スティング - Sting は 個性の強い、英国出身の今年65歳になるアーティストだ。
本来ベースを弾きながら歌っていたが、最近は歌だけのことも多い。
こちらのブログ を読み、そういえばスティングについては書いてなかったなと。
         
        
            ビートルズ、キンクス、ボブ・ディラン、セロニアス・モンク、チャーリー・ミンガス、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンの影響を受けているためだろうか、彼のバンドはジャズ色の強いサウンドだ。
第42回グラミー賞 を2部門で受賞。
    
スティングのDVDはすべて持っている。
だが意外にも最も印象的だったのは、2005年12月にロスのウィルシャー・シアターで行われたクリス・ボッティーのコンサートを収録したクリス・ボッティ・ライブのDVDだった。
   
下記は  2006年7月16日に書いたクリス・ボッティ・ライブ   からの引用だ。 
   
こちらで 彼のサウンドを試聴 可。 
トランペットはダイナミックレンジの広い楽器だ。
「ダイナミックレンジが広い」ということは、つまり小さい音と大きい音との差が大きいということなので、DVDやCDにはその広大なレンジを収めきれないことになる。
そのため、どうしてもその魅力がDVDやCDでは十分に伝わりにくい楽器なのだ。
  
というわけで、特にこの楽器の場合は、ライブが最高なのだけれど、このDVDはトランペットの魅力の片鱗を、少し違った角度から十分に楽しむことができるものとなっている。
こうしたいわゆる楽器での演奏、というか特にトランペットの場合は、サックスと違ってフレーズが限定されるため、楽器演奏だけでは見ている側がどうしても飽きやすくなる。
このDVDではあらかじめそうしたことを考えて、制作されたのだろうと思うが、ゲストボーカルを適所で登場させることによって、飽きないように工夫されたステージングで構成されている。
  
当然のことながら、こうした点まで配慮されたものが悪かろうはずはなく、クリス・ボッティーのルックスと、そのクールなサウンドとがあいまって、彼のファンでない方をも、虜にするだけの十分な魅力に溢れた作品となっている。
クリス・ボッティには申し訳ないが、予想以上に素晴らしかったのは、ゲストシンガーとして登場した、あのレネ・オルステッドの歌をDVDで聴くことができたという点だった。
 
10才後半という年齢がにわかには信じられないその堂々としたステージングと、自信溢れる物腰はまさに圧巻。
良くコントロールされて通りのよい歌声は、それまで登場していた実力派のシンガーたちの顔色を失わせるに十分値するものだと断言していいだろう。
ホーンの入ったオーケストラの分厚いサウンドに一歩も引けをとることなく、そのゴージャスなサウンドを突き破るがごとく炸裂する彼女のスイングした歌声は、聴衆を興奮の坩堝に叩き込むだけのパワーを持っていた。
 
素晴らしい輝きの歌声でもって、DVDでありながらライブでこのような「鳥肌の立つような興奮」を味わわせてくれる歌手というのは、めったにお目にかかれるものではない。
カミサンも、絶賛の嵐で、我が家で最も来日を望まれている歌手の筆頭に挙げられることとなった。(笑)
その前に、ポーラ・コールは二曲歌ったのだけれど、何としても一曲にして、レネ・オルステッドにもう一曲、バラードを歌ってほしかったな。
  
と贔屓の引き倒しとなってしまったが、その後に登場したグラディス・ナイトもまた違った輝きを放っていた。
彼女の柔らかく包み込むような、ボーカルが会場に響くと、会場はまさにグラディスの世界に変わってしまうかのようなその魅力は、彼女のキャリアのなせる業なのだろう。
 
スタンダードナンバーをオーケストラをバックに演奏するというバッキングは、クリス・ボッティの少し抑え目でコントロールされた奏法と見事にマッチして、このDVDの魅力をさらに高めている。
しかもドラムのビリー・キルソンのキレのよいホットなプレイが、スパイスのように加わることで、このコンサートがさらに十二分に堪能できる要素となっているのだから堪らない。
  
クリスがジャズトランペッターとなる決心をすることになった「マイファニー・バレンタイン」を演奏する前に、観客へ向かって毎日の「情熱」の積み重ねの大切さについて語るクリスの誠実な語り口には、多くの観客が胸を熱くするだろう。
そしてクリスは静かに客席へ降りてゆき、スティングの奥さんのトウルーディー・スタイラーの前で「マイファニー・バレンタイン」を吹き始める・・
そこへスティングが登場して、語りかけるように唄いはじめるシーンになると、多くの観客の胸に、言葉にならないものが汲み上げてくるはずだ。
 
9歳からトランペットを吹き、プロの世界を目指して開花するまでには何十年もの歳月が必要だったことも、クリスならではの語り口による説得力とあいまって、音楽の持つ世界の深さと厳しさと素晴らしさを伝えてくれる。
トランペットという楽器だけではなく、朴訥な言葉によっても、聴衆を魅了するクリス・ボッティーを垣間見ることができるDVDだ。
 
 
 
VIDEO 
Sting - Shape of My Heart (HQ)
 
 
"Shape Of My Heart"
He deals the cards as a meditation
 
彼にとってカードを配ることは瞑想と同じ
 
He deals the cards to find the answer
  
彼がカードを配るのは答えを見つけるため
  
I know that the spades are the swords of a soldier
 
わかっているさ
 
He may play the Jack of diamonds
 
彼が切るのはダイヤのジャックなのか
 
I know that the spades are the swords of a soldier
 
わかっているさ
  
And if I told you that I loved you
 
そして君に愛していると言ったら
 
But those who speak know nothing
 
言葉にするやつは何もわかっていない
 
I know that the spades are the swords of a soldier
 
わかっているさ
 
 
Sting from a 1993 promotional interview:
  
  
スティングの1993年プロモーション時のインタビュー
「カードプレーヤーについて書きたかった。賭けは勝つためでなく、何かを突きとめるためだ。幸運や運命の中にある神秘的なロジックあるいは科学的でほぼ神聖な法則のようなものを発見するために賭けをやっているギャンブラーについて書きたかった。つまり、この男は哲学者なんだ。尊敬されたり金のためにプレイしているのではなく、ただ法則を知りたいがため。何かロジックがあるはずだということさ。彼はポーカープレーヤーだから、彼にとって自分の感情を表現するのは簡単なことじゃないんだ。実際、彼は何も表現していないし、仮面を被っているが、それは一つだけの仮面であって、決して変わることはないんだ。」
   
訳詞の世界~Shape of My Heart ? Sting(和訳)