ファイナンシャル・リテラシー

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セミナーでは、トレードだけではなく、折に触れて経済の仕組みについても言及している。

参加者の方の中には、50歳から上と思しき方が含まれていることが少なからずあるためだ。

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メディアで報じられているように、2007年あたりから「団塊の世代」(昭和22年から24年生まれ)が大量に退職を迎えている。

  

ある試算によると、団塊の世代を中心とする五年間の退職者数は700万人、退職金支払い総額は50兆円とも80兆円とも言われている。

60歳代の人々にとってはリタイアしたあとで豊かな生活を送るには、自分の資産の運用益からキャッシュを手に入れるか、年金に頼るしか術はないのが現状だ。

  

また定年退職が近付いている50歳代にとっても、定年後の第二の人生のスタート時点までにどれだけの資産を積み上げておくことができるかが、その後の人生の「ゆとり」を決めることになる。

人生の後半は誰もが好むと好まざるとに関わらず「投資家」として、資産を運用・管理し、老後の生活を送らなければならないのだ。

  

我々が頼ることになる年金も医療・介護などの保険も、その掛け金は将来の給付に備え、同じように「投資」「運用」されている。

いずれにせよ、我々は何らかの形で「運用益」を睨みながら、自分の生活のプランを立てることになる。

  

だが50歳代の退職予備世代の人たちは、金融(ファイナンス)や投資(インベストメント)についての知識を十分にお持ちだろうか?

会社勤めの間に意識してこうしたスキルを身につけてるのでなければ、退職金を始めとする自分の資産運用について、明確な方針を持つことさえできないのが普通だ。

 

「投資」や「運用」の果実を年金や保険金という形で受け取る当事者として政府や金融機関の行動や運用方針をチェックし、自分の意見を持津ことができるだけの「目利き」の能力をどの程度お持ちだろうか。

これは何も「団塊の世代」だけのことではない。

  

セミナーでは1960年(昭和35年)以降に生まれた世代の方もかなりの割合で参加されている。

こうした世代の人たちにとって、事態はさらに深刻なのだが、ほとんどの人はそれを自覚していないのだ。

    

急速な少子化のため、公的な年金や社会保障だけに頼ることができない世代にとっては「団塊の世代」よりもさらに厳しい状況が待ち受けている。

その理由だが、このままでゆけば1960年代以降の世代では、一生のうちに受け取る年金やサービスの総額(厚生年金+健康保険+介護保険)から、支払う保険料の総額を差し引きするとマイナスになってしまうからだ。

 

若い世代ほど、こうした公的扶助に頼ることなく、自分のチカラで資産を増やす努力が求められているのだ。

では、将来に備えてどのように資産を運用していけばいいのだろうか?

 

この世代の大多数の方は、自分の状況に応じて、数ある運用商品の中から、最適なものを選択する基準をお持ちだろうか?

  

「そんなことを言われても学校では教えてくれなかったし、分かるわけがないじゃないか!」というのが普通の反応かもしれない。

だが、実を言えばそのこと自体が大きな問題であり、この問題の根源となっているのだ。

 

日本の社会では、学校教育でも社会教育でも、資産運用や金融知識をきちんと教えるということに対しては全く行われてこなかったのだ。

知りたいと思っても、学べる環境や制度が整っていなければ、普通機会にめぐりあうことはない。

  

今の時代は英語とITとファイナンスが社会人にとっては重要な武器であり、この三つを有効に活用できる「リテラシー」はこれからの時代の日本人が身につけておくべき基本的能力だといってもいいだろう。

コンピュータやインターネットなどの「ITリテラシー」や、英語や中国語などの「言語リテラシー」を高める必要性は声高に叫ばれている。

 

だが「ファイナンス(金融)」や「インベストメント(運用)」に関する知識・情報を活用する創造的能力、すなわち「ファイナンシャルリテラシー」を高める、というテーマはそれ以上に重要だ。

 

アメリカでは小学校教育から「お金」に関わる教育を実践しているが、日本では、教育現場も政治も社会も、そのような動きは皆無といってもいいだろう。

その背景には「お金に関わることを教えるのが揮られる」という、日本人の心情や美意識とされる概念が根強くはびこっているからだ。

「お金に頓着しない生き方」は素晴らしいと思う。

だが「金融や投資のことは分からない」という状態で、これからの時代を安心して乗り切ることができるだろうか?

 

国や公的機関をあてにすることができない以上、にこうした能力については、我々自身が、基本的な金融(ファイナンス)や投資(インベストメント)に関する用語を理解し、知識を習得することが必要になる。

資産運用を誤れば、将来の老後の生活に影響が及び、それは取り返しのつかない悲劇を生み出すもとになるのだ。

 

一人ひとりが「ファイナンシャル・リテラシー」という能力を高めることは、これからの社会生活での質を高めるためには、不可欠な要素だといっていいだろう。

トレードを通して経済をよく知ることで、本からは得ることのできない面白さを通して、まず強い興味を持つことが、なによりも初心者にとっては大事なことなのだと思う。

 

そこさえ通過すれば、あとは「のめりこんでしまう」ほど、面白い世界が待っているからだ。

多くの受講者の方が、セミナー会場を後にされる時の目の輝きが、このことを雄弁に物語っている。

  

 

出典

 

2006年8月23日

 

 

 

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