レクサスの勘違い

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東灘に「あんかけうどん」がメインの饂飩屋があるのだが、道路を挟んだ真向かいに、レクサスの東住吉店が位置している。

窓際に座るたびに、イヤでもレクサスの店が目に入るのだが、店内に客の姿を見ることはほとんどない。

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大丈夫なのか?(笑)

 

と余計なお世話を焼きたくなるわけだが、クルマ好きの間で、レクサス車のハナシが話題に登ることはまずない。

なぜか?
 

アメリカでレクサスが成功したのは、日本のハイテク技術による静粛性と振動の少なさを売り物にした高品質を、ドイツ勢より割安で売ったからだ。

さらにアメリカでレクサスを買う層というのは、当時ウオール街の金融マンなどのユダヤ系が多かった。

彼らは本質的にドイツ車は好まない。なぜなら旧ドイツ軍に全面協力したメルセデスやBMWには拒否反応を示すからだ。

 

だからといって、ジャガーのようなイギリスの貴族趣味には興味を持たない連中なのだ。

こうしたニッチな隙間へ、時代という追い風を背に受け、レクサスは運良く「ハマッた」のだ。

機能と価格のバランスの合理的判断という価値観が、非常に高いアメリカだからこそ売れ、成功したのだった。

 

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その余勢を駆って、日本でもレクサスブランドを始めたわけだが、何よりもタマがないのが痛かった。

トヨタで売っている車種のバッジをレクサスに付け替えただけで、高く売ると言うやり方を見て、クルマ好きはそっぽを向いてしまった。

最近でこそ、トヨタにはないレクサスLS600という最高ブランドの車種を出すようになったが、時すでに遅し。

 

セルシオや法人の客が流れただけで、ドイツ御三家のシェアを崩すことはできなかったのだ。

エッジの立たないデザインや、蘊蓄やブランドの歴史のないレクサスブランドは、欧州や日本で売れないことは、トヨタ自身もよく知っていたのだろう。

ディーラーの「ホスピタリティのよさを謳う」ことを売り物にしたわけだが、壊れない日本車ゆえ購入後、それほど頻繁にディーラーへ出向く機会はないわけだ。

 

おまけに日本で「レクサス=トヨタの高級車」と打ち出したところで、トヨタなのだから高品質は当たり前。

「おもてなし」を売り物にするのはヤナセの方が一枚上なのだから、トヨタの社員を教育するのではなく、ヤナセの腕利きセールスをヘッドハンティングすべきだったのだ。

ドイツ御三家を買う富裕層やクルマ好きは、リーズナブルな値段よりも、官能的なエンジンフィールとかシビれるデザイン、ドライビングプレジャーという特別なものに惹かれるのだ。

  

   

ブランドに疎いトヨタはネーミングでも大きな失敗を犯している。

ドイツ御三家はグレードがわかりやすいネーミングで車種を構成している。

高いのを買う層は、一度買った車は簡単にグレードダウンできないのだ。

 

そのためベンツはS、E、Cクラス、BMWは7、5、3、1シリーズがあり、一発で車のグレードがわかるようになっている。

  

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だがレクサスのグレードを聞いてもほとんどの人は、どれが上かはわからないだろう。

下は現行のレクサスシリーズの一例だが、それぞれの車の顔がパッと浮かぶだろうか?

レクサスGS ・ IS250 ・ RX270 ・ CT200 ・ HS250 ・ RX350 ・ RX450 ・ LS460  

 

各系列ディーラーに兄弟車を展開させていた経緯もあって、スターレット>カローラ>コロナ>クラウンというネーミングでのグレードアップは知っていても、いまだにこうした心理にアタマがついて行っていないのだ。

アメリカでは「レクサスに乗っている」だけで巧く事が運んだため、今でも「レクサス内のグレード」は曖昧なまま。

トヨタのように大衆車から上級車へ上がってきたメーカーと、ドイツ御三家のように高級車イメージを利用して小型・低価格車へ降りてきたメーカーでは、車種構成の考え方ひとつにおいてさえ、こうも違うのだ。

 

トヨタ本社のレクサス担当はたぶん「アメリカで成功したのだから、日本で成功しないはずはない。 日本人は賢いから、いいものはいいとわかって必ず買うはず」と本気で思っているのかも知れない。

東北や山陰の田舎と六本木や麻布とでは価値観が違うように、金持ちの「見せびらかしたい」という心理は、日本人とアメリカ人では違うのだ。

  

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 IS-F

 

不思議なのは、ハイブリッドという新しい価値観を持つ高い値付けができるクルマを、何故トヨタブランドで売るのかということ。

プリウスあるいはその高級版を、まずレクサスで売るべきだったと思う。

私ならそうする。

   

 

ホンダも、アキュラブランドでハイブリッドを高級車種として売り出し、高い利益を生み出すべきなのだ。

日産だってインフィニティーがあるではないか。

ポルシェ、メルセデス、BMWともに、ハイブリッドは高い車種の最高クラスとして位置づけているのを見れば、わかりそうなものなのだが。

 

カタチが目に見えないシステム作りは全くダメな日本人という図式が、ブランドの確立という場でも再び展開されているようだ。

 

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