邪推

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原子力空母「ジョージ・ワシントン」は21日に、米海軍横須賀基地を離れた。

理由は放射性物質から退避するため。

4月上旬ごろまで同基地内で定期整備を続ける予定になっていた。

横須賀って、東京より南じゃなかったのか?

 

地図で確認するとやはり、そうだった。

yokosuka.jpg

赤いAのマークが横須賀の位置。

福島からこれだけの距離があるのに、なぜ空母は横須賀基地を離れたのか?

東京都内での放射能濃度は「直ちに健康に影響を及ぼすものではない」はずなのにだ。

 

何か理由があるはずだと、冷静に考えてみると、我々が毎日目にしている漏出放射能の数値はヨウソとセシウムについてのもの。

だが、3号炉はMOXプルトニウム燃料を使った、プリサーマルタイプなのだ。

調べてみると、3号炉で使われているMOX燃料を入れた原子炉と、ウランだけの1号・2号・4号の原子炉を運転サイクルの最後の時点で存在するアクチニドの量で比較すると、MOX炉心の方が、5倍から22倍近く多くなるという。

プルサーマル発電では、冷却機能が失われたときの危険性が既存のウラン燃料による発電所よりも高いと言われているが、その理由は、MOXで使われているプルトニウムはウランより融点が低く燃料溶解に至りやすく、臨界に達しやすいからだという。

  

プルトニウムは微量でも肺ガンを起こす猛毒物質。

プルトニウムの放射能はウランに比べて桁違いに高く、プルトニウムの比放射能(単位重量あたりの放射能の強さ)はウランの約10万倍も強いのだ。

大気中のプルトニウムの濃度は、ヨウ素やセシウムより少なくても、その危険性が遙かに高いであろうことは、誰が考えてもわかるはず。

 

空母が何故須賀基地を離れたのか?

その理由は、ここにあるのではないだろうか?

3号機への総放水量が、自衛隊の実施分と合わせ3700トンを超える量なのは?

この危険度を認識しているからではないのか?

 

さらにまずいのは半減期が長いという点だ。 

原子炉内で自然にできてしまう人工の放射性物質を比べると・・

ヨウ素131の半減期は8日間でセシウム137は30年。コバルト60は5.3年。

だがプルトニウムは半減期が何と二万四千年!

そのため使用済み核燃料(プルトニウム239)の保管期間は5万年と定められているというのだ。

 

つまり、我々にとっては永久といっていい期間、放射能を出し続ける厄介な代物なのだが、そのため名前に「プルートー」つまり「地獄の王」という名前がつけられている。

炉心損傷を伴う重大事故が発生して損傷すると、MOX燃料は、ウラン燃料と同じように、細かなエアゾールの形で微粒子として大気に拡散されるのだ。

事故が発生した場合には従来の軽水炉よりプルトニウム・アメリシウム・キュリウムなどの超ウラン元素の放出量が多くなり、被ばく線量が大きくなると予測されるという。

プルトニウムの毒性はアルファ線によるもので、吸いこんだ場合に、大きな影響が出るというのだ。

ガーン!

 

何故こんなに危ないものを作るのか?

各地で稼働している原発では、使用ずみ燃料貯蔵施設が満杯になってきている。

2004年3月末の時点で、全国の使用ずみ燃料貯蔵量の合計は約1万1千トン(保存可能全容量は約1万7千トン)

この調子だと数年で満杯になるため、原発で一度燃やした使用済核燃料から、プルトニウムを取り出し燃料として使い、捨て場のない使用済み核燃料を少しでも減らそうというわけだ。

だがこれは石油ストーブの軽油に、ガソリンを少し混ぜて使うようなもので、非常に危険なのだ。

 

青森県六ヶ所村にある再処理工場というのは、このプルトニウムを生産する大規模な再処理工場。

だが容量は3千トンしかないうえ、2005年12月までの搬入量は1524トンで、このプールの容量はあと半分しか残っていないのだ。

つまり溢れ出た使用済み燃料を送り込む場所は現在のところ六ヶ所村再処理工場の受け入れ貯蔵プールだけなのだ。

 

再処理工場を運転すると余剰プルトニウムの量がさらに増える。

国際公約で、プルトニウムを消化しないと、再処理工場は運転できず、そうすると、再処理工場の受け入れ貯蔵プールが使えず、各地の原発の燃料貯蔵施設が満杯となり、原発から出てくる使用済み燃料の行き場がなくなり、原発が止まることになってしまう。

