不動産と年金制度

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先日の日記の続編をというリクエストをたくさんいただいたのですが、今日は基本的なことについて。

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株式にしろ不動産にしろ今後の見通しなどの、専門家による意見に対しては「ポジション・トーク」に気をつける必要があります。

「ポジション・トーク」というのは、自分に都合が良い方向へ話を進めることです。

 

例えば政治家であれば株や不動産が下がるとは言えないでしょうし、不動産会社の経営者なら、これからはマンションの値段が下がる、などということは利害を考えると、そうした言葉を口にすることはできないのが普通です。

これはどんなことにでもいえるのですが、その人の立場によって、コメントには必ずバイアスがかかるわけです。

    

不動産の価格が決まる仕組みというのは、とても単純です。

基本は「需要と供給のバランス」。

私が住んでいた銀座のそばである、丸の内や汐留などの地域は、再開発や都市基盤整備によって価格は上昇しています。

    

ですがこのように、新しいビルが建ったり、古いビルが新しくなったり、地下鉄の新しい駅ができたり、などという理由で地価が上がったのは、バランスとしての需要が増えたからではないのです。

ブランドメーカーが宣伝のために、特別なコストを支払ったために、土地という商品の品質が上昇したことが原因による価格の上昇は、バランスとしての需要が増えたこととは別に考える必要があります。

 

ですから、こうした要因での値上がりは、今後の継続的な上昇にはつながらないのです。

新築高層マンション、大型ビルの大量建設という供給増加はあくまでも大都市の一部分の動きです。

日本全土で広がる人口の減少、団塊世代の大量退職による需要の減少という大きな流れとその影響力の大きさにはとても太刀打ちできないのです。

  

こうしたバランスを考えると、地価が特定の商業地域で反発することはあっても、住宅地の下落のトレンドには変化がないと考えるべきでしょう。

  

さらに、今後年金制度の破綻が決定的になってくれば、こうした動きは加速度をつけてさらに大きく、そして早くなってきます。

年金が貰えなくなると、労働による収入の道がない高齢者は、現金を確保するために、資産を売らなければならなくなります。

つまり中古住宅の供給はどんどん増え、そうした過剰供給状態は、市場価格をさらに引き下げる働きをするのです。

  

人口は2006年にピークを迎え、それ以後は日本の人口は減少します。

生産人口のピークというのは総人口のピークの10年前にやってくるため、すでに何年も前から、雇用されていない高齢者や年金受給者は増えています。

つまり中古住宅市場は、すでにいまの時点で潜在的な供給過剰になっているのです。

  

  
年金制度はどうなるかを考えるうえで、2004年の前半を賑わした「年金制度改革法案」は大きなターニングポイントとなりました。

年金制度はすでに事実上崩壊してしまっていることが、バレてしまったのです。

このように年金制度は崩壊過程にあり、本当に崩壊してしまうと、雇用所得のない高齢者層は、不動産を取り崩して換金するしか道はなくなります。

 

今、金を受け取っている人の支給額の内訳を見ると、彼らが過去に積み立てた分というのはごくわずかな割合で、ほとんどは彼らの子供の世代が積み立てた年金保険料から支払われているのです。

それなのに、今の年金受給者たちは子供をあまりつくらなかったうえに、彼らのこどもは、もっと子供を作らなくなっているのです。

2000兆円を支払ってくれる子供や孫が生まれないなら、そのツケは彼らにも戻ってきます。

 

それどころか、今の若者は結婚もせず彼らに寄生し、パラサイトシングルという流行語まで生み出しているのです。

今の20代の若者は、将来自分たちが払う年金のごくわずかしかもらえないことがわかっていますから、年金保険料の未納割合はどんどん増えているのです。

  

年金制度の基本は「賦課方式」といって、基本的な仕組みは国ぐるみの「マルチ商法」といえばわかりやすいでしょう。

今まで破綻せずに順調に維持されてきたのは、人口が増加し続け、経済が成長し、国の信用があったからで、支払いをする子会員が増え続ける限りねずみ講は破綻しないのと同じことです。

ところが政府与党の年金改革案では、こうした基本的なところの変化に対応した策は全くないうえに、現在支払っている若者の年金保険料を引き上げるとしか言わないのです。

 

なぜ税金による年金制度への変更を考えないのでしょうか?

その理由は簡単で、税金方式にすると今までのように厚生労働省の年金官僚たちが年金を「ネコババ」できなくなるからです。

たとえば2003年の厚生年金の予算32兆7450億円のうち27兆1085億円が年金給付に使われ、10兆2985億円が国民年金に回されました。

 

そして2160億円が年金官僚たちによって「つまみ食い」されているのです。

代表的なものは下の通りです。

悪名高きグリーンピア等への天下り施設への投資60億円
株式投資などで不良債権化している年金特殊法人の事業費が540億円
家賃はほとんどタダの公務員宿舎や保険庁事務所建替費などが37億円
年金徴収事務費や保険庁職員給料退職金扱費が1532億円

本来は年金の支払いで我々受給者へ回されるべき年金保険料が行政の経費に使われているのです。

税金で負担すべきものなのにです。

 

一方で、国家公務員の共済年金は一切そういうものには使われず、彼らの年金支給として100%使われているのです。

公務員以外の民間サラリーマンの年金だけがネコババされているというわけです。

この流れを断ち切るような、奇跡でも起きない限り、年金制度崩壊の足音はひたひたと、着実に忍び寄っているのです。

 

こうした点を考えると、すでにローンを抱えて住宅を買ってしまった人は、年金制度が崩壊する前に住宅は売り抜けるしか、リスクを減らす方法はない といえそうです。

  

 

出典

2007年3月30日

 

 

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