ファイナンシャルのプロ達の実態

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昨日の日記「ボラティリティーとパニック」で書いた手法は、自分の資金は自分で運用するしかないため、15年の経験から編み出したという事情からだ。

ではその事情とはどういうもので、何故そう考えたのか。

というのが、今日の日記であります。(笑)

 

一般的に、退職や転職後に経済的な基盤を強くする方法としては、次のような3つの選択肢がある。


再就職する。
独立して自営する。
退職金や預貯金などを運用する


まずこのなかで一般的に自分ではなく、どこかに預けたり委託するほうが、ラクで安全だと考えられているのが3番目の「退職金や預金を運用する」という項目だろう。

 

だが日本の銀行などの金融機関へ預けると、現状では「通帳のシミ」と揶揄される程度の金利しか期待することができないことは、みなさんすでにご承知のはず。

こちらにあるように定期預金でも、1か月で0.02%台から、10年で0.1%の後半という低金利だ。

そのため、もっと積極的な運用をしたいと考える多くの人は、投資信託のような運用のプロへ預けようと考えるはずだ。

だが実際にアクションを起こす前に、実態がどうなっているかを調べてみよう。

 


大手機関投資家は、何年もかけて検証を重ね、大量の資金をつぎ込んで作り上げたシステムを持っている。

多くの方は、大手機関投資家などのいわゆる、一般的に「プロ」と呼ばれている集団が使っているシステムに対し、非常に安定した収益を出せるシステムだというイメージを持たれているかもしれない。

時間をかけて熟成した「すごい」システムで運用すれば、さぞや素晴らしい成績を残すことができると思いがちだ。

だが、果たして本当にそうだろうか?

 

セミナー受講された方の中には、証券会社に現役でお勤めの方がもいらっしゃるが、その中でもシステム担当の方もから聞いた話は、ちょっとここでは書けない内容だった。

それは、よい意味ではないことをお断りしておく。

ではこのようなシステムを持つ日本のプロたちは、どれくらいの運用成績を上げているのだろうか?

AIJ投資問題から何を学べるのか?で書いたが、丸投げ運用での悲惨な事故があったばかりだ。

ブラックボックス化している、日本のシステム運用の実情については、我々が直接伺い知ることはできないが、次のような記事から、推測することはできるだろう。

 

 
少し古い資料で恐縮だが、2003年07月23日(水)付のロイターの記事によると、2002年度の年金運用の累積損は6兆円に達したという。

02年度の市場運用-8.46%、累積損6兆円=年金資金運用基金

[東京 23日 ロイター] 厚生労働省所管の特殊法人である年金資金運用基金は、2002年度の基金の運用結果を23日発表した。基金の単年度損失は3兆0608億円となり、2002年度末の累積損は6兆0717億円へと拡大した。

市場運用では内外株式の下落が響き2兆5877億円の損失となった。総合収益率はマイナス8.46%。

 

公的年金である厚生年金や国民年金は147兆円の積立金を保有。このうち50.2兆円(2002年度末)を、年金資金運用基金が運用している。同基金は、累積損が6兆円超となったことについて、「時価による評価額であり、今後の運用動向や市場の価格変動により大きく変わりうる」(幹部)として、年金財政に直ちに影響があるものではない、としている。

関係者は今年4―6月期の運用状況への明言は避けたものの、内外株式の上昇を中心に 「評価額は上方にシフトしている」との明るい見通しを示した。

2001年度は、厚生労働省念願の公的年金の「自主運用元年」と設定され、厚労相の決めた運用方針で積立金を信託銀行や生保などへ運用委託。

 

初年度に40兆円を運用したが、1兆3084億円の赤字。

赤字額のうち6182億円は、財投運用を除く28兆円を市場運用し、保有する国内株式の株価が17・05%下落したため、1兆円を上回る損失を出した。

昨年の3月に廃止された事業団は、それまでの15年間での積立金の運用事業で1兆7025億円の累積損失を計上、2001年度の累積損失は、3兆109億円 に達した。

厚労省は「株価低迷が原因で、長期の資産構成割合を定めた基本ポートフォリオによる予想の範囲内」と説明したという。

今後経済が回復すれがば収益が期待できるため、過剰に悲観せず運用してゆくという。

 


これだけの損失を出しても、実際の運用を委託された信託銀行、投資顧問会社へは、巨額な運用手数料ががっぽりと入るというわけだ。

2000年度、2001年度に支払われた手数料は、合計697億円!