さらに無計画に海外委託の再処理を進めたため、すでにプルトニウムを大量にため込んでしまっている。

だが六ヶ所再処理工場は運転しなければならず、そのためにプルサーマルが必要だという、本末転倒状態になっているのだ。

余って困るのなら、現状以上作らないようにするのが筋というもの。

だが日本は、トイレはないのに飲み食いを続けていたわけだ。

  

六ヶ所工場を動かしても最大で年間800トンの使用済み燃料しか処理できない。

全国で毎年発生する使用済み燃料の量は約1000トン。

いずれにしても、余った部分を貯蔵するためには、原発サイト内かサイト外に「中間貯蔵」設備を設けるしかないのだ。

今回はその貯蔵プールの冷却水が漏れて、温度が上がるため、連日放水しているのはみなさんご存じの通り。

プルトニウムを燃料とする高速増殖炉もんじゅは、1995年に大事故を起こしいまだに停止中。

日本より遙かに早くプルトニウムを使い始めたヨーロッパでは、再処理工場周辺にまき散らされたプルトニウムなどの放射能が、鳥や魚、植物、そして人体からも確認されているのだという。

このようにプルトニウムを使った原発では、急性死や潜在的ガン死が、ウランだけを使った炉で同じ事故が起きた場合と比べ、ずっと大きくなる可能性があるのだ。

 

これだけ危険なMOXを使ったプルサーマルタイプの原子炉を使うにあたって、県や国の規制当局はどうしてこの計画を正当化して、GOサインを出したのか?

その答えは、原子力産業会議が発行しているAtoms in Japanという雑誌の中の「通産省と科学技術庁、福島でのMOX使用を説明」という記事にあった。

MOX使用に関する公の会合に出席した市民が、「MOXを燃やす炉での事故は、通常の炉での事故の4倍悪いものになるというのは本当ですか」と質問したのだ。

 

その答えは・・

「事故が大規模の被害を招くのは、燃料が発電所の外に放出された場合だけだ。

MOXの燃料は焼結されているから、粉状になってサイトの外に運ばれていくというのは、実質的にあり得ない。

だから、事故の際のMOX燃料の安全性は、ウラン燃料の場合と同じと考えられる。」

つまり、県や国の規制当局は「事故は絶対に起こらないのだから、プルトニウムのサイト外への放出に至る事故の影響について評価する必要はない」と判断。

 

プルトニウムを使ったプルサーマル型原発の安全性の問題は、こうした経緯で無視されてきたのだった。

オーマイガッ!

 

コメント(5)

この所全くトレードとは無縁の生活ですが、そろそろ復活しようと思います。Coolはいつも参考になります。でも一点だけ気になったのでコメントを。まあ記事を面白く読んでもらうためで、ご存知だとは思いますが、プルトニウムに「プルートー」の名前がついたのは、その毒性のせいではありません。プルトニウムと元素記号ではその前の2つは非常にユニークな名前の由来を持っています。2つ前のウラン(ウラニウム)は当時発見された惑星天王星(ウラヌス)にちなんで命名されました。次いで2つの惑星が発見され、それぞれ海王星(ネプチューン)、冥王星(プルートー)と名づけられ、ウランの次の元素には、ネプツニウム、その次の元素にはプルトニウムという名前が付いたのです。つまり、ウランの名前が決まった時点で、次の2つの超ウラン元素の名前は予約状態にあったわけで、プルトニウムがその名前の通りの猛毒元素なのは偶然なのです。

プルトニウムが発生する確率は限りなく低いと思われます。その理由は、プルトニウムの沸点がヨウ素やセシウムに比べて圧倒的に高いからです。プルトニウムの沸点は3230℃ですが、現在運転中の原子炉内の温度は300〜450℃です(燃料棒の中心は1800℃程度)。

tohokudai: さん

なるほど、3230度が沸点ならまずは発生しないということですね。

少し安心しました。

ありがとうございます。

>なるほど、3230度が沸点ならまずは
>発生しないということですね。

プルトニウムが検出されたみたいですね。。。

プルトニウムが漏れていることは重大なことです。問題は気体となって遠くに運ばれるかどうかですが、前回記載した通りプルトニウムの沸点は高いため、気体にはならないです。但し漏れている範囲にもよりますが、原発周辺の土地は汚染される可能性がありますね。

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