ディーラーで代車を借りて走り出し、すぐに気がついたのは、全体に音が大きいという点だった。
    ボディー剛性は結構高くガッシリ感はいい感じだ。
    だが路面のデコボコに反応してサスが動くと、ある周波数帯が、車内で増幅され、結構気になる振動と音となって伝わってくるのだ。
     
         
        
            
    一日乗っていると、気にならなくなってきたが、C6から乗り換えた直後だと、その違いはかなり大きかった。
    言い換えれば、C6じゃかなり静かなクルマだったのだと、気がついたわけだが・・
      
    エンジンとマッチングの良いアイシン製のオートマチックトランスミッションとあいまって、加速はキビキビ感が高い爽快な味付けがなされている。
    速く走ろうとガスベダルを踏むと、とにかくキビキビと速く走ることができるのだ。
    うっかりすると、下品な走りになるほど、アクセルへの反応のダイレクト感が、よい塩梅に仕上げられている。
    常にバックミラーを見ていないと、ヤバイクルマだ。(笑)
    ただ、だからといって速めのペースで走ると、ガソリンは結構喰うけどね。
     
     
    ただブレーキのフィールが追いついていないので、コンスタントなペースでラクに速く走れるのは、C6の方かもしれない。
    C6は、気がつくと結構スピードが出ていた、というタイプの加速感を持っているため、速度計を見て驚くことになる。
    気がつくといつの間にか周りのクルマが、後ろへ後退してしまっている、という感覚だ。
    C6は音が静かなので、音的には加速感が感じにくい、という本質的な性格も、加速感が感じにくいという、一つの要因となっているのだろう。
     
     
    ではフリーランダー2の乗り心地はというと、普通の金属バネにしては良い方だ。
    ただC6と比べると、バネ下に重いマスがブラ下がっているかのような、ドタドタ感が常につきまとうのが難点か。
    そしてそのドタドタ音が、微妙に室内へ反響するため、乗り心地の印象にとっては、大きくマイナス点となってしまうのが惜しい。
    C6の乗り心地を知らない人が、それなりに慣れてしまえば、あまり気にならなくなるかもしれないが。
       
    ではこのフリーランダー2君の魅力はというと、ぐわーんと周りのクルマを引き離すタイプの加速感に尽きるだろう。
    しかしそうやって走っていると、燃料メーターが正直に反応するうえ、普段はそこまで飛ばす必要がないため、ちょっと「宝の持ち腐れ感」あり、といったところだろうか。
    だが余り飛ばさずにゆっくり走っているときに、じゃあどこが魅力なのか?というと、高いアイポイントゆえの見晴らしのよさ、くらいしか思いつかないのだ。
    メーター周りはビジネスライクで、華がないタイプだし、何とか見つけようと探しても、一向に見つからないのがツライところ。
       
     
          
    C6の加速感は、大したことがないように書かれている試乗記が多い。
    何故なら、停止からすぐの速度域内では、あまり加速Gが急激に立ち上がらないような、設定のためだ。
    少々乱暴にアクセルを踏んでも、後席に大統領を乗せたときなどに、不快にならないような加速度となるよう、設定されているのだと睨んでいる。
      
    もちろん速く走りたければ、ガスペダルを少しだけ深く踏めばいい。
    クオーンというなかなかの快音と共に、力強い加速Gが加わり、C6のエレガントさとは裏腹な勢いで、速度計は上昇してゆく。
    またトランスミッションは、ガスペダルの踏み具合に呼応するかのごとく、結構引っ張るようにシフトアップが遅くなるのだ。
     
    このあたりの設定は実に見事な設定だ。
    だから高速道路などでは、「もういいよ」というほど下のギアで引っ張ってくれる。
    そのため、速度計を見て、思わずアクセルから足を離すということが、まま起こるわけだ。(笑)
     
    走行距離と、燃料の減り方を見ると、C6の方が燃費はいいようだ。
    今回100キロほど走り、ディーラーへ返却前に満タンにしたら、呑み込んだハイオクガソリンは25.79リッター。
    ということで、燃費はリッターあたり3.87キロ。
     
    高速道路は使わず、街中ばかりを結構なペースで走るとこれくらいになってしまう。
    C6なら同じくらいのペースで、リッター6キロくらいは走るからね。
    こうして比べてみると、C6の燃費がいいのは、C6の吸気系に巻いてある「ガイアパワー」のおかげなのだろうか? 
       