だがこの後、厚生年金と国民年金の積立金の市場運用では、08年度の損失が9兆6670億円。

運用資金117兆円の内、約10兆円もの損失は、仕方なかったで済む話ではないはずだ。

2003年4月1日から2011年3月31日までの8年間の平均の運用収益率は、2.43%(管理手数料等控除前!)だという。

 


知らぬは仏なり。(笑)

 

 

wallstreetweekwithlouisrukeyser.gif

 


では次に米国のミューチュアルファンド、つまり日本でいうところの投資信託のファンドマネージャーの成績一覧を見てみよう。

ここまで公開されているものがないため少し古い資料になるが2001年のダウ指数を買っていたら成績は -5.4%、ナスダックなら -20.8% というのが2001年のマーケット。

ファンドマネージャーの平均成績は -12.5%。

 

ただし彼らは全資金の5%しかショートできないといったようなハンディーを持っているから、ダウントレンドのマーケットで利益を出そうとすれば、かなりまめに売買を繰り返さなければならない。

反面、人の資金だから負けても自分の懐は痛まないのだから、心理的なプレッシャーは少ない。

さらに少なくとも何十億以上という豊富な投資金額なら、下がった銘柄を買い足してコストを下げるという、いわゆるナンピンはやり放題。

 

ナスダックより成績の悪いファンドマネージャーがこれだけいるということは、QQQを買って、塩漬けになっていた方がはるかにましだというケースがかなりあるということだ。

トップの Cappiello 氏の成績は 17.37%。

個人が、2万5千ドルの資金でデイトレードをして、このトップファンドマネージャーを上回る年間18% で回そうとしたら、年間4500ドルの利益を出せばいいことになる。

 

1ヶ月で375ドルだけプラスになればいいのだ。

これくらいだったら楽勝だよね?

 

だから、もしあなたが、昨年18%以上の成績を残せたのなら、大いに威張っていいと思う。

きちんとしたメソッドを身に着け、自分でチャートを見ながら、ルールを守ってイントラデイでトレードをすれば、個人とレーダーは、ファンドマネージャーなんて問題にはならないパフォーマンスを残すことができる時代なのだ。

今ではトレード方法やツールに関しては、とても早いスピードで変化し、そして進化している。

それはマーケット自体が変化していることも影響しているだろう。

だからこそ、このスピードにについてゆけないものは、恐竜のように滅びるだろう。

ではその「恐竜」を具体的な例でご紹介しよう。

 


「一兆円ファンド」と呼ばれた国内最大規模の株式投資信託「ノムラ日本株戦略ファンド」 の運用について皆さんは、ご存じだろうか?

日本金融新聞で報じられたように、全く悲惨な結果に終わっている。

基準価格は6千円を割り、設定から1年半で40%強も落ち込むという結果で2001年5月末から7月末まで基準価格は10%強下落し、設定来の成績はベンチマークとしての基準となる東証株価指数を約10%下回るという成績だ。

 


原因は何だろう?

 

それはシステムとしての運用方法が間違っているからだ。

戦略株ファンドは規模とともに独特の運用手法で話題となったが、基本的な方法は、投資対象の異なる三つのファンドで構成し「大中型割安(バリュー)株」「大中型成長(グロース)株」「小型株」のファンドを専任のベテラン運用者が担当するというものだった。

専門性を発揮し、相乗効果を図るという謳い文句だったがもっとも悲惨なのが「大中型割安(バリュー)株」。

数字は公表されていない!が、3三つのファンドそれぞれのベンチマークの比較ではグロースや小型株が3-4%下回っているのに対しバリューは5%を超えていたようだ。

この時の株式市場は割安株が底上げという市場展開だったが、日本戦略株ファンドは、完全に読み違えたのだ。
 

 

何故か?

