスウェル氏は言う。氏の運用するファンドは2900万株のデルを保有しているが、デルをずっと監視し続けてきただけに、今回の下方修正ニュースには驚いていない。重要なことは、これからのデルの伸び率が、S&P500指数の上昇率を上回ることができるかだ。

最近のデル経営姿勢を疑問視するアナリストは多い。収益目標を達成するために、大幅なコスト削減を実施し、それが顧客サポートサービスや製品品質の低下に結びついている。「企業成功の鍵は、顧客を常に満足させることです。優先させるものを間違えると、問題は雪ダルマ式に増えていくことでしょう」、とマックスウェル氏は付け加える。

10月10日のビジネスウィークには、こんな報道がされている。「全ての顧客を満足させることは不可能だが、デルのカスタマーサポートに不満を訴える消費者が増加している。2004年、商事改善協会に届け出のあったデルに関する苦情は前年度を23%上回った。今年も苦情が増え、現時点で2004年度を5%ほど超えている。また、ミシガン大学の調べによると、デルの顧客満足度指数は業界平均の74にあたり、これは2004年度から6.3%下がっている。(アップルコンピュータの顧客満足度は81で業界のトップ)」

品質の低下は明確に表れている。二つのデスクトップ機種、GX270とGX280のキャパシタに欠陥が見つかり、これが第3四半期の決算に3億ドルの被害を与えている。欠陥キャパシタの搭載されたコンピュータが、実際にどれくらい販売されたかは分からないが、作業中に突然、電源が切れてしまうというから大変だ。キャパシタの他にも、不要になった在庫部品が1億5000万ドルの損になるらしい。辞めた重役が、ビジネスウィークのインタビューで、こう語った。「デルは芸を一つだけできる子馬のようなものです。今のデルには革新的なアイディアはありません。」

ヘッジファンドの心配事

期待の11月ラリーは展開されるだろうか。行方の鍵を握るイベントが、今週二つある。筆頭は火曜のFOMC(連邦公開市場委員会)だ。既に11回連続の金利引き上げだが、今回も0.25ポイントの利上げが予想されている。注目は、金利引き上げ政策が終わりに近いかどうかのヒントが得られるかだ。金曜日は、アメリカ経済のバロメーター、雇用統計が発表される。非農業部門新規就業者は+12万5000人、失業率は前回と同様の5.1%、そして時給は+0.2%が見込まれている。

11月のマーケットラリーを望んでいるのは、個人投資家だけではない。ニューヨークタイムス紙の報道によれば、いつも好成績で有名なヘッジファンドが、10月、大きな損を出したようだ。オイル株に代表されるエネルギー銘柄が主な投資対象だったようだが、このセクターは予想以上の下げになってしまった。利益を確定するために、多数のヘッジファンドがオイル銘柄を売ったようだから、これが自分たちの首を絞める一因になったわけだ。

ヘッジファンドに投資する目的は、リスクを回避(ヘッジ)して、高い利益を得ることにある。だから、ヘッジファンドマネージャーは、マーケットの動きに関係なく安定した好成績を上げなければならない。しかし、10月にヘッジファンドのしたことはリスクの回避ではなく、エネルギーセクターの下落に飲み込まれてしまった。「どのファンドも買う銘柄が同じ物ばかりです。優秀な競争相手に便乗して儲けようとするのですが、少しの下げでマネージャーたちは、簡単に動転してしまいます」、とロバート・チャップマン氏(ベテランファンドマネージャー)は言う。

大手ファンドは5%から10%の穴を開けたらしいが、これが一つの心配の種になっている。ほとんどのヘッジファンドは、解約は年に一度しかできない。時期は年末が一般的で、申し込みの受付は11月から始まる。ヘッジファンドのリーダー、と呼ばれるアティカス・キャピタル(80億ドル運用)でさえ、10月には9%の資金を失っている。もし、各ファンドに解約が殺到なら、期待の年末ラリーに水が注されてしまう。

10月、特に成績が悪かったのは、アクティビストファンドと呼ばれる種類のヘッジファンドだ。これらのファンドは投資対象になっている企業の経営陣に積極的に働きかけ、会社資産の売却などを奨励して株価上昇を狙う。上記したアティカス・キャピタルもアクティビストファンドの一つであり、銅生産会社、フェルプス・ダッジへの集中投資が裏目に出てしまった。約4%の株を買い占めたらしいが、フェルプス・ダッジは、10月、10%の大幅下落だ。

ヘッジファンドも投資だから浮き沈みがある。ヘッジ・ファンド・リサーチ社のデータによれば、10月の成績を含めても、ヘッジファンドは平均+7.4%の利益を出しているという。もちろん、普通のミューチュアルファンドのような規制がないヘッジファンドは、投資結果を公表するところが少ない。最後に、ヘッジファンドコンサルタント、サンドラ・マンツキー氏の言葉を記しておこう。「ヘッジファンドに投資するなら、今はとても良いタイミングです。エネルギー銘柄には、大きな伸びが期待できます。」

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