     
     
    ちょっと気になるのは、フリーランダー2のこのエンジンに周期的な脈動が感じられるという点だ。
    エアコンのスイッチを切っても変わらない。
    だが、脈動と言っても、アイドリング状態で、振動を伴って感じるものなので、ホントかすかにわかるレベルのものなのだが・・
     
      
    ブレーキは、このクルマ単独ならこんなものなのかも知れない。
    だが、C6のブレーキと比べると、スポンジーで、カックンブレーキっぽくで、大味な効き方に感じてしまう。
    ブレーキを踏む力を、デリケートに加減しないと、C6のようには、スムースに減速させることができないのだ。
       
    とはいっても、C6はジガのブレーキパッドに換えてあるからねえ。
    比較するのは酷かもしれないけれど、これだけタッチとフィールが違うと、つい書きたくなってしまう。
    というわけで、フリーランダー2君には分が悪かったかな。(笑)
       
     
     
    写真は、上がドア側で下が座席側。
     
    シートはなかなかよく出来ている。
    ちょうどお尻の真ん中にあたるところが微妙に盛り上がっているため、両方の尻が嵌まり込むような、独特のサポート感?(笑)は、なかなかのもの。
    さらに上の写真のようなスイッチを左方向へ押すと、背中のランバーサポートがせり出し、右へ押し続ければ、ランバーサポートが凹むという仕組みになっている。
    だが惜しむらくは腰のあたりではなく、少し上の背中のあたりがせり出すため、背中に妙な圧迫感が加わることになり、あまりよろしくない使い心地が残念なり。
      
     
    スタンドがないため、iPad はこうした状態で使っている。
    スタンド付きのC6慣れてしまっているカラダにはちょっと不便かな。
     
     
    iPhone は仮にこうして置けるのだが、急加速厳禁モードで走らなければならない。
       
     
    充電や通常走行ではこういうモード。(笑)
     
     
     ざっくり言って、いいモノ感の高い車だ。
    ただ、全てがC6のように、操作を含めた細部までがバランス良くしつらえてあるクルマから乗り換えると、いろんなところが、バラバラに感じるから不思議だ。
    加速と減速を比べると、加速が勝り、減速フィールが負けていることが、はっきりわかるからね。
    C6だと加速も減速も、見事なほど同じタッチで統一されているため、同じ力の入れ具合でOK。
    余計な神経を使うことなく、スムースに走らせることができるのだ。
     
      
    クルマは、細かい使い勝手は、チョイ乗り試乗だとわかりにくいものだが、初対面の印象というのは、人間と同じで結構的を得ていることが多い。
    使い心地に関しては、1週間も乗っていると、かなり細かいところまでわかるものだ。
    今回はカラダがC6に慣れているためだろうか、フリーランダー2クンには厳しい評価となってしまっているが、では文句なく褒められる点を書いておこう。
     
     
    まず音の良いオーディオ。
    アルパイン製のスピーカーからのサウンドは、どの基準を持ってしても、だれも「いい」と思える水準。
     
    また比較的圧迫感のない、ダッシュボードも美点の一つだ。
    面が手前へ傾斜しているため、フロントウィンドウへの映り込みも少ない部類。
     
    そして何よりも素晴らしいのがエアコン。
    最近は炎天下に停めるというケースが増えてきているが、そういうときでも、このクルマのエアコンはもの凄く良く効くのだ。
    いままでの人生で、これほど効くエアコンが付いていたクルマはなかった!と断言できるほど。
    92歳の父も、「寒いくらい効くなあ・・」と笑っていたほどだから推して知るべし。(笑)
     
     
      
    左右の丸い温度調節ノブを最低にすれば、4ヶ所の吹き出し口から、すぐに冷たい空気が大量に吐出する様は、まさに圧巻。
    前に借りたときは、エアコンを使うシーズンではなかったので気がつかなかったが、見事に良く冷えるエアコンだ。
    C6だってよく効くが、さすがにこのレベルまでは到達していない。
    それに温度調節は、C6のプッシュ式のシーソースイッチより遙かに操作しやすい。
    いやあ、参りました。
    というほど良く効くエアコンで、実に見事な効き具合だ。
    暑い夏に弱い方には、自信を持ってお薦めできるクルマだと、断言しておこう。