 


それはトレードの基本的な運用構造にある。
 
戦略株ファンドは2001年はじめから値下がりしたIT株を押目買いの対象にしてきた。

つまりナンピン買いだ。

プロなら最もやってはいけない方法だ。

 

運用責任者の清水孝則・常務執行役員によると、「住友電気工業」は足元のバリューファンド低迷の主因の一つだったという。

2000年12月に2000円台だった株価が急落したため、2001年には買い増しに動き、二月末には総資産の1.9%にまで比率を高めた。

平均買い単価は1512円とみられているが、2001年7月19日には株価が1200円を割ってしまった。

「住友電気工業」は2000年に、WDM(光波長分割多重伝送)の成長期待で高騰したIT株だが、株価下落で収益面から割安感が浮上したと判断して買い増したという。

チャートを見ていないのか?(笑)

 


おまけにダウントレンドで買うという逆バリ手法で、株価が下がればナンピンをするというまったく素人以下の運用方法だ。

こうした間違いは何も野村のIT株関連運用者に限ったことではない。

多くの日本のファンド運用担当者が、同じ轍を踏んだ。

 

急速な値下がりに比べて、収益はまだ高水準だったため、株価収益率(PER)などの投資尺度で見ると割安感が強かったために、強気でその組み入れ比率を高めたのだ。

2001年の1月から2月にかけて運用チームは、採算管理を徹底するため3つのファンドの組入れ銘柄を社内で分別管理していたが、グロースファンドに組入れた日立製作所や富士通をバリューファンドに移し替えたのだ。
 
わかりやすく言えば、「売り」(グロース)、「買い」(バリュー)と言う反対の投資判断を同一ファンド内で実行したのだ!

 

移管時は市場価格で売買したとみなすため、それぞれのファンドの損益は確定するが、戦略株ファンド全体でみれば当初の買いコストで持ち続ける結果に見える。

三人の運用担当者はそれぞれ読みを働かせたのだが、それが合わさったことで全体としてIT株依存度を高めてしまった。

こうした原因から戦略株ファンドは損切りの連続を余儀なくされのだがそれに輪をかけたのが、ポートフォリオのの基本がわかっていないと思われるような組み立て方だった。

設定当初から一兆円もの資金をIT株を中心に150銘柄に集中させるというギャンブルのようなポートフォリオを組み立てた結果、短期間で売却を迫られることになってしまったというわけだ。

 

設定から2000年9月までの7ヶ月で平均12万円強で買ったソフトバンクを5万円以下(株式分割を勘案)で売る羽目に陥ったのだ。

まったく素人以下の運用だが、野村アセットはあわてて、調査と運用部門を統合させ、銘柄選定のプロセスを見直したが後の祭り。

運用チームと増員した社内アナリストの専用会議も開き、投資判断の共有化を目指し、投資銘柄も2001年6月末で242増やして、輸送株や一部小型株の発掘などを始めたが焼け石に水。

 

   
一貫して運用成績が悪化したという、世界でもまれに見る珍しい経緯?の戦略株ファンド。

ブランドを信じ、何も知らないままに大きなゲインを夢見て預けた投資家たちの莫大な資金は、年1.9%の信託報酬を支払い、塩漬けになってしまった。

いかがだろうか?

こうした実績?を見ると、システムに対して費用と時間をかければかけるほど、かけた費用や時間に比例し、パフォーマンスは下がると断言していいだろう。(笑)

 


皆さんはこうした事実をご存知だったろうか?

たぶん、ほとんどの方はご存じないだろう。

日本のマスコミは、こうしたことはほとんど報道しない、というか正確には、ファイナンシャルの知識がないために報道できないのだ。

嗚呼!

 

 

 

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